1年目の研修医かおるこさんのBlog、『Color Of かおるこ 』に、初めて中心静脈カテーテル留置に

挑戦した記事が出ていて、昔を思い出しながらなつかしく読ませて頂きました。

私たちはCV ライン(CVは中心静脈、central venousの略)と呼んでいましたが

FDLという呼び方は初めて聞きました。病院によって呼び方は全然違うのですね。


私が研修医一年目の時のオーベン(指導してくれる上級医)は、色々な意味で機械的な人で、『マシーン』

と呼ばれていましたが、当時マシーン先生が「私はCVラインは9割方入るよ」と威張っていたのは

今考えてみると全く普通で威張る事でもなんでもありませんでした^^;

でも、一年目の入局したての研修医にとって、CVラインを上手に入れる先生はやっぱり

「すごい先生」、「できる先生」なんですよね。


ちなみに私が一番得意なのは内頸静脈。次がそけい部で、鎖骨下は今でもちょっと苦手です。

内頸が苦手な人が多いようですが、普通の体格の方では静脈までの深さが1cmくらいなので

慣れると結構簡単です。鎖骨下みたいにカテーテルの先端が変な方へ行ってしまう事も

殆どありません。


1年目の先生や、1年目を指導しなければいけない先生のために、名古屋医大付属病院で

作った中心静脈カテーテルのマニュアルがあるので紹介します。PDFファイルなので

ダウンロードして印刷すると便利です。CVラインは先輩医師のお手本に習って習得する事が

多いと思いますが、結構色んな思い込みもあるみたいで、スタンダードを読んでおく事も

大切かな、と思います。私も勉強になりましたよ。


ここ


最後にこれからCVラインに挑戦する1年目の方に、私からそけい部からのCVライン挿入のアドバイスを。


①正しい穿刺部位からアプローチしましょう。そけい靭帯から1~2横指下、と書いてありますが

そけい靭帯は何処かわかります…よね。腸骨と恥骨を結ぶラインでしたね。

縫工筋の位置をそけい靭帯だと思っていた人がいたので念のため。

普通の体格の方では、皮膚のしわかその付近が穿刺部位になりますが

体格によってずれるので、しわを基準にしていると危険な事があります。

穿刺の位置が高すぎると腹腔穿刺の危険、低すぎると動脈を刺す危険が高くなります。


②上手に麻酔をして下さい。皮内に入れるつもりで…Seldinger法で入れる時は骨盤に

当たる位置もしっかり麻酔します。麻酔以外で患者さんを痛がらせたら失格です。

入らなくても麻酔だけはしっかり出来るようにしましょう。


③慣れてきた頃が危険です!決して過信しないこと!

鎖骨下や内頸では特に、パルスオキシメータや出来ればECGモニタ(不整脈に注意)

が望ましい処置です。あとは、凝固系は当日の朝にでもチェックしておいた方が無難です。

DICになっていて血が止まらず、一晩抑えていた医師がいます。



急性咽頭炎の原因の大半はウィルスによるもので、抗生剤の投与は無効です。

が、成人の咽頭炎の5~15%Aを占めるA群β溶連菌(以下GABHS)は抗生剤による治療で症状が緩和

されたり、罹病期間を短縮し、扁桃周囲炎(重症化)を防ぐという意味で、抗生剤の投与

が推奨されています。


GABHSによる咽頭炎は、ウィルス感染と異なり免疫がつきにくいので、旦那さんから奥さんへ、

奥さんからまた旦那さんへ、というような『キャッチボール』が時に見られます。

家族内で喉の風邪がなかなか治らない、治ったと思ったらまた喉が痛いという時は

家族全員で抗生剤を飲んで頂く場合もあります。


GABHSには『簡易キット』が売られていて、数分で診断出来ます。感度特異度ともかなり高いそうです。

しかし、発熱、喉の痛みと言えばこれからの季節『インフルエンザ』でもみられます。

インフルエンザのキットとどっちを使おうか悩む事もあるかもしれないですね。

(一緒にやっても悪いことはないですが)

こんな時、以下の溶連菌感染診断ストラテジー(Centorの変法)があるので、利用すると

良いと思います。


①38℃以上の発熱

②浸出性扁桃炎

③疼痛を伴う前頸部リンパ節腫脹

④咳がない

の4所見から診断します。4点でほぼ診断決定、2~3で簡易キtットの使用が推奨されます。

1点以下はGABHSの可能性は極めて低いとされます。


既に中途半端な抗生剤が使用されていると、偽陰性になりやすいので注意が必要です。


治療はサワシリン(250)3T 3X


で、10日間の治療が勧められています。ペニシリンのアレルギーでは、クラリス等でも

良いとされています。Kiss病として有名な『伝染性単核球症』は、本症と紛らわしい症状が出ますが、

こちらはペニシリン系を使用してはいけないとされています(皮疹が出やすい)ので

やはりGABHSの診断がきちんとついてからの処方が望ましいです。

尚、本症の合併症として、『急性糸球体腎炎』が有名です。子供に多く、成人では比較的

少ないですが、出来れば感染から2週間頃に一度、尿検査をお勧めし、異常があれば

腎臓内科に紹介を考えます。


(参考:総合外来診療の心得21か条 医学書院)

リウマチ性多発筋痛症(Polymyalgia rheumatica;以下PMR)は、高齢者の『全身が痛む』

疾患です。主に首、背中、腰、四肢の近位筋が、非常に強く痛みます。

診断出来ればステロイドで比較的速やかに改善する事が多いのですが、医者の知識がないと

患者さんは長い間苦しむ事になります。うつも合併しやすい為、「精神的な要素が強い」等と

言われ、辛い想いをする事になります。最近はかなり有名になったので、流石に知らないという

方はいないと思いますが、あまり詳しくない方は一緒に勉強してみましょう。


【診断のポイント】
①60歳以上の高齢者が筋肉痛とこわばりを訴えた場合に疑う。
②赤沈は亢進し、血清CRPも高値である。
③原則としてリウマチ因子、抗核抗体は陰性
CPKは正常


【特徴】
発病は突然である朝急に痛み始めるなど日時が特定出来る場合が多い。
頸部、肩、腰、四肢近位筋の痛みとこわばりをきたす。一般に左右対称
数週間で症状が完成する。筋肉痛の程度は激しく、寝返りも出来ないと
訴える事は多い。


【診断基準】
比較的広く用いられているBirdらの診断基準(1979)

①両肩の疼痛、こわばり
②発症から2週間以内に症状完成
③赤沈40mm以上
④朝のこわばり1時間以上
⑤65歳以上
⑥うつ状態、体重減少
⑦両上腕の圧痛
上記3項目以上を満たす時、probable PMRとする


【合併症】
欧米の文献では15~40%に側頭動脈炎を合併する
頑固な頭痛、視力障害、側頭動脈の索状怒張で疑う


【治療】
プレドニゾロン15mgより開始。12時間後から症状が改善し始める。
1週間投与でも改善しない場合は診断自体を疑う。
効果あれば2~4週間ごとに減量、5mg程度で1~2年維持。

側頭動脈炎合併例は専門医に紹介!


福岡逓信病院のホームページ http://www.f-teisinhp.go.jp/

には、『病気のプロフィール』というコーナーがあって

大変勉強になります。Dr向けですがお勧めです。PMRはNo.22にあります。

もう少し詳しく勉強したい方はどうぞ。

PDFファイルなので、ダウンロードしてコピーが出来ますよ^^


同様の症状が出る疾患で、もうひとつ忘れてはならないのが、線維筋痛症(Fibromyalgia;FMS)です。

こちらはCRPも上がらないので、ますます「気のせい」などと言われてしまいます。

こちらも、そのうち勉強しようと思っています。


QT延長症候群(以下LQTS)は心臓性失神の原因のひとつですが
学童期、思春期の致死的不整脈の原因として重要です。


有名なtorsade de pointes(トルサード・ド・ポアンツ)は
Vfを招く非常に危険な不整脈です。どんな心電図か一度見たら
忘れないと思いますが、見たい方は“torsade de pointes”で
検索してみると良いでしょう。


少し前ですが急性胃腸炎で入院した24歳の女性が突然arrestを起こしたのを
見た事があります。主治医も眼が点になっていました。幸い主治医の
目の前で起こしたため、すぐに戻りましたが、後にLQTSと診断されて
いました。


臨床では、失神で明らかになる事も多いので
若年者の失神では本症を思い出す必要があります。
もちろん循環器専門医には常識ですが、『聞いた事ある』程度の方は
ここでご一緒に復習しましょう。


一応、診断基準(いくつかあるらしい)も載せておきます(1993 Schwartz et al)


【心電図所見】
QTc≧480ms ポイント=3
QTc 460~470ms ポイント=2
QTc 450ms(男性) ポイント=1
torsade de pointes ポイント=2
交互性T波 ポイント=1
notchedT波(3誘導以上) ポイント=1
徐脈 ポイント=0.5

【臨床症状】
ストレスに伴う失神発作 ポイント=2
ストレスに伴わない失神発作 ポイント=1
先天性聾 ポイント=0.5

【家族歴】
家族の一員がLQTSと確実に診断されている ポイント=1
家族内に30歳未満の突然死あり ポイント=0.5


※失神を伴うtorsade de pointesは合計で2ポイントと考える。
4ポイント以上:確実にLQTS
2~3ポイント:LQTS疑い
1ポイント以下:LQTSの可能性は低い


つまり、失神にストレスが関与していた場合、それだけで2ポイントに
なってしまいます。
しかし、ストレスって微妙な表現ですね…。


つまり、失神に加えて、LQTSの家族歴、家族の突然死歴、上記のいずれかの
心電図異常があったら、循環器内科に診てもらうのが無難です。
特にQTcは必ずチェック!QTc≧460msなら紹介すべき!QTc≧480msは
明らかに異常です。


色々な薬剤が後天性QT延長症候群の原因となります。
有名なものではⅠA群、Ⅲ群の抗不整脈薬、三環系・四環系抗うつ薬、
フェノチアジンやハロペリドール、抗ヒスタミン薬、H2-blocker。
あとは低Kや低Mg、低Ca等の電解質異常も多いので覚えておく必要があります。


失神の時に、これらの問診、チェックが重要となります。

Romano-Ward症候群、Jervell-Lange-Neilsen症候群は名前を挙げておくだけに
しておきます。どちらも、先天性のLQTSの原因疾患です。


【検査】


甲状腺機能亢進症を疑った場合、以下をスクリーニングとして行う
TSH、FT4、CBC(貧血の合併、WBC↓がある)、BS、血沈、CRP(血沈50mm以上では
亜急性甲状腺炎を疑う)

しかし、亜急性甲状腺炎は高熱とものすごく喉を痛がるのですぐ検討がつく。


TSH↓、FT4↑であった場合、TRAbを測定する


TRAb…TSHレセプター抗体。陽性ならバセドウ病と診断

⇒陰性ならTSAbを測定
TSAb…陽性ならバセドウ病と診断

⇒陰性なら、
炎症所見(+)…亜急性甲状腺炎
炎症所見(-)…無痛性甲状腺炎


参考:SRL 臨床検査NAVI 


【治療】


内服、手術、アイソトープがあるが一長一短でゴールデンスタンダードはない。多くは内服が第一選択。
MMI(メルカゾール)、PTU(プロパジール)が用いられるが、MMIの方が力価が高く重篤な副作用が
やや少ないためMMIを第一選択とする事が多い(EBMのための内科疾患データファイルp.1516)。

初期投与量は、


メルカゾール(5)6T~9T 
プロパジール(50)6T~9T


MMIの場合副作用は用量依存性に出現する。
半減期から分3、食後とするがメルカゾールは1日1~2回でも良い

無顆粒球症以外の副作用は皮疹が多い(数%)。肝機能障害にも注意。
効果は多くの場合4~5日で発現。


★ホルモン値改善には通常2~3ヶ月を要する。6ヶ月以上FT4が正常化しない時は専門医にConsult。
★開始時は無顆粒球症に注意し、2~4週ごとに採血を。また咽頭痛、発熱では必ず受診を指導。
★FT4が急激に低下し、1~2ヶ月で正常化する時は無痛性甲状腺炎を疑い投薬を中止して
経過をみる。経過中に甲状腺機能低下が見られる場合無痛性甲状腺炎の可能性が高い。


その他、動悸が強い場合、テノーミン(25)1Tインデラル(10)3T 3Xなど。


不眠、イライラにはエリスパン(0.25)3T 3Xを使用した事があった。


休薬後6ヶ月以内の再燃が多いので経過観察する。


【説明】
内服のコンプライアンスが悪い時は、将来心房細動や心不全をきたす恐れがある事を説明する。
副作用等で内服困難な場合は専門医を受診させる。
タバコは眼症状を悪化、また本症そのものの発症、増悪に関係している可能性がある。
アルコールは適度であれば禁止する理由はない。ヨードは過剰な場合を除き、制限する必要はない
と考えられている(患者さんへの情報提供とインフォームドコンセントp.685)。


【甲状腺クリーゼ】
未治療の甲状腺機能亢進症に感染、手術、外傷、出産などのストレスが加わり急激に増悪した状態。
症状⇒下痢、異常発汗、頻脈、高熱、意識障害 が5徴。
Vital確認。ラクテック等でルートをとり、他の意識障害の鑑別を。死亡率が高いので無理せず専門家に!
(当直医実戦マニュアルp.283)