大林宣彦監督映画『花筐』 と 鎌倉芸術館ゾリステンVol.45 新春コンサート | 北十字の旅と音楽会記録が中心の日記

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今日は朝イチで川崎へ。
まずは大林宣彦映画『花筐』を鑑賞。


大林映画の古里映画のひとつとして、佐賀県唐津を舞台に、壇一雄原作の『花筐』で織られた作品。
戦争前夜の日本の若者の生き方を描いた、とても暗いもの。フィルムの処理も、大林映画らしい、カラーフィルター多用とアナログ的な仕上がりの、一昔前の映画を観ているかの様。3時間近い大作にもかかわらず、私にはあっという間に感じられました。
全編にわたってBGMが入っていたのが特徴的。なかでもバッハの無伴奏チェロソナタと、時代を象徴する 子どもが歌う『愛国行進曲』が印象に残りました。
大林映画が好きな人ならすすめられますが、一般的な人にはかなりハードルが高そう。特に若者には「何が言いたいの? 同じような繰り返しがしつこい!」と言われそう。
戦争をテーマにしたのは『この空の花』と似た系列ではあるものの、その暗さや陰鬱な画面構成、それに満たされない青春のエネルギーの不完全燃焼さなどは『はるか、ノスタルジィ』や『廃市』からのモティーフすら感じさせるものでした。



その後、ミューザ川崎へ行って、予約をしたチケットを引き取って、大船へ移動。

鎌倉芸術館ゾリステンVol.45 新春コンサート

15時~
鎌倉芸術館 大ホール


ヴァイオリン:磯絵里子、漆原朝子、漆原啓子、川田知子、小林美樹、徳永二男、藤原浜雄、三浦章宏
ヴィオラ:川崎和憲、川本嘉子
チェロ:古川展生、向山佳絵子
コントラバス:吉田秀

日本のトップクラスの奏者たちのアンサンブル。今年は芸術館が改装オープンということで、第1回の公演と同一のプログラムとのこと。名曲を揃えての、統一性はちょっぴり感じられないけれども、贅沢な選曲。

1年間の休館のあとのリニューアルは座席が一新。木目調の落ち着いたデザインが好印象。竹林の中庭もそのまま。


ちょっぴりチケット取るのが遅かったので、下手ブロックの3列目の内側(ここは私的にS席ギリギリの位置)で聴きました。

最初の曲は
🎵モーツァルト:セレナード第13番 ト長調 「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」 K.525
きらびやかな華のある演奏。
特に何かを仕掛けるわけでもない、安心して聴ける普通の演奏。70年代ならば きれいな名演って言われたかも。
旋律を朗々と歌わせるスタイルでした。音楽にどっぷり身を任せて聴くには これでいいかも。

続いて
🎵J.S.バッハ:2つのヴァイオリンのための協奏曲 ニ短調 BWV.1043(ソロ:徳永二男、藤原浜雄)
ファーストの徳永さんが、二重協奏曲なのに、主役。最初、藤原さんと第2ヴァイオリンから入るも、そのあと徳永さんに引っ張られて第1ヴァイオリンが入ると、藤原さん組とテンポが微妙にずれ始めて、あわや… すぐに第1ヴァイオリンが主導権をにぎるところに入ったので、ホッとしましたが、なにやら合わせるのに苦労している感じがしました。
美しい第2楽章も、徳永さんメインのスタイル。
もちろん終楽章も。
ビブラートも艶やかな、ちょっぴり巨匠風?のバッハは今ではなかなか聴けないかも。

休憩のあとは
🎵チャイコフスキー:弦楽セレナード ハ長調 作品
この演奏は熱かった。
第1楽章の序奏から5つのパートがガッチリと組み合っての芳醇な響きと 弾力的なリズムが良かったです。
第1楽章の主部はある意味、ジェットコースター的な安定したスリリングさが爽快でした。
優雅なワルツの第2楽章も方向性みえる 安定感あふれる音楽。
第3楽章は弱音器の繊細な音色を生かした、でも厚さのある音での、ロマンティックな音楽が最高。今日の白眉はここでしょう。
休まずに入った第4楽章。序奏のところから主部への移行(弱音器を外していくところ)も見事に決まり、アレグロの熱さが伝わってきます。ここでは内声のヴィオラやチェロもはっきりと主張しているのが私好み。コーダの序奏の回想のところもくっきりとした隈取りの鮮やかな音楽で締めました。

アンコールは
🎵チャイコフスキー:アンダンテ・カンタービレ(弦楽四重奏曲第1番~第2楽章)
弦楽合奏で聴く この曲もいいですね。中間部の主題提示のところだけ徳永さんのソロだったのも 音色の変化がくっきりとなって見事。

前半と後半の仕上がりの違いがありましたが、豪華なソリスト級の方々のお顔代と思えば、まぁ 良しとしましょう。