【映画】異人たちとの夏(1988):ノスタルジィとシュールを兼ね持つ大林宣彦監督の異色作 | Bokuと映画  Chackn'sBlog

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山田太一の原作を脚本市川森一、監督大林宣彦が綴るひと夏の物語

 

主演風間杜夫、恋人の名取裕子との絡みが話題になるもクライマックスに賛否を起こす

 

 

「異人たちとの夏」

 

 

 

 

1988年公開 / 110分 / 日本 (米題:The Discarnates)

 

監督: 大林宣彦
製作: 杉崎重美
プロデューサー: 樋口清
原作: 山田太一
脚本: 市川森一
撮影: 坂本善尚
美術: 薩谷和夫
音楽: 篠崎正嗣
特殊メイク: 原口智生
製作・配給: 松竹

 

キャスト

風間杜夫/片岡鶴太郎/秋吉久美子/名取裕子/永島敏行/入江若葉/竹内力/峰岸徹/入江若葉/北見マキ/桂米丸/柳家さん吉/ベンガル/高橋幸宏/松田洋治/笹野高史/本多猪四郎/奥村公延/林泰文他

 

妻とも別れ、孤独な毎日を送っていた風間杜夫扮する主人公が、死んだ両親(現在の自分とほぼ同年輩の姿)と再会する。同時にある女性と親しくなるが、両親との邂逅を繰り返すたび、主人公の身体はなぜか衰弱していく。人間と幽霊の間の愛と情念とを情感豊かに描き込んだ佳作。派手な特撮ではないが、幽霊のシーンに効果的に合成が使用されている。(allcinema)より抜粋)

 

Wikipedia:異人たちとの夏

 

 

*****

 

 

どーもです。

 

今回の大林監督作品は、

 

只今リメイクがイギリスの監督アンドリューヘイにより絶賛公開中となっている此方

 

リメイク作のタイトルは「異人たち」

 

 

こちらは未見ですので大林版のお話になります

 

 

「異人たちとの夏」が公開されたのは1988年

 

バブルの全盛期の頃の作品となります

 

監督は当時松竹映画の1作目を撮るにあたり

 

コメンタリーでは「松竹映画を撮ってください」と言われたとおっしゃっているが

 

もともとホラー映画で行く予定だったとの説もある

 

 

もう散々言われていることなので最初にネタバレで言っておくが、、

 

 

 

 

(※そんなわけで今回もネタバレ必至となります。ご勘弁を。。)

 

 

 

 

 

クライマックスで急にホラーテイストが入る

 

 

当時、大林監督のノスタルジック満載な作品になるんじゃないかと期待したもので、

 

ここの変わりようで賛否があり、私もどうしても受け入れなくて「否」のイメージの強い作品でした。

 

 

その後、2回ほど観返していても評価は変わらず、

 

今回また観返したところ、、、

 

 

 

やはり解らん・・(笑)

 

 

 

解らないなりに今感じたことを書いて観たいと思いますのでお付き合いくださいまし。

 

ある意味非常に難解な作品でもあるのかもしれないし

 

あのテイストの変わりようは失敗しているとしか言いようがないw

 

 

でもあれさえなければと言うか

 

ストーリーはそのままでもいいと思いますので

 

あそこのテイストが変わらなければとても良い作品なんです(^^;

 

 

しかもそのホラーのクオリティが非常に良いww

 

 

 

 

 

 

 

 

監督の評価でたまにみかける「最後のあれがなければ」とか「あの演出がなければ」とかの最たるものではないのかなと感じるもので、

 

これが「大林ってるね」と感じるときと

 

「これはやりすぎ」と感じるのと、

 

どうしてもこのような手法を取る監督の演出では諸刃の剣になってしまうというか、

 

クセの強い演出をする監督さんには

 

そんな作品になってしまうこともあると思います。

 

 

本作はその前の両親とのとても感動するシーンが吹き飛んでしまうような変わりようww

 

もう今回は何度観てもわからんので、笑いさえ出てきたw

 

もう血しぶきシーンには「なにしとんねん」と突っ込みを入れる始末(^^;

 

 

 

 

んなわけで、

 

 

長くなりましたが

 

物語も簡単に説明していきましょう。

 

 

 

主人公の原田英雄=風間杜夫はシナリオライターである

 

仕事で家に帰れず奥さんとは別居状態

 

生活は荒み切っている

 

仕事仲間の間宮=永島敏行から

 

奥さんと別れるなら俺が交際を申し込んでもいいかと尋ねられ、あきれながらも承諾する

 

そんな最悪な夜に同じマンションの住人の女性に一緒にシャンパンを飲もうと押しかけられ、邪険に扱ってしまう

 

 

 

 

女には名取裕子

 

女は原田の脚本のファンだった

 

シャンパンだけでも受け取ってと言われるが断り追い返す

 

今ではごく当たり前の対応に見えるが、

 

この初対面の対応がのちに重要となる

 

 

 

それから別の日に、新橋駅の使っていない地下鉄の取材をした後、

 

生まれ育った浅草へ立ち寄る

 

 

 

 

 

演芸ホールで寄席を楽しんでいると、どこからか聞いたことのある声がする

 

「父さんだ」

 

父も寄席を見に来ていた

 

しかし、どう考えてもおかしい。

 

父は母と12歳の時に事故で死んでいたのだ

 

しかし父は当たり前のように

 

「出るぞ」と言い、演芸場を出ていく

 

驚きつつも付いていく原田

 

 

 

父は片岡鶴太郎

 

江戸っ子気質の男をそつなく演じている

 

当時鶴太郎さんはコメディアンの鶴ちゃんだったが、これが大抜擢で大正解

 

 

家についていくと母がいた

 

 

母は秋吉久美子

 

とても無邪気でかわいい母を演じる

 

 

最初戸惑う原田だが、親に遠慮するなと言われ

 

本当に父と母なんだと安心する

 

 

不思議な楽しい晩を楽しんだ原田

 

気分のいい原田は帰りにマンションの一階であの女性に会うが優しく接することが出来た

 

それから二人は愛し合うようになる

 

 

 

 

女の名前はケイと言った

 

抱かれるときは前にはやけどの痕があるので見ないでと言われる

 

 

 

 

 

そうして原田は彼女と、たまに両親のところへ行き充実した日々を送れるようになる

 

しかし原田はだんだんとやつれだし衰弱していく

 

ケイは両親と会わないでと告げ、

 

原田はそのことを両親に相談し、別れることにする。

 

最後の日にすきやきの今半へ行く

 

「おまえは一人でよく頑張った」と言ってもらえる

 

どんなにきつくても、親から褒められることほど嬉しいものはない。

 

 

 

 

 

感動的な別れの後、

 

ケイの秘密も明らかにされる・・・

 

 

ケイとも別れた後、

 

両親の住んでいた浅草のアパートは立て壊されていた

 

 

今半で両親が残した箸を燃やす。

 

送り火だ。

 

 

 

 

この時、永島敏行が

 

「どうかしてた」を連発する

 

最初全くその意味が解らなかったが、

 

これだけは今回理解できた

 

「どうかしてた」=「不条理」は全く生きていることの真理をついた言葉だ

 

この夏は「どうかしてた」という永島

 

不条理なことが起きたが、その時代の生き方そのものが不条理の中で生きている

 

 

父と母と過ごした当時の生活、

 

アイスを食べ、キャッチボールをする家族の在り方

 

気さくに話しかける父。

 

気に食わないと仕事は場を移す。

 

 

一方、現実の世界では

 

ヤギのチーズを喰い、女を抱く

 

同じマンションの住人の顔すら知らない

 

仕事に疲弊し、子は親のことに全く興味を沸かない世界

 

 

この世界自体が「どうかしてる」=不条理と問いかけている

 

不条理の中で起きた不条理は真理だったのかもしれない。

 

永島は

 

そんな「どうかしてる」ことは忘れましょうという

 

「気にしてると身がもたない」

 

それも真理だ。

 

 

原田はケイとの別れの時に「連れてってくれ」という

 

現実世界から逃避しようとするも、

 

最後は「僕は生きます」と

 

両親とケイに感謝と別れを告げる。

 

 

晩年の山田太一の暮らしを想うと

 

原作者の心情に沿うラストだったのかなとも感じる。

 

 

 

バブル真っただ中に撮った作品でした。

 

 

では。

 

 

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