東京芸術劇場コンサートオペラ:ヴェルディ「ドン カルロス」 | 北十字の旅と音楽会記録が中心の日記

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気温はさほど上がってはいないものの、湿度が高いのと、先日までの涼しさに慣れた身には、歩いただけで暑い朝になりました。
まずは『横浜で』理髪店に行き、サッパリ✂

池袋へ

今日は私が足を向けるなんて『稀』としかいえない演目に行きました。
東京芸術劇場で
15時~
ヴェルディ:歌劇「ドン・カルロス」パリ初演版(フランス語全5幕[日本初演])演奏会形式

指揮:佐藤正浩
管弦楽:ザ・オペラ・バンド(在京プロオケメンバーで結成)

ドン・カルロス:佐野成宏
エリザベート:浜田理恵
フィリップ2世:カルロ・コロンバーラ
ロドリーグ:堀内康雄
エボリ公女:小山由美
宗教裁判長:妻屋秀和
修道士:ジョン・ハオ
ティボー:鷲尾麻衣
天の声:佐藤美枝子
レルマ伯爵:ジョルジュ・ゴーティエ

コーラス:武蔵野音楽大学(合唱指揮:横山修司)


という布陣。舞台上は通常のオケの配置!その前に譜面台が置かれて、そこで歌う。簡単な演技がつく場面もありましたが 基本的には音楽を『聴かせる』公演でした。男声の衣装も燕尾服でしたから。

今日のこの公演を選んだ理由は、価格が安かったこともありますが、好きな歌手が出るどころ。私みたいに曲に対して極端に強い嗜好がある場合、行く音楽会が似通ってしまい、発展性がなくなってしまいます。そこで、この10年くらいは お気に入りの演奏家を追いかけることで、レパートリーを広げようとする 前向きな取り組みを計画している次第。今日はそれに乗りました。
20~30歳代に二期会の定期会員みたいなのに入っていた私も、ヴェルディはほとんど観た記憶がない。
好きな作品も、ナブッコ、椿姫、トロヴァトーレの3作品。
バブル期に流行ったアイーダやリゴレットでさえ全曲を、実演どころか音盤でも観たり聴いたりしたことがないのですから!つまりドン カルロスなんて まったく知らない作品。まるで外国人観光客が歌舞伎に行ったような状態で14時に劇場に入りました
ホールに入ってプログラムを買ってストーリーの予習、と思うもプログラムの販売がない!そういえば入口でプログラムが渡された、と 見れば、この作品を初めて観る、もちろん予習せずに、人には どうにも不親切極まりない 歌手の紹介以外には、この『フランス語初演版』についての意義の記述がA5で4頁あるだけ。巻頭にあるあらすじは  たった6行
私は1回目の休憩時間に オペラ通のお友達に それぞれの役の関係がわからず、電話をして聞いたくらいですから!

今日の座席は1階下手ブロックの内側よりの4列目。ちょっぴり前過ぎて字幕が見にくい。

臨時編成のオケにはヴィオラのトップには先週の山形交響楽団トップの成田さんがいたり、第2ヴァイオリンには新日本フィルの吉村さん、リベラ クラシカの荒木さんなど… 実力派が締めてました。

なにしろ全く知らない作品を予習できずに耳にした状態ですから 詳しいことなど書けません

最初の第1幕、これは現行の版ではカットされている。オペラの元になったゲーテの戯曲には無い部分で、コルモンの「スペイン王 フィリップ2世」からの引用とのこと。だから、長くなりすぎたこのオペラを改訂する際に この幕がカットされたらしい。
舞台裏からの角笛で始まるこの幕の音楽の美しさは絶品でした。
ストーリー的に 人間関係の説明的になるこの幕ですが、私はストーリー理解にとても助かりました(フィガロにおけるセヴィリアの様)。

第2幕(現行版のここが第1幕)
ここでは第2場が圧巻でした
まず最初の美しい女声合唱がバックについた二重唱の清楚な美しさ。
その後につづく長大な二重唱のダイナミックさに圧倒。
さらに二重唱が2曲続き、この幕では 声の迫力と響きの妙に打ちのめされました。

ここで休憩をはさんで第3幕
この幕はそれまでと違って、緊迫したストーリーがリズミカルに流れました。
歌手の喉はみな 絶好調になり、演奏会形式にもかかわらず、よりドラマチックな面が浮き彫りに伝わってきました。
ここでは管楽器のバンダが上手舞台上に配置。天の声は下手舞台上に配置され、立体的な効果も見事でした。

ここで 再度休憩を取ったあと
第4幕
ここからの後半の場では素晴らしいアリアが連続しました。
第1場の冒頭のフィリップ2世の低音の魅力いっぱいの歌は圧巻!
最後のエボリ公女のアリアのドラマティックな迫力は 本公演の白眉かもしれません。
続く第2場では
フィリップ2世とドン カルロスの長大な二重唱が素晴らしかったのですが、この曲は現行版では長いという理由でカットされているとは 残念!

続く第5幕
最初のエリザベートのアリアも美しすぎる曲でビックリ。
この最終幕はその後、大きな音楽のアンサンブルなどはなく、ストーリーを端的にまとめ上げるかたち。演奏会形式なので この様な場面で、すでに4時間近く観ているので、眠くなってもいいはずなのに 演劇を観ているかの如く 最後まで集中して楽しめました。

今日は全ての歌手が それはみな素晴らしすぎる歌唱でした。オケが歌手に失礼なくらいの大音響で鳴らしても、それに劣らない 声の美しさとダイナミックさを聴くことができました。
ただ、fやffの音楽のところで ちょっぴり単調に聴こえてしまうのは、イタリアオペラをあまり聴かない私の無知のためかな?

それにしても政治的要素が強い作品だったのには予想外。なかなか演出には工夫が凝らせそうな感じでした。イタリアオペラはストーリーが恋愛中心で テノールが愛を叫ぶだけだと思っていた私には 衝撃でした。

今日は声に満ちあふれたオペラの醍醐味を存分に味わうことができました。これが7000円で、最高ランクで、聴けるなんてお得すぎます! もちろん満席で カーテンコールでも私がブラボーと言わなくても十分な盛り上がりでした。

観たい作品が またひとつ 増えちゃいました