癌の痛みの治療はWHOの指針に基づいてNSAIDsやオピオイドが使用されます。

多くは良好なコントロールが得られる事がわかっていますが、10%程度の患者さん

においては十分な鎮痛が得られず難渋する場合もあります。

そんな中で、我が国でもやっと、鎮痛補助薬の理解が広まり、多くの医師が使用

するようになってきました。


しかし、まず基本的な考え方として、これらの鎮痛補助薬はオピオイドが十分量使用さ

れている事が条件であり、痛みが取れない原因として単なるオピオイドの絶対量不足

というケースが多くあります。少し眠気が出るくらいの量を使用するのが基本です。

その上で、ビリビリするような、焼け付くような、締め付けられるような痛みには

鎮痛補助薬の併用を検討すべきです。


鎮痛補助薬として、実にたくさんの薬が挙げられています。どんな場合に何を使ったら

良いか、慣れない医師には全くわからないと思います。鎮痛補助薬は眠気やふらつき

の副作用が出るものも多く、当てずっぽうで処方する事は出来ません。

最近の流行?は抗うつ剤と抗けいれん薬で、効果の高さと効果発現の早さから

アモキサンとランドセン(=リボトリール)がよく使われます。これらは緩和を

専門としない医師でも、どんどん利用して頂いて良いと思います。


以下のいずれかを開始します。数日で効果が出る場合が殆どです。


アモキサン(25)1T 寝る前 高齢者では10mgから


ランドセン(0.5)1T 寝る前 ふらつく時は半錠でも効果がある事も多い


これらは時に劇的な効果があります。一説によると癌性疼痛の50%近くに

神経因性の痛みが関与しているとのこと。疼痛コントロールが今ひとつ

の場合には積極的に試して頂いて良いのかな、と思います。


ちなみに鎮痛は抗うつ効果とは関係ないようです。うつが改善しない

少量でも効果があり、また抗うつ作用りもずっと早く効果が期待出来ます。

使い分けは、持続的なしびれでは抗うつ薬、突発的な疼痛が走る場合は

抗けいれん薬が良いようです。両者を併用する場合もあります。

抗うつ薬はトリプタノールでも良いですが副作用の少なさと効果発現の早さ

からアモキサンが好んで使われています。なお、抗うつ薬TCAの効果は

プラセボとの比較で効果が確認されていますが、SSRI、SNRIについては

懐疑的な立場の医師もおり、評価が定まっていません。


また、抗不整脈薬も使われます。

メキシチールは副作用が比較的少なく使用しやすいかもしれません。


その他では抗けいれん薬デパケンが使いやすいのではないかと思います。

抗不整脈薬タンボコール、抗けいれん薬テグレトールも切れ味良く効きます。

しかしこれらの薬は上記薬剤よりも副作用が出やすく

相互作用も多いので利用は慎重に、また複数の併用は極力止めた方が良いです。

今日はクリスマスイヴです。事前に用意したプレゼントを、車から

運び出し、娘たちを起こさないように、家内とふたりで枕元に置きました。

少し前までは、クリスマスは自分達のためにやって来る日、という感覚で

いましたが、娘が生まれてからは、娘達を喜ばせる事が出来る日に

なりました。gloeのマーク・パンサーさんが、

“子供が生まれて、人生の主役が自分から子供にうつった”

と話していましたが、本当にその通りだなぁ、と思います。


人生の主役が、自分から、他者にうつる。

その時に感じる安らぎと幸せ。

考えてみたら、これこそが『愛』そのものなのではないでしょうか。


なんて偉そうに話していても、きっと弱い私は

いつの間にか退いたはずの主役の座に居座っているつもりになり、

娘とぶつかったり、イライラしたり、するのかもしれませんが。

いや、きっとするのでしょう^^;


みなさんはどんなクリスマスをお過ごしでしょうか。

優しい気持ちで過ごせる日となりますように。


メリー・クリスマス!!

本日の内容は、「精神治療学」第20巻増刊号を中心にまとめたものです。

2003年に精神科薬物療法研究会なるものが、治療のアルゴリズムを発表

しています。2004年には精神医学講座担当者会議が監修している、気分障害の

ガイドライン(医学書院より出版)あります。通常これらに沿って治療が行われて

いると考えられます。


うつ病(中程度)治療アルゴリズム


うつ病(重症)治療アルゴリズム




現在、基本的な第一選択がSSRIもしくはSNRIです。

これらの薬剤は効果発現まで2~4週を要するので

我が国のガイドラインでは初期はBZ系を併用して良い事が記されています。

ちなみに三環系の方が強力、というのはあくまで臨床的感覚といくつかの報告

のレベルで、十分なエビデンスはないとのこと(「精神治療学」代20巻増刊号)

です。


効果が不十分な場合。まず『うつ病』の診断が合っているのかどうかを考える

必要があります。適応障害や神経症、痴呆、パーソナリティ障害が関わっていると

抗うつ剤は十分に効かない事が多いようです。この辺りの話はいずれ書きます。

それからデプロメール75mgとかトリプタノール75mgとか中途半端な処方が

だらだら続けられている場合(たぶんあまり詳しくない内科の先生が出して

いるものと思われます…)先にきちんとした量を処方すべきなのは

言うまでもありません。

ちなみに、例えば三環系トリプタノール、アナフラニール、アモキサン等であれば

最低150mgは投与してから効かないと言って下さい。

以下は薬剤を追加するとしたら…という事に絞ってお話します。


選択は、大きく分けて


①ECT…食事が全く取れなかったり、希死念慮が強い時。

②他の抗うつ剤に変更(SSRI、SNRI、TCA等)

③抗うつ効果を高める薬剤を追加する(augumentation オーグメンテイションと呼ぶ)


②を行っても、効果が出るまでに時間がかかるので、③を選ぶ事が多いようです。

追加する薬剤は先生によって違います。何人かの精神科の先生にお聞きした事を

めてまとめると、


ファーストチョイスはリチウム、デパケン等のmood stabilizerです。

これらは躁病の時に処方されますが、うつ病でも処方される事があります。

以前ayuさんが指摘して下さいましたが、最近は患者さんが薬をよく勉強して

いるので、処方された薬を見て“自分は躁うつ病なんだ…”と思い込んで

しまう事があるようです。あまり細かい説明をしても…と考えている先生もいるので

何故この薬なのか説明を求めると良いと思います。

他に良く使用されるのは、甲状腺末パーロデル(ブロモクリプチン;パーキンソン病の

薬です)が有名なようです。甲状腺末は別に甲状腺機能が低下していなくても効果が

あるようです。最近あまり見ないという先生もいました。少し古い方法かもしれません。


最近はジプレキサ(オランザピン;統合失調症で使われる)等SDAを加える事もあり、

これも上記と同じ理由で、処方された方は勘違いしてしまうかもしれませんね。

先生によってはリチウム等よりも副作用の面でこちらの方が使いやすく、好んで使用される

ようです。睡眠導入も兼ねていたりします。また、重症では初めから向精神病薬を併用

することもある(「精神治療学」代20巻増刊号より)そうです。

前にも少しご紹介しましたが、複数の抗うつ剤を併用する治療法はオーソドックスな方法とは

言えないようです(少なくとも治療アルゴリズムには登場しません)。ベテランの精神科医が

熟慮の元に処方しているなら良いですが、薬に詳しくない医師が苦し紛れに処方している

ケースもあるので注意です。


最後に悪名高きリタリン(メチルフェニデート)があります。合法ドラッグとして有名な

覚せい剤の一種です。はっきり言ってこんなもの出す医者の気が知れません。

服薬した方に聞くとだいたい効果があるのは初期のみ。短時間で効果が切れると

不安から服薬量が増えがちになります。依存が非常に問題になっています。

常用量ならそれなりに良い報告がある、と話す医者!貴方は親や子供にもこれを

処方するのか、と聞きたくなります。

最近、うつの薬からリタリンを外そうという動きがあるようです。

(うつにこんなもの使えるのは日本くらいだそうです)

もし、リタリンでなければ救えないくらいの患者さんがいるなら、その前に

入院、不可能なら速やかにしかるべき場所に紹介すべきです。



癌末期に、難治性の痒みに悩んだ経験はありませんか?

主に肝不全や総胆管閉塞に伴うビリルビンの上昇によるものや

モルヒネの副作用としての痒みは時として非常に難治です。

これらは患者さんのQOLを著しく下げます。時には痛みよりもつらい

と表現されます。


まず、モルヒネであれば、ヒスタミン遊離作用が少ないレペタンやフェンタニルに

変更するのもひとつの手です。

薬剤の第一選択は抗ヒスタミン系の薬剤、アタラックスやレスタミン等です。

しかし、効果不十分な事が多く、どちらかと言うと副作用の眠気で、

患者さんが眠れるので、その間だけ痒みを感じなくて済む、といった程度で

あると思います。


これで効かないと、強ミノやらステロイドやらが苦し紛れに使用されます。


他に報告が多いのは、オンダンセトロン(ゾフラン)です。もともとは抗がん剤使用時の

吐き気に対して使う薬ですが、5-HT3というセロトニン受容体を拮抗する事で痒みの

軽減も期待出来ます。経口でも注射でも効果があり、短時間で効果が出るのも

特徴です。ただ、抗がん剤と併用でないと保険が通らないので、ゾフラン4mg錠1683円、

ゾフラン注4mgでは7337円はほぼ間違いなく査定されます。ホスピスでは良い選択肢

ではないでしょうか。ちなみに、4mg錠を朝と夕に2回、というような使い方をします。

他の5-HT3でも効果あるようです。著効例もあるようです。


他に変わったものとしては麻酔薬ディプリバン(プロポフォール)を使う、というものです。

鎮静か??とも思いましたが、使用する量は微量で良いようです。麻酔の導入には

体重辺り1mg、つまり60kgの人では60mg使用しますが、10mg程度でも効果が

あるようです。ゾフラン無効例にも効果あるとか。


(1)プロポフォール(ディプリバン注)10mg(200mg/20mL)を静注し、

掻痒感が強い場合にはさらにプロポフォールlOmgを静注。


(2)プロポフォール(ディプリバン注)10mg(200mg/20mL)を静注し、

その後30mg(3mL) /24hrで持続静注。

ちなみにこれらも保険適応外。200mg注のお値段は1575円です。


精神科外来を受診された患者さんです。

80歳女性。心疾患の既往があり、今年の2月に退院、自宅で問題なく過ごしておられた。

1ヶ月前、初めは電球に虫がとまっている、という訴えから始まり、物が人の顔に見えたり、

そのうち、布団から赤ん坊が顔だけ出している、知らない男の人と子供が家の中にいる、

という訴えとなりました。お風呂にその男の人と子供が入っている、と言って、2回、警察に

通報した、という事です。幻視は、昼も夜も見られますが、誰かが一緒にいる時には

見えないという事です。長谷川式痴呆スケールは22点。


せん妄が第一に考えられます。鮮明な幻覚はせん妄の特徴のひとつです。

もうひとつ、考えなければいけない疾患があります。それが『びまん性レヴィ小体痴呆』

(以下DLB)と呼ばれる痴呆の一型です。


1996年に「レビ-小体型痴呆 Dementia with Lewy bodies」 として臨床像、病理所見が

まとめられて国際的に認知されるようになりました。 レビ-小体型痴呆は稀ではなく、

変性疾患としてアルツハイマ-型痴呆についで多いと考えられています。


①生々しい鮮明な幻視

統合失調症では幻聴が多い。アルコール離脱時等の小動物幻視と比較すると

大きな人間の幻覚が出るのが特徴とされている。


②パーキンソニズム

痴呆と同時に、あるいは遅れて振戦、固縮、小刻み歩行などのパーキンソン病に

見られる症状が出現する。


③せん妄でみられるような認知障害の変動


④抗精神病薬への過感受性

錐体外路症状が出やすい


等。


治療はこれ!という確立したものはまだないようです。

どれも一長一短ですが、よく用いられるのは、


①抗パーキンソン薬

パーキンソニズムに対して。パーキンソン病ほど反応しない事が多い。

幻覚の症状がひどくなる、という意見もある(あまりはっきりわかっていないらしい)。


②向精神病薬

せん妄にはセレネースがfirst choiceです。

DLBでも幻覚にはある程度効果がありますが、パーキンソニズムが悪化する場合

がある事が報告されています。錐体外路症状が出にくい非定型の向精神病薬

(リスパダール0.5mg)等が選択される事が多いようです。


追記:DLBの患者さんに抗精神病薬(非定型も含む)を使用すると不可逆性の

パーキンソニズム、意識障害、重篤な自律神経症状といった副作用が患者の

50%に生じ、死亡率が2~3倍に上昇する。DLBの患者さんにはBZ系薬物や

コリンエステラーゼ阻害(アリセプト)の方が無難である、という記載がありました。

(速習 精神医学 金芳堂)


③アリセプト

アルツハイマーの治療薬です。効果ありとの報告が散在しています。


上記の患者さんはこの場で診断は不可能です。検査と平行して

リスパダール0.5mgが処方され様子をみる事になりました。

以下にDLBの日本神経学会の診療ガイドラインを示します。


追記:DLBの診断が確実である場合、診断の時点からの平均予後は1~2年だそうです。

(速習 精神医学 金芳堂)



http://www.neurology-jp.org/guideline/dementia/3_08b.html