新日本フィルハーモニー交響楽団♯583 トパーズ<トリフォニー・シリーズ>2日目 | 北十字の旅と音楽会記録が中心の日記

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節分の今日がちょっぴり暖かめに感じたのは、この2週間の寒さからか?
都内でちょっぴり時間が取れたので、中古の楽譜を探すも、それはなく、某音楽評論家せんせーのエッセイの単行本が叩き売り状態であったのを見つけて、3冊(300円)で購入。寄り道正解!
そのあとは、錦糸町へ。


新日本フィルハーモニー交響楽団♯583 トパーズ<トリフォニー・シリーズ>

14時~
すみだトリフォニーホール


指揮:マルクス・シュテンツ
コンサートマスターは久し振りの豊嶋さん。

今日の座席は前から8列目のほぼ中央。後半の曲が大編成のため、オケは最初から舞台の前方 ギリギリまで出ているので、オケは近めに感じられました。前半はあと2列前が理想、後半はあと3列後ろが理想だったので、トータルではベスト。

前半のハイドンは、ヴァイオリンの両翼配置の後ろにチェロとコントラバスも両翼配置で、ヴィオラを中央に置いた、私の席で とってもバランス良く音が聴こえる独特な配置。そのため第1ヴァイオリン12、第2ヴァイオリン10でハイドンを聴いても、小編成に拘る私でも、まったく煩さを感じさせませんでした。

前半1曲目は
🎵ハイドン:交響曲第22番 変ホ長調 「哲学者」Hob.I:22
フレミッシュタイプのチェンバロが加わりました。チェンバロは 森岡 奈留子さん。 
アダージョの第1楽章。舞台下手端手前にホルン2人が立って、上手端手前にイングリッシュホルン2人が立って、の演奏。この楽章、ホルンとイングリッシュホルンが2小節ごとに交互に吹くため、このように配置されると エコーの効果が際立ちました。ホルンとイングリッシュホルンが一緒に同じ旋律を演奏するのが最後の4小節だけなので、今回、ソナタ形式の前半だけを繰り返して、後半を省略するスタイルだったので、このエコー配置は 最後に大団円という風情となり、効果的かつ説得力がありました。
弦楽合奏は、ビブラートを完全に排した真っ直ぐな音が聴けました。第1楽章の後半、第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンが交互に長い音を弾く場面(50~53小節)での響きは それは絶品の渋い輝きを聴かせてくれました。
シュテンツさんはのスタイルは、アダージョをかなり速め。モデラート風。最初、提示部の1回目は弦全体がテンポが合わずに散漫な感じもしましたが、反復後は落ち着いて、まとまった音楽が聴けました。
プレストの第2楽章。ホルンとイングリッシュホルンは舞台中央の雛壇の通常の位置に座っての演奏。この春風が吹くような明るい楽章は大きなオケにもかかわらず 爽やかに走り抜けけました。ここでやっとシュテンツさんのハイドンに対するスタイルが見えてきました。ソナタ形式で前後半とも反復実施。しかし シュテンツさんは強弱を中心に(反復後に弱める傾向の)かなりの手を加えた興味深い演奏が聴けました。
メヌエットの第3楽章も 同様。冒頭のfの8小節は反復後はpにすることで、耳には反復しているとは感じられないなど、fの箇所も躊躇することなくpにしたりという、とても新鮮な音楽に仕上げることができていました。ただ、イングリッシュホルンとホルンのソリのあるトリオでは、ダイナミックな変化はつけたものの、装飾的な変化が無かったのが残念でした。ただ、メヌエットとトリオの間を一気に繋ぐスタイルはこの作品では私好みでニコニコしちゃいました。
プレストの終楽章も同様なスタイルで後半の反復も実施。軽やかで 草原の上を流れる風のような音に癒されました。
この曲では イングリッシュホルンの地味な暖色系の音色も良かったですが、安定感抜群のホルンが音楽を引き締めました。また、メヌエットのトリオ以外、上下の鍵盤を使った明るい音色のチェンバロは今日一番の敢闘賞!自在な装飾を加味しながらの通奏低音を超えた鮮やかな色彩付加は、素敵のひとこと。
また、大きめの編成がまったく違和感なかったのも 特筆すべきこと。チェロの分割配置にもよりますが、弦を強奏させずに ひとつひとつの弦の音で広いホールに音を行き渡らせる、水彩画の色づけのようなスタイルが素敵でした。
ブラボーのひとこと。ハイドンではちょっぴり苦手だったこの作品、めちゃ楽しく、ワクワクの連続で聴けました。今まで聴いた ナンバーワンの『哲学者』になりました。

続いて イングリッシュホルン奏者が下がって、オーボエ奏者が登場、ホルンの2名も入れ替えになって
🎵ハイドン:交響曲第94番 ト長調 「驚愕」 Hob.I:94
チェンバロが外され(残念!)、バロックタイプのティンパニを使っての演奏。配置は『哲学者』と同じ。
序奏もアダージョではなくアンダンテを超えるような速さ(フレージング)。でも 聴いていて心地好いのは、音が爽やかだから。
ヴィヴァーチェの主部は予想通り。ダイナミックな大きな変化をかけながらの演奏は、新しい発見が散りばめられていました。
有名なアンダンテの変奏曲の第2楽章。ここではちょっとした小芝居が挿入されました。舞台上手後方にいたティンパニ奏者が『第2楽章が始まるや寝た』という設定。それに気づいた舞台下手のコントラバス奏者が 木管奏者の前を横切って『あのffのティンパニを叩くことでティンパニ奏者を起こす』というストーリー。古楽畑のミンコフスキーが ビックリの箇所で音を出さない『ビックリ』をやってから、いろいろな趣向を凝らす演奏が出てきましたね。一時代前の真面目くさった演奏から、よりハイドンらしい面が再現されるようになってきたのは嬉しい限り。小芝居のレベルはさておき、それを積極的に考えて楽しませることを評価しないといけません。
さて、そんなビックリからスタートの第2楽章ですが、私が最も『ビックリ』させられたのは そこではなく、第1変奏。ここは頭の第1音がf(実質ff)のビックリ第2弾なんですが、実はここ、変奏曲なので8小節で反復になるのです。シュテンツさんはなんと、この反復あとのビックリfを『p』にしちゃいました。そう、シュテンツさんのスタイルは『哲学者』の時から、反復後は音量を抑える、でしたから、その流れでいけば 予想はできるのですが、ここでやるとやっぱり『ビックリ』になりました。
メヌエットの第3楽章では、トリオが愉しめました。ここは第1ヴァイオリンにファゴットのソロがユニゾンで合わせるのですが、今まで聴いた演奏では なかなかファゴットの音色を聴かせてくれない。ファゴットはスパイス的に使われてしまう。ところが今日のシュテンツさん、前半の8小節はヴァイオリンにファゴットが色を添える程度でしたが、反復後はなんとヴァイオリンを豊嶋さんのソロにして、ファゴットのソロ(今日は河村さん)をはっきり。そして後半の同じフレーズのところでは、ここでは反復してもヴァイオリンをソロにしませんでしたが、ファゴットを優位にしていました。ファゴットソロのバランスでの響きはとっても可愛かったです。ここでは、その表情の変化を印象づけるように、メヌエットからトリオへはインテンポで一気に入ったものの、トリオからメヌエットへは間を入れての構成が 納得いくものとなりました。
通作形式のフィナーレのアレグロは、もちろんフレーズの繰り返しにもしっかりとした表情の変化を伴わせましたが、ここではそれまでは、快速で一気に流れる音楽作りだったスタイルが、特に再現部で一変、溜めと間を効果的に入れた音楽にハッとさせられました。

前半、ハイドン2曲、それも交響曲を並べるなんて つまらないプログラムと思いきや、シュテンツさんの自信たっぷりの演奏が楽しめました。

後半は
🎵ヘンツェ:交響曲第7番
前半のハイドンの変則的なオケの配置から、通常のヴィオラが上手手前の配置に転換されました。
40分ほどの4楽章、急~緩~スケルツォ~フィナーレという 古典的な交響曲からの構成を守って作られた作品。
冒頭、チェロとファゴットとの緻密な音楽が導火線のように始まると、あとはその緻密な中に 組み込まれるように ぎゅうぎゅう詰めの隙間の無い音楽に満たされていきました。打楽器も雛壇最後列にずらりと並べられているのですが、騒がしさは皆無。重々しい雰囲気の音楽が全体を通して広げられた感じは、抑圧や弾圧の国家を想像させるものでした。
シュテンツさんの棒に しっかりと反応して 音は出てきてはいるようでしたが、それ以上の感想はまったく生まれず。
私的には、スコアを見ながら聴くのであれば別ですが、演奏会やCDでは もういいや…

聴衆の入りを心配して向かった今回の演奏会。1階席が7割方埋まっていたのは 意外。定期会員が多かったのでしょうか。先にも書きましたが、ハイドンの交響曲2曲はプログラム的には冴えないし、ハイドンを2曲なら 華のある協奏曲(を若いソリストで)にした方が良かったのでは… とも。しかし ハイドンを聴き込んだ私にも、十分に説得力のある濃いハイドンは、そのプログラミングに応える見事な演奏でした。新日本フィルでハイドンの交響曲を聴きたい指揮者がひとり誕生しました。

新日本フィル、先週はハイドンの『軍隊』。今回は『哲学者』と『驚愕』。ちなみに再来週はまたまたハイドンの『ロンドン』と、ハイドンシリーズなみにハイドンの交響曲が連続しています。ハイドン好きの私には、これ以上ない嬉しい演奏会の連続ですが、これって聴衆の入りの方を心配しちゃいます。そして、帽子に小芝居と続くと、やはり次も期待しちゃいますが、ロンドン交響曲は難しそう。 鈴木雅明さん、秀美さんに悪知恵を授けてもらって何かして! 新日本フィルの聴衆、期待しちゃっていますから… 

最後に…
私の聴きたい『ビックリ交響曲』は、フィルハルモニア版のスコアの付録にもある、ハイドンが消した『ビックリのない』最初の普通の変奏曲の第2楽章こそ、聴衆はビックリしちゃいますから、それをやって欲しいです。アンコールでビックリ版を演奏すれば、まるくおさまるでしょうから…