小倉貴久子のモーツァルトのクラヴィーアのある部屋《第12回》 | 北十字の旅と音楽会記録が中心の日記

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今日は仕事帰りに新宿 初台へ。

小倉貴久子のモーツァルトのクラヴィーアのある部屋《第12回》

19時~
近江楽堂

クラヴィーア:小倉 貴久子
クラヴィーア:羽賀 美歩


今日のゲスト作曲家はルイ・エマニュエル & イアサント・ジャダン兄弟
Louis Emmanuel Jadin [1768-1853] 
 Hyacinthe Jadin [1776-1800]
私はこの作曲家については、弦楽四重奏曲のCDを聴いたことがあるだけ。ピアノ曲はもちろん初めて!

演奏は 小倉 貴久子・羽賀 美歩の2人。
羽賀さんは小倉さんのお弟子さんで、このシリーズ2回目。前回も素晴らしい連弾でしっかりチェックしたピアニスト。

最初は小倉さんで
🎵モーツァルト:〈ナンネルの楽譜帳〉よりメヌエット ニ長調 K.7
またまた最初はかわいい曲で 幕開け。
今日は聴き慣れたヴァルターのフォルテピアノでしたが、ちょっぴり音が重たく感じました。湿気のある季節による気分のせい?

ここから前半は羽賀さんが加わり
🎵H.ジャダン:四手のためのデュオ ヘ長調
完全に古典派!って年代を生きた弟の作品だから と思っていたら、あら ビックリ!第1楽章第1主題の経過部から、ショパンの先取りか󾬅みたいなロマンティックできらびやかな部分があり、これは…と思うも、第2主題は ザ古典派に戻り、現代の耳にすると「期待させておいて 保守系でまとめちゃうのね」って感じ。
では 残念な曲かといえば、ちがう!
当時の耳で聴けば充実した 鍵盤を使いこなした 作品。第2楽章のメランコリックな色彩は魅力いっぱい。

ここで小倉さんのお話。
ジャダン兄弟のお話やフォルテピアノでの連弾について。小さな楽器、鍵盤も小さく軽い、なので モダン楽器の連弾と要領が違って 大変なんですよ~…等々

次は羽賀さんが上のパート(他は小倉さんが上でした)になって
🎵L.E.ジャダン:四手のためのソナタ ト長調 Op.2-1
長生きしたお兄さんの作品。ロマン派のど真ん中まで活躍しているのですが この曲は1791年以前と若い、というか古典派時代の作品。
しかし、第1楽章では1人だけで華麗に鍵盤を駆け回る部分もあったりと 聴きどころ満載。
第3楽章では 旋律に半音をぶつけてくる元気さが 刺激的。
そして最もワクワクしたのは 中音域で どちらがどの音を弾いているのか まったくわからなくなる、私は演奏者の正面に座っていたので、スリリングな曲でもありました。

この2曲では 小倉さんと羽賀さんのフォルテピアノの音色が「もちろん呼吸も!)ピッタリ。そのように2人で作り上げた音楽は とてつもなく大きく聴こえました。

前半最後は
🎵モーツァルト: 四手のためのソナタ ハ長調 K.521
有名な音楽が入っているとホッとします。
ここで感じたのは 最初の瞬間、
『隙間がある』と。
ジャダン兄弟の作品では 音を1つにまとめてきた感じがしたのですが、ここでは 音を各自の色で組み立てている って風。掛け合いや対話がスリリングなモーツァルトの作品では、私は隙間がある方が好き。
羽賀さんの中間色のような音に対して、暖色系の小倉さんの音が柔らかく対比されました。また、強弱の対比も大きくなり、フォルテピアノの性能を存分に発揮した演奏、そして それが発揮できる曲! でした。
そして最も印象的だったのは、第3楽章の最後、モデラートペダルを踏み込んでの柔らかい音色。それは絶品でした。


休憩のあとは小倉さんのソロで
🎵H.ジャダン:ソナタ 変ロ長調 Op.4-1
前半に充実した音の世界を聴いちゃうと、やっぱり小さく聴こえてしまう。
作品は 古典派そのものって感じの 小型のソナタ。
そんな曲でしたが、小倉さんのメリハリの効いた輪郭のハッキリした演奏は貧弱さを感じさせないものでした。

そして最後に
🎵モーツァルト: 交響曲 ト短調 K.550[四手用:ウルリッヒ編曲版]
19世紀半ばの編曲作品。
期待してなかった分、楽しめました。
旋律をしっかり聴かせる耳ざわり。対旋律が聴こえてこないのが、交響曲を知っている耳にはちょっぴり残念。また 小倉さんと 下を弾く羽賀さんとの丁々発止のやり取りもなく、スリリング好きな私には ちょっぴり残念。
でも モーツァルトの美しい曲を 連弾で聴いて楽しむことができました。

最後にアンコールは 次回のゲスト作曲家、ボッケリーニ。有名な
『メヌエット』
を連弾で!
私はこの曲は 蒸気機関車のように重心の低い のんびり優雅な雰囲気の曲って勝手に思っていたのですが、
お二人の演奏は、Nゲージの模型の蒸気機関車がジオラマを駆け抜ける如くで、めちゃめちゃ楽しかったです。

今日はジャダン好き(マジに!)なお友達も来て、満足した様。私も未知の作品や耳慣れた作品ともども、素晴らしい演奏に大満足。
こんな演奏会が東京で80人程度しか耳に出来ないなんて、もったいなさすぎます!