台風が来るとか来ないとかの怪しい空模様。今日は久し振りに傘を持ってのお出掛けになりました。
新日本フィルハーモニー交響楽団 ♯4 特別演奏会:サファイア<横浜みなとみらいシリーズ>
14時~
横浜みなとみらいホール
指揮:上岡敏之
ピアノ:デジュー・ラーンキ<Dezsö Ranki>
HPの紹介文は
『上岡敏之音楽監督が立ち上げた横浜みなとみらいシリーズ。その開幕を飾る本公演では、「ハンガリー三羽烏」と呼ばれるラーンキが登場。上岡とラーンキは勝手知ったる、無敵の仲。「スコアに対する謙虚な態度やアプローチの仕方が魅力的」と上岡が絶大の信頼を寄せるピアニストが奏でる真摯なベートーヴェンを、まっすぐに堪能してください。』
そう!「ハンガリーの三羽烏」と言われていましたね。私は70年代後半に買った バルトークの協奏曲のLPがいまだにその曲の一番のお気に入り。コチシュやシフが 今世紀に入っても 多くのCD録音を出しているのに対して、ラーンキさんのCDがまったくといってよいほど出てこないのが残念。でも、上岡さんとの組み合わせで実演で聴けるのは 嬉しい限りです。
前半は
🎵ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番 ト長調 op.58
冒頭のピアノの穏やかさはまるで秋の風景。葉っぱの落ちた寂しい木々の森には 明るい太陽の光があふれるような、相反する陰と陽がバランスよく配置されている感じ。その風景をしっかりとオケが包みこむ様。それは一見地味な伴奏にも聴こえました。
それに続くピアノによる狂言のように『異質な』第2楽章。ここではピアノの語りに対して 太郎冠者みたいに大きく舞台をまわしていくオケのダイナミックな語りが生き生きと冴え渡りました。ラーンキさんの言葉を強調するように差し込まれる上岡さんの言葉の説得力は強靭でした。この作品の頂点は、地味な第2楽章と受け取りました。
続く第3楽章は 第2楽章との対比させたかのように、ピアノが朴吶に、オケも控えめに、また秋の風景。
ラーンキさんの真摯に音楽に向き合う音楽に、ベートーヴェンの協奏曲の中で 第4番がピッタリという印象。
2階のサイドの席で見ていたお友だちは、終始 上岡さんが 的確にオケに仔細な指示を与えながらの指揮であったと言っていました。私の席からは地味に聴こえた第1、第3楽章とも、オケの表情は多彩であった由。私はピアノを生かす伴奏にしっかりハマってしまった様でした。
後半のメインは
🎵マーラー:交響曲第5番 嬰ハ短調
この作品はマーラーブームと言われた90年頃に 10日間くらいの間に3回連続で実演に接して、突然『巨人』と並んで身近に感じる作品となりました。ところが CDは唯一のマーラー交響曲全集の中にはあるものの、全集は持っていると安心して聴かないまま、実演もその後は記憶にないまま、今日に至りました。ただFMでは何度か耳にしているので「お久しぶり」と言えそう。
そんな感想が書けないような私の耳にも 今日の上岡さんの演奏は、とっても生き生きとした、まるで今 ここで作品が生まれたばかりのような新鮮な演奏として聴くことができました。
有名な第4楽章は、3月の上岡さんの演奏会のアンコールで演奏されたので、大意はつかんで向かいましたが、他の楽章は興味津々。
第1楽章からとても明晰な音楽づくり。これが一般的なマーラー像からどれだけ外れているかなどはわかりませんが、私にはスコアを目の前に提示されているかのような、説得力あふれる演奏として届きました。
ただその方向は、彼岸の風景。まるで青森県『恐山』のそれ。
第1楽章は、どの三途の川の渡し船に乗るのか…というドキドキ感。
第2楽章は、地獄に到着し、魑魅魍魎の妖怪に囲まれて萎縮した自分。
第3楽章は、地獄の中で妖怪と共に苦しみつつも前向きに過ごす時間。
第4楽章は、地獄への旅に疲れて寝ているつかの間の休息。
第5楽章は、地獄への旅の夢から覚めて考える これからの生き方!
そんなストーリーが成り立つ音楽になっていました。
弦楽器の妖怪出現を感じる強烈なアクセントが、聴いているうちにクセになりそうな心地好い刺激(これは視覚が伴うからこそ。今日のCDでの同じ感覚はあり得ない)。
第5楽章開始のお目覚めを思わせる、ホルンとそれに続く弦楽器。永遠に続くのか?と思わせる長く真っ直ぐな音と、死の世界から戻ってきた最初の呼吸までの空気と一体となっているかの様な弦楽器のppはどんな大きな音にもまさる、刺激的な音として届きました。
この第5楽章のホルンについては、終演後、上岡さんの楽屋前でのお話の時に、お友だちが訊いたところ、
「特別なことしてないんだけどなぁ~」
と、驚かれた様子。
終演後はお友だちと楽屋へ。
上岡さんとちょっとの時間、お話もできて良かったです。
それと今日はCD制作会社のお友だちも会場で販売だけでなく、舞台の上の仕事まで… 裏方の方のお話も聞けたりと、充実。今日の録音が盤になるのに期待しちゃいます!
その後は お友だちと4人で中華街へ。3連休初日の心配はそれほどではなく、ゆっくり3時間ほど飲んで食べて、お話を存分にして、楽しい時間が過ごせました。
福岡からのお友だちも来られたのですが、今日 羽田からお帰りになるとのことで、楽屋訪問と中華街にご一緒できなくて残念。次回の上岡さんの演奏会では是非反省会まで…
反省会では
「特別なことしてないんだけどなぁ~」
というお答えに『やっぱり上岡さんは凄い』ってことでまとまりました。