関西二期会 第87回オペラ公演歌劇『イリス』:あましんアルカイックホール | 北十字の旅と音楽会記録が中心の日記

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今日前半の、国立民族学博物館は思った以上に充実していました。
万博記念公園前から バス~JR~阪神と乗り継いで尼崎へ。

関西二期会 第87回オペラ公演
歌劇『イリス(あやめ)』

16時~
あましんアルカイックホール(尼崎市総合文化センター)

指揮:ダニエーレ・アジマン
合唱指揮:岩城拓也
演出:井原広樹 
イリス:泉貴子(S) 
チェーコ:片桐直樹(Bs)
大阪:小餅谷哲男(T)
京都:鳥山浩詩(Br)
芸者・ディーア:井上美和(S)
行商人:山中幸治(T)
くず拾い:水口健次(T)
ダンス振り付け・ダンサー:生駒里奈
ダンサー:唐木智子、山城敦子
大阪交響楽団
関西二期会合唱団


座席は15列目の一番右ブロックの通路側内側という、上から2ランク目では絶好の席。視界良好、字幕も見やすい。イマイチなのは歌手を中に斜めに観ることくらい。

古典派専門の私がこの時代(1898初演)のオペラに行くのは珍しい。それは舞台が日本ということと、マスカーニといえば『カヴァレリア』の最高の名旋律に、二匹目のナントカを探すという姿勢で。実はあとで 都内でオッフェンバックのオペラの公演があると気づいたのですが、予定通りこちらに行くことに。関西二期会は6年振り。前回、納得いかないフィガロで懲りたから… 今回はお試しの作品だからということもあり、決めました。

ストーリーは己のことしか考えられない3人の男(チェーコ(盲目の父)、大阪、京都に翻弄され、吉原に送られたイリスが天に召されて、その強欲から解放されるという、死をもって幸せになれる というもの。悲劇なのに 幸せになれると設定したハッピーエンド的な発想やいかに…

舞台は中央に台を据えて、その周りに屏風などを配置しながら 劇を進めました。
照明が画一的で 変化に乏しかったのは近頃の舞台では珍しいかも。もう少し場面毎に繊細に調節しては…と思いましたが、それは以下に述べるスライド利用に重点を置いたためかもしれません。
背景にスライドを用いて、浮世絵(加工したもの)でその情景や心情を投影するのは効果的。ですが、第2幕などではイリスの細かな心情変化に合わせてコロコロと変わるのはちょっぴり忙しなかった感もありました。

各幕毎では
合唱の入った前奏曲はとても繊細。コントラバスのソロが哀しみを感じさせるのですが、大阪交響楽団、もう少し頑張って欲しかったです。ここでハラハラはいけません。
指揮のアジマンさんは 第3幕の前奏曲も同様に 思い切りppを要求していく。繊細さを生かす表現に長けていました。
前奏曲と第3幕の終曲の大人数を揃えた合唱はテノールのまとまりがもう一歩(人数バランスも悪い)だったのを除けば、なかなか。
富士山の麓の村の第1幕では、洗濯娘を演じた合唱団の歌唱と演技が安定していました。そしてイリスの美しいアリアと大阪の歌も印象に残りました。それと背景のスライドが北斎の赤富士で、これはなかなか強烈に感じました。

吉原の芸者屋の第2幕では、ここでもイリスの長いアリア(モノローグ)が前半にあり、それで満腹。ただ冒頭の芸者によるヴォカリーズがあまりに不安定で勘弁してくれ状態だったのが残念。

死者の地と題された第3幕はくず拾いの男声合唱団から開始。安定した合唱と不自然さのない演技は安心して観れました。続くイリスのアリアも美しく歌いあげました。そしてその中に入ってくる男性3人の声と それを後ろでダンサーが踊る場面。死者の国という感じが伝わる考えられた演出が観れました。まあ、グルックの『オルフェオ』と同様ですが…

歌手は初めて聴くような方ばかり。
イリスの泉さんは豊かな声はなかなか。ただ 健康的な姿は伯爵夫人の様で、イリスには… 歌は良かったですが…

チェーコの片桐さんは張りのある声と 大きな演技が 今日 最も舞台を引き締めたのではないでしょうか。私的には気になる点がまったく無かった役と歌でした。

小餅谷さんの大阪は特に第2幕前半のイリスを口説く場面の一本調子とギリギリ感のある声は減点。しかし1幕のダンサーの後ろでの歌はなかなかでした。

京都の鳥山さんは悪くない割りに印象に薄かったです。鳥山さんのせいではないのですが、第2幕の衣装には文句を言いたい。和服の上に燕尾服ですよ! 和洋折衷でしょうか? もう 意味不明💢💢

それにしてもこのストーリーは個人を尊重するヨーロッパならでは!儒教思想の強い国や現代の日本では『親の介護をするなんて親のエゴ。死によってそれから解放されて良かったね…』という結末は歌劇だから許される?
その影響か、終演後の拍手の力の無さは 寂しい限り。ストーリー的に口当たりの悪さはありました。
決して悪い公演ではなかったのに!


尼崎の駅に行くと阪神タイガースのユニフォームを着た人が何人もいるなかに、ひとり横浜ベイスターズのユニフォームを着た人も!
今日は横浜、勝ったのだろうか?

今日は天王寺の旅館でゆっくりです。