——制度や組織論の前に、起きていること
事業承継の相談を受けていると、
ある場面で空気が変わることがあります。
数字や制度、スケジュールの話をしている間は、
経営者はよく話す。
ところが、
「誰に、何を、どこまで引き継ぐか」
という問いに近づいた瞬間、言葉が止まる。
沈黙が生まれると、周りはつい
「準備不足だ」
「決断が遅い」
と解釈してしまいがちです。
ただ、私はこの沈黙を単なる弱さや先延ばしだとは思っていません。
承継は、経営課題であると同時に、
人生の話に触れてしまう。
そこが、話が止まる最大の理由ではないでしょうか。
「承継が進まない」は、制度の問題だけでは説明できない
もちろん、制度設計は重要です。
株式、相続、税務、役員体制、ガバナンス……
整えるべき論点は多い。
しかし現場では、制度の話が“進んでいるように見えて”、
核心部分だけが動かないケースが少なくありません。
- 後継者候補はいるが、最終決定に至らない
- 権限移譲の計画はあるのに、日々の意思決定が手放せない
- 幹部育成を進めても、任せる場面になると踏み切れない
ここで「経営者の覚悟が足りない」と切ってしまうのは簡単です。
ただ、覚悟の有無に還元してしまうと、
問題はむしろ深く潜ります。
経営者が黙るとき、頭の中では何が起きているのか
1)会社を手放した後、自分は何者になるのか
役職や肩書きの話ではありません。
「毎日が埋まっていた状態」から
「自分で意味を作らなければならない状態」へ
移ることへの不安です。
2)引き継がせたいものは“仕事”だけなのか
理念、判断軸、こだわり、譲れない基準。
会社は成果物ではなく
「生き方の痕跡」になっていることがあります。
3)正しさが書き換わる感覚
承継が進むということは、
これまでの意思決定が唯一の正解ではなくなる
ということでもあります。
この問いが同時に立ち上がると、沈黙は自然になります。
組織論が効かなくなる瞬間
事業承継では
「組織を仕組み化しよう」
「権限移譲を進めよう」
と言われます。
ただ、経営者の中で引き継ぐ意味が整理されていない段階では、
組織論は空回りしやすい。
- どこまで任せていいのか(境界線)
- 何を守り、何を変えていいのか(判断軸)
この前提が共有されていないと、人は育ちません。
最後に
事業承継は、制度と計画で進む面もあります。
同時に、経営者の中で「引き継ぐ意味」が定まったときに、
一気に動き出す面もあります。
もし今、承継の話題で言葉が止まるなら、
それは能力不足ではなく、
向き合うべき問いに触れているサイン
かもしれません。
補足として
この記事は、事業承継や組織の話を、制度や手順ではなく、
「経営者自身の意思決定の前提」という視点から整理しています。
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