ハイドン名曲聴きくらべ-3 | 北十字の旅と音楽会記録が中心の日記

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🎹F.J.Haydn:クラヴィーア協奏曲(第11番)ニ長調


ハイドンのピアノ協奏曲として昔から弾かれてきた作品。1780年代前半という円熟期の作 。自筆譜にはフォルテピアノまたはチェンバロのための協奏曲と明記。その為 どちらの楽器でも弾かれます。第1、第2楽章のカデンツァにハイドン自筆の作品が残っています。第3楽章はハンガリー風ロンドと題された民俗色濃い曲。


M ブレトニョフ/ドイツ室内管
ピアノ。 通奏低音演奏せず。 ソロ旋律改変有。 落ち着いた第1楽章、ロマンチックな第2楽章、カデンツァは第1楽章後半がハイドン版、第3楽章はインテンポで安定している。 ペダル効果的。 落ち着いた感じ。


L スミルノワー
①ガイゼ
ピアノ。 通奏低音演奏せず。 丁寧な演奏 構成感重視。 厚いオケの音処理は短め。 第2楽章は落ち着いてピアノはメリハリもった表現。 第2楽章のカデンツァはハイドン版。 第3楽章の弦楽器が民俗楽器的音色を出すところはユニーク。

②シュミット-ゲルテンバッハ
ピアノ。 通奏低音演奏せず。 ピアノの音色が透明で美しい。 歯切れ良いオケ。 第2楽章は淡々と速め。 ロマン的でキラキラ輝く様。


C ローゼンベルガー/シュワルツ
ピアノ。 通奏低音演奏せず。 オケは大きめの編成。 旋律線テヌート気味。 ソロの左手右手は対等。 再現部で旋律に装飾。 優雅な第2楽章はカデンツァがきれい。


E モザレス/アマデウス室内管
ピアノ。 通奏低音演奏せず。 リズム重たい。 録音がピアノメインで管楽器が聞こえにくい。 リズムとアクセントに癖。 オケが稚拙。


M パルンボ/ウィーン室内管
ピアノ。 通奏低音演奏せず。 速い楽章は快速。 第2楽章はゆったり美しい。 速い楽章のペダ ル使用控え目。 表面的な感を否めない。


O ロベルティ/レーデル
ピアノ。 通奏低音演奏せず。 右手の単音の旋律に和音を加えて微妙な美しい彩りに。 左手が強め。 オケは美しい。 カデンツァはハイドン版。 オケとのバランス良い。 常に安定したテンポ。 手を加えているが美しく聴ける好演。


P アントルモン/ウィーン室内管
ピアノ。 通奏低音演奏せず。 ヴァイオリンがやや力みがち。 的確なフレージング。 端正な演奏。 余裕を持った表現。 カデンツァはハイドン版。 弱音が美しい。 模範となる好演。


C ヘーウォン/スタンコフスキー
ピアノ。 通奏低音演奏せず。 柔らかな音色。 落ち着いた第1楽章と第3楽章。 どっしりとしたオケの2楽章はピアノは繊細。 カデンツァが美しい。 小さな装飾各所にあり。 ピアノ演奏での古典派の在り方を示す演奏例。 地味な巧演。


I von アルペンハイム/ドラティ
ピアノ。 通奏低音演奏せず。快活。 リズムをしっかり刻む。 推進力あふれる。 オケとの呼吸は完璧。 左手と右手のバラ ンスが絶妙。 自作のカデンツァはインテンポで突っ走る(第1楽章)。曲にピッタリの見事な(両楽章)もの。 第3楽章のミノーレの響きの変化とテンポ設定はハンガリー民謡を感じる素晴らしい出来。 ピアノの音は硬質。 素晴らしい名演奏。 ヴァイオリンが上手配置で聞こえるはLP時代から。


H タヘッツィ/アーノンクール
古楽器。 フォルテピアノ。 通奏低音演奏。 激しく主張するオケ。 繰り返しフレーズで装飾積極的。 バロック風の強い造形表現。


A シュタイアー/フライブルクバロック管
古楽器。 フォルテピアノ。 通奏低音演奏。 バロック風。 激しい表現。 ソロとオケの呼吸抜群。 ソロの装飾は再現部中心。 オケの音色は鮮やかでソロ伴奏部のオケは刈り込む。 第3楽章最後のフェルマータ(297小節)にカデンツァ挿入。 才気溢れる好演。


J デームス/コレギウムアウレウム
模索期の古楽器。 フォルテピアノ。 通奏低音演奏せず。 インテンポの古典的アプローチ。 右手主体。 リズムが生き生き。 装飾少なくほぼ楽譜通り。 カデンツァはハイドン版。 オケは充実した編成。 古典的造形美を見事に表現。 模範となるべき名演奏。


S イノセンティ/マルティーニ
チェンバロ。 通奏低音第2楽章除き演奏。 インテンポで安定した古典的演奏。 装飾少な目。 硬い音づくり。 落ち着いたテンポ。


C サルトレッティ/ジャンルイ小室内管
チェンバロ。 通奏低音演奏せず。 オケマイク近すぎでバランス悪い。 弦楽合奏は各パー ト1名に聞こえる。 編集も悪く音切れあり。 ソロは丁寧。 カデンツァはハイドン版を短縮。 録音が良ければ室内楽的な演奏に仕上がっていたはず。


G マルコム/マリナー
チェンバロ。 通奏低音演奏せず。 モダンオケの音色が美しい輝き。 ソロの才気煥発(第3楽章のストップの扱いなどは絶妙)。 即興の彩り見事。 カデンツァは第1楽章はハイドン作をベース。 様式云々言わなければ絶賛の名演奏(68年録音)。


Z ペルティシュ/リスト室内管
チェンバロ。 通奏低音演奏。 展開部以後で装飾を旋律線に素敵に織り込む。 第3楽章の3ヶ所の小さなカデンツァなどチェンバロの意欲的表現が見事。 折り目正しい古典的造形美を保つ。安定したバランス。 好演。


T コープマン
①ムジカアンティクヮアムステルダム(フィリップスの鍵盤協奏曲全集録音盤)
古楽器。 チェンバロ。 通奏低音積極的演奏。 2段チェンバロ駆使した積極的表現。 オーケストラは小型。 室内楽的なバランス。 わかって聴くととても楽しめる。

②アムステルダムバロック管(エラート盤)
古楽器。 チェンバロ。 通奏低音演奏。 テンポも①に比べ速くなり軽快に。 カデンツァ短い。 陰影鮮やかなバロック的。 即興的要素は①より少ないが第3楽章の彩りは見事。 熱い演奏。


T ピノック/イングリッシュコンサート
古楽器。 チェンバロ。 通奏低音演奏。 柔らかい音色で統一。 心地よいテンポとリズム。 ほぼ楽譜通り。 オケとのバランスバッチリ。 古典の枠内で美しさを描いた第2楽章は絶妙。 2段チェンバロの効果的扱いが光る。 第3楽章のミノーレでの音色とテンポの変化が鮮やか。 最も癖を感じずにハイドンの美しさと明るさを感じられる名演奏。


今回 アルヘリッチの2種類にミケランジェリの名盤といわれる盤が無かったのが残念。ミケランジェリはLPでは持っているのですが…
またLP時代からの一番のお気に入りの ヴェイロン=ラクロワのチェンバロ版がいまだにCD化されていません。

なお チェンバロについてはモダンチェンバロの演奏もあったのですが チェンバロに統一しました。

きっとまだいくつか眠っているかもしれませんが これでお仕舞いにします。

クラシック音楽は楽譜をどう読むかで 演奏がまったく変わってきます。その聴き 比べがものすごく楽しいのです。その点が絵画や文学とは異なります。作曲家とは食事でいえば 材料を揃えただけなのですから。
つまり演奏家が料理人です。


~2017年のコメント~
この作品はどの鍵盤楽器を使うのか、で聴き方が選べます。ただこの曲は、オンガンではない!と結論が出ているため、他のハイドンの鍵盤協奏曲のように少なくとも4つの楽器の聴き比べまでができるには至っておりません。誰か オルガンで聴かせてくれないかなぁ。

私のこの曲でのベスト盤は、どちらも今では中庸な感じで、イチオシ感はありませんが、次の2つです。
マルコム/マリナー盤(Argo→Decca→ユニバーサル、日本ではキング)
デームス/コレギウム アウレウム盤(ハルモニアムンディ)
どちらも通奏低音の部分を弾いてないとか、即興的な装飾に欠けるなどがありますが、どちらもハイドンらしい明るさと生命力溢れる演奏は魅力いっぱいです。

次点はピアノ盤を選ぶと、これまたマイナーな
アルペンハイム/ドラティ盤(Vox)
颯爽たる演奏が気持ちいい。

通奏低音や装飾の華やかさを味わうなら
ペルティシュ/リスト室内管盤(Hungaroton)

以上、入手困難が多いと思います


一般的には、ここでは聴いていませんでしたが、ピアノのアルヘリッチの2種類、チェンバロならばピノックが安心してのおすすめ。
派手系なら、コープマンかシュタイヤーがいいかもです。