時間を少し遡った、この話をしたいと思います。長くなります。
時期は定かではありませんが…転職してからのことだと思います。
転職さえすれば、過食嘔吐は収まると思っていた私でしたが、結局、過食嘔吐はかなり酷い状態まで悪化。このときが症状としてはMAXだったと思います。
なんとしてでも治したいと、摂食障害の本を読み漁り、西洋医学、サプリメント、カウンセリング、セラピーなどできることをいろいろやりました。
もうお金と時間をいくらつぎ込んでいただろう…治すためのウン十万…無茶食いのためのウン十万…。
インターネットで摂食障害の方のブログを見たり、精神科医が書いた摂食障害の治療の記事を読んだり。
その中で過食症回復団体(仮名)を見つけたのです。
無料で相談できるということで、多少の不安はありましたが、藁にもすがる思いとはまさにこのこと。すぐにメールで相談しました。
過食嘔吐するようになった経緯や今の状況などを詳しくメールにして送信…実はその頃の記憶が曖昧なのですが…とにかく1日1回、無料で電話相談ができるということでした。
電話では、過食嘔吐がいかに危険か?専門的な治療がいかに必要か?いろいろ聞かされましたね。
今思うと笑えるのですが、母親が泊まりに来て作ってくれた里芋の煮物をいっぺんに過食してしまったことを相談したら、『里芋は栄養があるから大丈夫、気にするな』みたいなことを言われた覚えがあります。
返答が笑える…栄養あるくらいわかってるよ、カロリーや栄養素について調べまくってダイエットしてたんだから。
でも、人間って追い詰められると正しい判断ができないんですかね…それに過食嘔吐MAXで頭がどうにかしてましたから。
この相談を続けていたら、きっと過食嘔吐は治るんだ(大きな期待を込めて)…という状態。無意識的にこれは良いことだ、信じよう、くらいになっていたと思います。
結局、1週間くらいの無料電話相談がつづいたあと、「そろそろカウンセリング治療を受けられるタイミングにきている」みたいなことを言われました。
「なかなか症状が良くならないから、カウンセリング治療に特別に参加して良いです」なんて言われて、それが4回で16万円。
普通に考えたら、明らかに怪しいとわかりますよね?「無料」と言っておいて、たった1週間で「16万円」の金額提示。最初にそんな説明は一切ありませんし、もちろんサイトにも有料なんて書かれていません。
悪徳商法の王道パターン。
しかし、とにかく回復したい一心で冷静さを失っていた私は、16万円でこの過食嘔吐が治るなら…、と参加を決心したのです。
ここまでは、誰にも相談せず1人で決めたこと。
16万円を封筒に用意して、いよいよ明日はカウンセリング!というとき…母親から電話がきたのです。
私の中にも「本当に16万円を支払っていいのか?」という思いがわずかにありましたから、無料電話相談からの一連の流れを母親に話したのです。
正常な判断ができる状態の母親ですから、焦ったと思いますね。
これまで割と優等生で、文武両道、運動も人並以上にできて、大きな問題もなく過ごしてきた娘が、怪しい団体に16万円を払おうとしているのですから。しかも、明日!
「ねぇ、お母さんが今からそっちに行くからさ、その16万円で一緒に楽しいことしない?」
母が機転を効かせた提案を。私はその提案に乗りました。
不安もあったカウンセリング、本当は誰かに止めてもらいたかったのかもしれません。
母親はその電話を切ってすぐ、実家から3時間かけて私の家に来てくれました。そのとき、初めて過食嘔吐で悩んでいること、転職した理由も過食嘔吐だったことなどを話したのです。
このときまで何年も、過食嘔吐のことは1人でひた隠しにしてきたのです。
翌日、私と母は美味しいランチを食べに行きました。確か、母はその16万円を使わせることなく、ご馳走してくれたと思います。
カウンセリングの予約をしながら、連絡なしのドタキャンをしたのですから、もうその団体に連絡を取れるはずはありません。
そして、その団体からも何か連絡が入ることはなかった(と記憶しています)。
その後は結局、過食嘔吐に支配される、無料電話相談前とほとんど同じ生活を送っていました。
そしてそれから数日後、その団体代表が脱税で捕まったというニュースが流れました。
しかも、治療という名目で、カウンセリング時に患者の女性を裸にしていたというのです…。
これを知ったとき、背筋が凍りつく思いでした。
あのとき母が電話をくれなかったら…母の提案を蹴っていたら…私はそのカウンセリングに参加していたのですから。
私は運がいいと思います。母親にも感謝です。
こうして私はお金を支払うことや、(もしかして)裸にされることから逃れることができたのです。
それにしてもこの団体、追い詰められている人を利用するとは許しがたい。
当時、私はうつ状態も酷く、ふと死ぬことを考えるときもありました。とにかく過食嘔吐が治るなら何でもしたいと思っていました。
それを「救う」などと軽々しく言いながら、良いように利用するなんて…
「騙される方が悪い」、確かにそうかもしれません。騙されないように、慎重に物事を判断しなくてはなりません。大人なんですから。
でも、できなかったんです。そのときは。私だって怪しいという気持ちはありました。でも、治るかもしれないという、少しの希望にすがりたかった。
百歩譲って…裸にされて、お金を取られて、それで過食嘔吐が治るのなら我慢できたかもしれない。だけど、治りませんからね。やっぱり酷いと思います。
そして、やっぱりやっぱり「騙す方が悪い」。
摂食障害の真っ只中って、本当に出口のない暗闇で、怖いし不安だし、情けないし、常に追い詰められている状態です。冷静に判断できない状態とも言えるでしょう。
だから、できれば何か決断するときは、信頼できる人の意見を聞いてもいいんじゃないかと思います。
たった1人でもいいと思います。きちんと意見してくれるなら、SNSなどの繋がりだっていいのかも知れません。
相談して結果的に悪い方に行ってしまうこともあるかもしれませんが…自分1人で悩み考えるよりマシではないでしょうか。
その団体が消えたって、他の団体が出てくるでしょう。詐欺がなくならないように、残念ながら悪いことを考えて、弱みにつけ込む奴はいなくなりません。
過食や過食嘔吐はお金もかかり、借金をする人もいると言われます。そんな状況でさらに騙されお金を取られたら二重、三重の負担です。
摂食障害に悩む方が、こんな悪どい団体に引っかかることがないといいのですが…。
(2023年の今、考えてみても、やっぱり摂食障害…特に「過食」「過食嘔吐」はどうしても恥ずかしいという気持ちを持っている患者さんが多いと思います。私のように何年もひた隠しにして1人で苦しむケースも多いはず。だからこそ、もし何かしらのサインを感じたなら、気にかけてあげて欲しいと、思います。近くにいるからね、と、そんなメッセージでもいいと思います。)



