30日の当直の時のお話です。胃潰瘍の既往のある86歳男性。高血圧があり、降圧薬

を処方されていました。30日の朝食後、午前11時頃、嘔吐。気分不快があり、横になって

いましたが、午後2時頃トイレに立った時に2回嘔吐。たちくらみもあり、救急車を要請。

救急隊到着時血圧が70台。16時過ぎに病院に到着となりました。

病院ではボーッとしていますが見当識は保たれており、質問にはきちんと答えていたようです。

病院でのVitalは、BP 115/66、P 90、SpO2 99(room air)。

眼瞼結膜に貧血あり、MMT fullで神経学的所見なし、右下腹部に圧痛、と記載されていました。

貧血に注目した担当医は採血を行いました。Hb 6.7。他に目立つものはBUN 58.3、Crea 3.3。

血糖170とやや高め。その他WBC、肝機能などの生化学検査は問題ありませんでした。

嘔吐は血性ではなく、タール便の訴えもありませんでしたが既往から、消化管出血が疑われました。

暮れであり、対応の遅れを招くといけない、との配慮から、その日に上部の内視鏡が行われる

ことになりました。


しかし、内視鏡を待ってる間に意識消失、下顎呼吸となり、モニタは心波形が

確認出来ますが脈は触れず、いわゆるPEAの状態です。

意識を失う前に背中が痛い、と言っていました。

挿管を行い、血圧が戻ったのでCTを撮ろう、という事になりました。

CT台の上でarrestとなり、この時に私が呼ばれました。

蘇生を行い、内頸動脈が触れるようになったので、集まってきた上級医達と相談し、

なんとかCTを撮りました。


結果は…やはり、と言うべきか腹部動脈瘤(AAA)破裂でした。


その後は緊急手術となりました。術中死は免れましたが、全身状態は回復せず、

1月1日に永眠されたとの事でした。


このケースを振り返り、自分なりに考えてみました。より良い対応は出来たのか、

今後に活かせる何かはあっただろうか。しかし、消化管出血を疑ったのも妥当

だと思いますし、例えAAAがわかっていたとしても、症状がない段階では治療の

適応はないと考えていたかもしれません…86歳ではリスクが高いですし…。

Hb6.7という事は、破裂の前にoozingがあったという事だと思いますが

疑う根拠がないと、なかなかCTには踏み切れなかったと思います。

…何かご意見あればお願いします。

当院の救急外来にもインフルエンザの患者さんが多数受診されるように

なってきました。そこで今年の最初の記事はインフルエンザについて

Q&Aでまとめてみました。


Q1 インフルエンザと風邪の違いは?

何と言っても感染力の強さと症状(発熱、関節痛、筋肉痛等)の強さでしょう。

また20代や30代の人がインフルエンザが重症化し、入院となるケースは滅多に

ありませんが、乳児や高齢者では肺炎等を合併し、致死的な経過を辿る

場合もありますので、本人だけでなく、周りの人も是非予防接種やうがい、

手洗いを心掛けて下さい。


Q2 予防接種って効果あるの?

麻疹や水痘ほどの効果はありません。その年によって、また年齢によっても

違いますが…色々な統計をまとめると、予防接種でインフルエンザにかかることを

避けられる方は半分かそれ以下と考えた方が良さそうです。しかし、重症化を防ぐ

効果もあり、特に高齢者のインフルエンザによる入院や死亡を80%くらい減らす

と言われています。乳児は高齢者と同じくらいリスクがあり、また心臓や腎臓、

呼吸器の病気をお持ちの方は是非接種をお勧めします。


Q3 予防接種は鳥インフルエンザにも効果ありますか?

ありません。


Q4 妊婦でも予防接種出来ますか?

出来るか、というよりも常識です。

妊娠のあらゆる時期を通じて安全に接種出来ます。妊娠中はインフルエンザが

重症化しやすく入院のリスクは5倍と言われています。また、胎児に統合失調症や

気分障害、脳腫瘍等が増加するという報告もあります。抗ウィルス薬の妊娠、授乳中

の安全性は確率されておらず、胎児や生まれたばかりの赤ちゃんを守るために

予防接種は必ず受けて下さい。


Q5 予防接種は1回だけで良いの?

子供は免疫がつきにくいので2回投与が勧められています。13歳以上では1回でも良いですが

2回受けた方が予防効果が大きいのは確かです。2回投与では、1回目と2回目は4週間

空けるのが原則です。それより早いときちんとした効果がない可能性があります。


Q6 予防接種はすぐに効果が出ない?

はい。インフルエンザワクチンはIgGという免疫が関与しており、大体2週間から

効果が出始め、きちんとした効果が出るのに4週間かかると言われています。

一方、効果は5ヶ月ほど持続しますので、10月~12月に接種を終えておくと良い

と思います。


Q7 ドクターは症状だけでインフルエンザと診断出来るのですか?

出来ません、と感染症の権威の先生が言っておられます。インフルエンザの

最も流行っているシーズンでも、症状だけの診断では約50%が誤診と言われて

います。この時期は他の風邪や肺炎も多いですので、抗ウィルス薬を飲む場合

診断キットを使った診断を受けた上で判断した方が良いと思います。


Q8 診断キットの結果は絶対ですか?

いいえ。キットによっても違いますが、概ね80~90%の正しさ、という理解で良いと

思います。熱が出てから検査を受けるまでの時間が早すぎると偽陰性の可能性が

増えます。出典は忘れましたが、6~8時間くらいたってからが良いようです。

また、手技が下手だときちんとした結果が得られない場合があります。

偽陽性は少ないですが、出血は偽陽性の原因になるそうです。

症状だけでの判断よりはずっと正確にインフルエンザの診断が出来ると思います。


Q9 抗ウィルス薬は飲んだ方が良いですか?

タミフルやリレンザ等の抗ウィルス薬ですが、高熱の出る期間を平均93時間から

70時間に短縮出来ます。しかし、腹痛(6%)、下痢(5%)、嘔気(3%)等を始め

副作用も27%にみられます。合併症のない若い方は、無理に飲まなくても良いと

思います。高齢者や基礎疾患のある方は重症化予防のために内服をお勧め

します。この場合、インフルエンザは一旦熱が下がってまた上がる事もよくあるので

5日間きちんと内服した方が良いです。また、1歳未満は安全性が確率されていない

ので避けた方が良いです。


Q10 解熱剤が危険と聞きましたが…。

まず、解熱剤は必須ではありません。それどころか、治癒を2日から3日遅らせる

可能性も指摘されています。しかし、実際39℃以上の熱で我慢するのはしんどい

ですし、脱水や食欲低下、体力の消耗の原因になりますので、ほどほどの使用は

むしろ有益ではないかと思います。アスピリンはライ症候群を起こす場合があり

ボルタレンやポンタールはインフルエンザ脳症を悪化させる可能性があります。

そもそもライ症候群、インフルエンザ脳症自体まれですが、小児では禁忌と

されており、成人でも止めておいた方が無難です。安全とされているのは

カロナール(一般名アセトアミノフェン=アルピニー、アンヒバ)です。


Q11 抗生剤が処方されましたが。

インフルエンザ、感冒の診断がついているのに抗生剤(ペニシリン、セフェム、

マクロライド)が処方される場合があります。これははっきり言って無意味です。

肺炎の予防などの名目のようですが、予防効果は全く認められていません。

むしろ、副作用が比較的多い薬ですし、耐性菌の問題もあり、飲まない方が良いです。


国立感染症のホームページ;インフルエンザ関連

http://idsc.nih.go.jp/disease/influenza/fluQA/index.html


宮下クリニックのホームページ

http://www.miyashita.or.jp/

健康講座のインフルエンザのページはお勧めです。



月曜日の当直で、家族に暴力を振るい医療保護入院になった男性がいました。

自称うつ病と語るその青年は、私が精神科で出会った典型的なうつ病の患者さんとは

異なる病歴や印象から、私はB群の、例えば非社会性パーソナリティ障害のような

方なのかな、と思っていました。もちろん、1回の救急の場での診察では、ベテランの

医師でも診断出来ないし、すべきではないと思いますが、一緒にいた上級医に、

先生はどんな病態を考えていますか、と質問してみました。

上級医の返答は上記の『アスペルガー症候群』でした。


彼の生い立ちの中で、子供の頃に、普通の子供のおもちゃでは遊ばず、

古い電池にのみ興味を示し、言葉がまともに喋れない頃から“ひたち”、“なしょなる”

等、電池の会社の名前を覚えていたというエピソード。

その場に不釣合いなまでの礼儀正しい言葉遣い。独特の感覚のずれ。

そういったものでアスペルガー症候群と考えたそうです。

パーソナリティ障害と同じく、Ⅱ軸の問題である、“発達障害”に分類されます。


彼が本当にその病気かどうかは別として、私はこの病気について全く知識が

なかったので、“精神科に2ヵ月いるのにこれはまずい”、と思い勉強してみました。

しかし、本の説明がわかりにくく、しかもどの本も1ページくらいしか説明が載って

いませんでした。詳しい本はいくつか出ているみたいですが、とりあえず昨日見つけた

一番分かり易い説明は、Wikipidiaの説明でした。


http://ja.wikipedia.org/wiki/


で、“アスペルガー症候群”を見て頂くとかなり分かり易く解説されています。

本症は、“自閉症”の仲間で、知的障害を持たず言語の障害はありません

「高機能自閉症」と「アスペルガー症候群」は基本的には同じものを指します。

いくつか分類(呼び方)があるものの、その明確な違いはなく、定義に曖昧な部分があり、

軽症の方を総称して『自閉症スペクトラム』と呼ぶ事も多いようです。


まず最初に自閉症を“引きこもり”と混同している方も多いとお聞きしたので…。

自閉症がわからない方にイメージを簡単につかんで頂くために誤解を恐れず言えば

『レインマン』という映画でダスティン・ホフマンが演じた主人公のお兄さん、

レイモンドが分かり易いかもしれません。しかし、彼はカナータイプ

と呼ばれる低機能自閉症だと思います。知的に正常で言語障害もない

アスペルガー症候群と呼ばれる方はある意味ずっと“普通”です。


一見非自閉症の方と変わりがないように見えるアスペルガー症候群の方。

問題は何かという事うを簡単に言えば(これは自閉症全てに共通する事ですが)

『人の感情を理解出来ない』ことにあるのです。

場の雰囲気を感じ取ったり、ニュアンスを理解したり、行間の意味を読む事は

アスペルガー症候群の方はとても苦手です。


Wikipidiaの分かり易い喩えでは、宿題をして来なかった子供に、先生が

「宿題を犬が食べちゃったの?」

と皮肉っぽい冗談を言ったとすれば、アスペルガー症候群の子供は、

「自分は犬を飼っていない」「犬はノートを食べない」

等の説明を先生にするべきかどうか悩んで固まってしまうのだそうです。


そのような特徴から、冷たい人、風変わりな付き合いにくい人というレッテルを

貼られ、ますます周囲から孤立する傾向にあり、また職場の人間関係を

築けない事になりがちです。彼らは二次的に被害的となり、

統合失調症と間違えられる場合すらあります。


最後に、全ての精神科領域の疾患に言える事ですが、本症も

『私はアスペルガー症候群』と自己診断してしまったり、

知識の少ない医師に間違って診断され、辛い想いをされる方もいると聞きます。

診断は慎重に、専門医によってなされる必要があり、

程度も様々である事を付け加えておきます。

これは数年間の私の仕事の中で考え、学んだことです。

私がこれを達成しているわけではなく、日々こうありたいと考えていることです。

全てオリジナルではなく、他の先生に指摘されたり本で読んだものもあります。

ターミナルに限ったことではなく、日常の診察もこのように当たれたら良いな、

と思っています。


①恐らく患者さんにとって貴方が最後の担当医です。

どうか、患者さんが出会った中で最高の医師であるよう、心掛けましょう。


②私の尊敬する医師は、初対面の時に「よろしくお願いします」

と握手を求めていました。そういう気持ちで診療に当たりたいと思います。


③患者さんは意識してかしないでか医者を喜ばせようとしています。

気を遣わせてはいけないと思います。気を遣わせてしまったとしたら

それは医者の責任です。医者がいる時に患者さんがcomfortableで

あるべきではないでしょうか。親しみやすいのが理想です。


④出来る事と出来ない事があるが、気楽に何でも言って下さい、と

まず伝えましょう。


⑤告知は目的ではなくコミュニケーションの一部です。病状の説明から

始めて、患者さんが黙ってしまう時はまだ聞きたくないと考えられます。

逆に知りたいという気持ちを表してきた場合は誠実に答えるべきです。

気持ちを想像し、思いやりの気持ちをもって伝えましょう。


⑥余命告知はより慎重であるべきです。病名告知は事実ですが

余命告知は予想でしかありません。希望を全て奪わないように

細心の注意を払って下さい。


⑦患者さんにとって一番大切なものを共有出来たら素晴らしいと

思いませんか?男性にとっては仕事、女性にとっては家庭の話を

聞いてみて下さい。その人はどんな人生を送ってきたのでしょう?

患者さんにとっても自身を再確認する意味があると思います。


⑧良い事は1点1点分かち合いましょう。今日は少し食事が出来た。

今日は少し肝機能が良かった。医師にとってはまた悪くなる事が見えて

しまうかもしれませんが、患者さんと一緒に“一喜”出来れば素晴らしい

と思います。


⑨患者さんの全てが失われていく中で、家族や大切な人への感謝が

言える患者さんは最期は安らかです。家族に1日1回家族に

“有難う”と言ってもらうように話す事は、興味を家族に向ける手伝いに

なるかもしれません。