森鴎外訳、グルック:歌劇『オルフェウス』:文京シビックホール | 北十字の旅と音楽会記録が中心の日記

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~あな 君失せぬ はや~

横浜市民なら全員歌える『横浜市歌』。
その作詞は
森 林太郎
私には 文学者『森 鴎外』より 作詞家『森 林太郎』が身近な存在。
その林太郎が 今年 生誕150年なんです。
そこで東京の文京区には、記念館がオープンしたりと、様々なイベントがあります。

今日はその一環。


👗グルック(森鴎外訳):歌劇『オルフェウス』

15時~
文京シビックホール

オルフェウス:青木 洋也
エウリヂケ:橋爪 ゆか
アモオル:森 美代子
長岡京室内アンサンブル 
合唱:特別合唱団
舞踊ソロ:花柳 寿美
群舞:藝○座 
指揮:鈴木 優人
演出:渡邉 和子 


鴎外訳の「オルフェウス」は、私の知る限り 3回目の公演のハズ。

特に期待大で行ったのは 歌手。
今回、オルフェウスを男性が歌います。当時はカストラートが歌っていたので、近年は女声が歌うようになっていたんですね。やっぱり観る時は男性でないとね~

そしてオーケストラが長岡京室内アンサンブル。
昨年の東京の春音楽祭で 鮮烈な四季を聴かせてくれた、私の好きな関西のアンサンブル。
合唱は特別合唱団でしたが、そこには古楽系の声楽陣の名前や、5年位前まで藝大系の音楽会で追いかけていた歌手もいて、そちらにも注目。

私の席は7列目やや左手の最高の席、だと思って行くと、オケピの後ろ。つまり実質の1列目。困ったのは、今日はしっかり『字幕』が舞台左右についていたのですが、とっても読みにくかったこと。失敗。
そう、今日は『古語』での公演ですから。でも家にあった東京藝大で収録された 鴎外訳のこの作品のDVDと歌詞が同じだったので、どうにかセーフ。

舞台は後ろの反響板を外し、中央に骨組み露わな花道をオケピまで伸ばし、その真ん中に下向きの照明が1つという、それだけ見れば前衛的ともとれるもの。
そして左右から背後にかけて映像を映す。天国の最初では、現代アートみたいなビデオで始まる。最後の大団円は花火だった。
装置を極めて安価に抑えた演出。その方法では良く考えられたものでした。
ただ 中央の花道の高さが約1m。そのため 一番前の私の席では 花道の向こう側で歌われると 全く音が届かない。合唱も両側で唱われると、こちら側で歌う2声部のみしか聴こえない。まぁ、バランスが崩れて楽しい部分もありましたが…

今回 休憩を第2幕途中、地獄から抜け出たところで取り、後半を天国の場面としたもの。
曲に関しては 異版が多いこの作品では、かなり多めに曲が歌われ、普段聴けない曲も挿入され、それは本当に楽しめました。

オケのメンバーも、舞台で衣装をつけての演奏も多く、華やかな舞台に仕上がっていました。
精霊の踊りのフルートもそうでしたが、ハープやヴァイオリンまでも、舞台上での演奏は良かったです。ただ 第2オーケストラ(エコー)をきっと奈落に置いたのか、スピーカーを通しての音になっていたのは、そのバランスの問題もあり、耳障りになりました。舞台袖当たりでの演奏ができなかったのでしょうか。
なお チェンバロももちろんPAを使ったのですが、これも同じスピーカーを利用。私の席からは、右手にチェンバロがあるのに、左手奥の舞台下あたりから、電子的な音で聞こえてくるのもイマイチでした。チェンバロはその下にスピーカーを設置して欲しかっなぁ~

歌手はオルフェウスの青木さんが絶好調。他の2人を圧倒。第1幕最後の、古典派そのもののコロラチューラのアリア『去れ去れなげきよ』は本当に見事でした。そして特筆すべきは その歌詞の発声の明瞭さ。字幕不要で聞き取れました。
橋爪さんは声はいいものの、歌詞が聞き取りにくいのはビブラートのため。青木さんとの二重唱で、ビブラートつきとなしの組み合わせで、奇妙な瞬間がありました。
アモオルの森さんは、初々しさと清冽な声質がプラスに働きました。

また今回は合唱も4-4-4-3でしたが、かなり細かく各パートをソロや2名で歌い分けるなど、それは色彩鮮やかに組み立てていました。これはソリスト級のメンバーだからこその技。

最後にオーケストラ。ビブラートを極端に減らした弦楽器は躍動感いっぱい。
ただ私の方からは、一番離れた奥にいたホルンだけは勘弁、って状態でした。長岡京は弦楽アンサンブルだからトラだったのでしょう。仕方ないけど 残念でした。

鴎外の美しい日本語訳のこの台本、もっともっと舞台に乗せて欲しいと思いました。

あっ衣装のこと書くの忘れいました。
天使アモオルが振り袖でした、とだけ書いて、あとはご想像にお任せしたいと思います。

日本の良さと西洋の文化が融合した輝きが素敵すぎました。