エイジレスの365回 免疫活性化を起因とする不安・恐怖亢進メカニズム
題名を見て内容が想像できる方は別として、何のことかわからない方がほとんどだと思います。
が、結論から先に言っても、表題通り、「免疫」と「不安・恐怖」に関係があることがわかったというお話です。
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免疫細胞の一種であるT細胞は風邪や病気などで活性化されると、細胞内代謝を変化させることで、持続的に増殖したり、エフェクター機能を発現したり、免疫記憶をつかさどったりすることが知られています。
しかし、持続的な免疫細胞の活性化が細胞外の全身性のメタボロームに与える影響は明らかになっていませんでした。
また、免疫系と神経系の生理システムの相互作用についてもまだ多くの謎が残されています。
今回、共同研究グループは、慢性免疫活性化モデルであるPD-1欠損マウスを解析し、活性化したT細胞により全身性の血中メタボロームプロファイルが変化することを明らかにしました。
なかでも、アミノ酸のトリプトファンやチロシンの血中濃度が減少していましたが、その原因はリンパ節で活性化・増殖したT細胞が細胞内にトリプトファンやチロシンを多量に取り込むためであることが分かりました。
また、トリプトファンやチロシンはPD-1欠損マウスの脳でも減少しており、それらを前駆体とするセロトニンやドーパミンという神経伝達物質も脳で減少していました。
さらに、セロトニンやドーパミンの減少に伴い、PD-1欠損マウスでは不安様行動や恐怖反応が亢進していることが分かりました。
これらのことから、免疫活性化に起因する前駆体アミノ酸の減少による神経伝達物質の欠乏が不安様行動や恐怖反応の亢進を引き起こすというメカニズムと、免疫系と神経系の生理システムの相互作用の一端が明らかになりました。
精神疾患の中には、免疫活性化に伴うメタボローム変化に起因して発症する場合があることが予想されます。
今後、実際の精神疾患の患者において、免疫系の活性化、免疫系遺伝子の変異、メタボローム変化を調べることで、これまで不明だった発症原因の解明につながると期待できます。
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T細胞が細胞内にトリプトファンやチロシンを多量に取り込み、さらに、セロトニンやドーパミンが減少することで、不安や恐怖を認識するということです。
つまり、不安や恐怖を感じる要因の一つに、免疫活性化があり、病気になることで、不安や恐怖を感じるようになるとのことです。
なので、病気になった際には、ハッピーホルモンをたくさん生産して、不安や恐怖に打ち勝つことが結果的に免疫活性化を促して、早く元気になれる可能性があります。
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