二期会『フィガロの結婚』:東京文化会館 | 北十字の旅と音楽会記録が中心の日記

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仙台駅の発車メロディーが『青葉城恋歌』になり、それが仙台フィルが演奏した…って気になっていました。今回、列車を見送る場面があり、ホームで耳にしたのですが、案の定、スピーカーから流れる音は オーケストラとも思えないようなキンキンとした音で、残念。在来線の方はどうなのだろう? と気になったので、そちらは次回。

昨夜はEテレで仙台フィルの復興コンサートの活動の様子のドキュメンタリー。復興コンサートが まだ現在進行形ってかたちのまとめ方が 良かったです。昨日も名取へ行く途中に 仮設住宅が車窓から見えたりと、まだまだ震災からの立て直しは不十分な現状。
そして、新幹線からは仙台駅に向けて福島駅を発車して5分ほど、進行方向右手、白石蔵王駅からだと 国見トンネルを抜けて東北本線桑折駅のとなりを過ぎてすぐの左手に、大きな黒いビニールの袋(牧草みたいにみえる!)を埋めているところが見えます。将来、あの土地はどうなるのだろうか? 福島県の内陸では これから長い闘いが始まろうとしていることにも気づかされます。

そんな忘れそうになってきた『復興』という言葉を考えさせられた、この週末でした。

そして今日は タナボタ世界遺産で盛り上がる上野公園に!

二期会『フィガロの結婚』



14時~
東京文化会館

指揮:サッシャ・ゲッツェル
演出:宮本亜門

装置:ニール・パテル
衣裳:前田文子
照明:大島祐夫
合唱指揮:大島義彰
演出助手:澤田康子
舞台監督:村田健輔
公演監督:大島幾雄

アルマヴィーヴァ伯爵:与那城 敬
伯爵夫人:増田のり子
ケルビーノ:青木エマ
フィガロ:萩原 潤
スザンナ:髙橋 維
バルトロ:長谷川 顯
マルチェリーナ:石井 藍
ドン・バジリオ:高田正人
ドン・クルツィオ:升島唯博
アントニオ:畠山 茂
バルバリーナ:全 詠玉
花娘1:辰巳真理恵

花娘2:加藤早紀

東京フィルハーモニー交響楽団


先行予約で取れたチケットは 18列目の右ブロック内側寄り。観るには絶好の位置。私的にはちょっぴり後ろかな…って感じ。

舞台はキューブ型の枠を組み合わせて部屋のスペースを作り、その外側を部屋の外部として利用したもの。第4幕ではキューブを分解、互い違いに組み替えることで、木の繁る庭園を見事に作り上げていました。
また キューブの部屋の中の照明の色を変えることで演出効果を上げる手法は、ちょっぴり昭和的でしたが、煩わしさがなくて良かったです。

衣装と小道具はオーソドックスなもの。もちろんこの作品では奇抜なものを期待していません。安心して観れました。

そんな枠の中での演技と歌唱(演奏!)。今回は音楽と演技の細かいところまでの完成度が印象に残りました。
それに対して台本の解釈については、亜門さんの才気は期待しすぎだったかも。人物像を大きく変えることもなく まとめていました。

そんな中、私は伯爵をちょっぴり暴君的に作っているのが気になりました。実際、あれほど乱暴な伯爵ならば、フィガロといえども あのような策を練るなど絶対に無理でしょ!って。
第1幕でのケルビーノのやんちゃぶりはさすが亜門さん!伯爵がスザンナを口説いている場面で(普通はおとなしく隠れているのに)椅子の裏から顔を出して『何してるの~』って見るあたりの面白さ。
第2幕のケルビーノのアリアで伯爵夫人がケルビーノの魅力に詩の紙を落としてしまうことで、次作の伏線の開始の瞬間を明示。
第3幕冒頭の伯爵とスザンナの場面は夫人が外で心配そうに居る場面をはっきり。続いて夫人のアリア~裁判の場面の順に並べ、スザンナの戻りが遅いのを心配する歌が生きました。
第4幕では スザンナの何が『嬉しい』のか考えさせられるアリアを、スザンナがスザンナの姿で歌いました。因みに昨日は 夫人がスザンナの着物でスザンナの歌に合わせて夫人が振りをつける演出。私はこちらがしっくりくるのですが… 歌ったあとに婚礼のベールを夫人にかけて取り替えが完成。すると『嬉しい』内容をどう 捉えるのかが微妙になるのが、聴衆ひとりひとりの判断に任せるのか、私が鈍感なのか、ちょっぴり消化不良で考えちゃうのが嫌なのです。

そんな演出につけられた音楽。それは才気煥発って感じの 目から鱗のような細かい表現まで整えられた演奏が聴けました。
まずは曲内でテンポを変える。例えば第2幕のケルビーノのアリアに伯爵の怒りの三重唱。大きくテンポを落として丁寧に演技をさせる?テンポを落としたことで演技がじっくりとできた? という効果がてきめん!
アリアで、再度主題が戻ったところでの装飾は、第1幕のギターのアリアやケルビーノのアリアに顕著。それ以外にも 積極的な歌唱が聴けました。

オケは序曲からフレーズの入りをはっきりとしながらもpからクレシェンドさせるような音作りをするなど、個性いっぱい。それがオペラ本体の方まで行き渡っていました。神奈川フィルの首席客演指揮者のゲッツェルさん。初めて聴きましたが、なかなかの力量をお持ちの様。今まで地元なのに聴いていなかったことを反省しなくては…

配役はどの方も 演技に関しては文句なし。亜門さんの演技指導の賜物と 各自の実力の相乗効果というべきでしょう。
その中で特に印象に残ったのは、好奇心旺盛なやんちゃさが輝いたケルビーノの青木さん。暴君すぎてちょっぴり引いちゃうくらいだった伯爵の与那城さん。この2名が特に良かったですが、他の方も、バルバリーナまで、甲乙つけ難い見事さでした。

2日連続の『フィガロ』はどちらも素敵な舞台でした。


今日はホールでお友だちと合流。終演後、アメ横そばの飲み屋さんで梅酒での反省会。
充実した1日になりました🎊