クリスチャン・ベザイデンホウト フォルテピアノ演奏会:厚木市文化会館 小ホール | 北十字の旅と音楽会記録が中心の日記

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~本当のモーツァルト~

昨夜は外食。リーズナブルな天丼チェーン店で、松茸入りの天丼。小さいながら『松』の香りがしっかり。食卓に秋到来、財布の中は冬到来。

今日は、仕事上がりに神奈川県の中央に位置する 厚木へ。


クリスチャン・ベザイデンホウト、フォルテピアノ演奏会

19時~
厚木市文化会館 小ホール


厚木市文化会館は、学生時代に神奈川フィルの第九の(合唱の)応援で行って以来、ほぼ30年振り。その時の指揮者を誰だかも忘れている。合唱指揮者の車で送ってもらった記憶がかすかに… そして帰りは 本厚木駅まで やたら歩いたのを思い出しつつ…

彼こそ今、売り出し中のフォルテピアノ奏者。決して過激にならない、正統派の音楽を聴かせてくれる。
ベザイデンホウトさんは、数年前、オーケストラ リベラ クラシカのソリストで聴いて以来。

プログラムは地方の演奏会らしい、スタンダードなW.A.Mozartプロ。
使用楽器はワルターのコピーを使用しました。

最初は
🎵W.A.Mozart:ソナタ第4番 変ホ長調 K.282
第1楽章のAdagioの美しいこと。今日の演奏では 反復後に過度な装飾を避けているかわり モデラートペダルを積極的に使っていました。
第2楽章のメヌエットもゆったり優雅。
そして明るい第3楽章のAllegro。
素晴らしい演奏に魅了されました。

続いて
🎵W.A.Mozart:Adagio ヘ長調 K.追加206a
1990年に見つかった曲。途中に聴かれる不協和音が印象的。プログラムによると、C.P.Emanuel Bachの作品かもしれないとの説も。
ゆらゆらとした美しい水面を漂う光の様。フォルテピアノのキラキラと輝く音に魅了されました。長めの曲でしたが あっという間に感じられました。
私的にはW.A.Mozartって感じの曲でした。

🎵W.A.Mozart:キラキラ星変奏曲 ハ長調 K.265
「反復をしても同じ演奏はしない」これが古典派音楽の基本と私は考えている。ソナタ形式の曲や変奏曲を聴けば、その演奏者の姿勢は明らかになる。ただ近頃は あまりに過激に変奏させ、その場の盛り上がりだけに終わるような演奏も少なくない。
今日は それは絶妙の極みでした。1曲目と同じように、繊細なペダル操作を施しながら、小さな装飾やアルペジオを変化させ、美しい音楽を織り上げていきました。特にゆっくりとした変奏での微妙なニュアンスには、ため息が出るほど。フレーズや変奏曲の間も、速い変奏曲間は一気に続けるなど、聴く耳にとてもフィットした気持ち良い音楽になりました。

休憩を挟んで
🎵W.A.Mozart:ロンド イ短調 K.511
ほの暗いこの曲、後半の長調になる『C』の部分での美しい響きが絶品でした。

そしてメインが
🎵W.A.Mozart:ソナタ第11番 イ長調 K.331『トルコ行進曲つき』
第1楽章の変奏曲は キラキラ星を遥かに超える素晴らしさ。特に私がW.A.Mozartで一番美しいと思っている第5変奏は、モデラートペダルとダンパーペタルの絶妙な操作も相俟って、雲間から天使が降りてくるかのごとく。それは幸せな瞬間でした。
続く温かみのあるメヌエットの演奏に続いて、Trioの柔らかい響きは素敵のひとこと。
そして有名な『トルコ行進曲』。この頃は過激系が多い古楽界ですが、彼は安心して聴けるグループ。でもちょっぴりスパイスを加えた演奏になりました。一番の大きな違いは 後半 『B』の主題が出てくるところでの後半部分、右手をオクターブ下げた点。その効果は 次の『A』の主題が出た時の輝きがより鮮明になりました。

アンコールは
🎵W.A.Mozart:ソナタ 変ロ長調~第2楽章
絶品!
ゆっくりな曲を弾かせたら、間違いなく世界一。

演奏会後はサイン会がありました。
そういえば ベザイデンホウトさんのCDを持っていないことに気づいて1枚購入。サインに写真まで撮らせていただいちゃいました。


紡ぎ出す音楽の通り、素敵な紳士でした。

ただ今日は30分前に入場して、ちょっぴり怒りモード。
入場時に手渡されたものは、文化会館だよりに挟まれた 今後のチラシとアンケートだけ。今日のプログラム、曲目すら配られない。それなら最低限チラシを入れるべきではないでしょうか!
私は500円の公式プログラムを買ったから問題ないけれど、ビギナー、特に学生さんにはよろしくない対応ですね。
そして 400人弱入るホールに聴衆が200人程度。
東京の2/3の価格設定なのに これはないでしょう。
そういう私も この公演を知ったのが 先週末、この公演に楽器を提供している楽器屋さんのブログ『チェンバロ漫遊日記』を読んでですから…
東京公演を諦めていただけに、今日、6列目中央やや左手という願ってもない席が取れたのは、嬉し過ぎる結果でしたが…

運営の下手な公共ホール丸出しは、残念でした。
まぁ 音楽会終了と同時に 拡声器で怒鳴り散らすホールよりはマシかもしれませんけど…

ベザイデンホウトさん、おすすめのフォルテピアノ奏者です。
帰宅したらCD聴かなきゃ!