暑さ、真っ盛り。
外を歩くと、ムワッとして 脳ミソが沸騰しちゃいそうそこで 今日 避暑で出かけた先は、池袋
東京芸術劇場コンサートホール
14時~
東京都交響楽団
「作曲家の肖像」シリーズVol.98
《ビゼー》
指揮:マルク・ミンコフスキ
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240614/08/repun-berg/23/23/j/o0810108015451261082.jpg?caw=800)
指揮者のミンコフスキーさんは5年くらい前に 古楽団体を率いてのハイドンの演奏会、私は行かなかったけど、で 話題をつくり、ハイドンのCDでも やたら高評価で、話題性を嫌う私は未だ聴いてなくて、私的には 名前しか知らない指揮者。
古楽系で実力派の指揮者が都響を振り、ビゼーをやるとなれば、天の邪鬼の私も行くっきゃない!となる。それも音楽会歴40年の私でさえ 初めての実演になる、組曲『ローマ』をやるのだから。
組曲『ローマ』はそれこそ40年ほど前に ビゼーの交響曲の2枚目のLPを購入した時にカップリングされていた曲。その後、中学時代にはスコアも入手、10年くらい前に紛失しちゃいましたが親しみひとしおの作品です。研究者や評論好きな方々は、交響曲なのに 組曲と分類されているとか、初演が楽章ごとにバラバラでやられた云々とかで 評価が低いのですが、ビゼーの優しさあふれる旋律と躍動的リズムと太陽の光をたっぷり浴びるようなカラフルなオーケストレーションは 本当に聴くには楽しい音楽です。
と めちゃめちゃ熱い期待で 今日は前から6列目の中央の席。今日はなんと夏休みなのに、夏休みだから?、全席完売の盛況嬉しすぎます!でも これは指揮者の知名度? いや、古楽系は日本では認知されないから…
前半は その
🎵交響曲《ローマ》
都響は『交響曲』としましたね。まぁ どっちでも良いのですが… ただプログラムの本文には楽章毎の表題についてちょっぴりと言及されてはいるものの、肝心の楽章毎の解説部分には その表題を載せず音楽形式中心の説明。解説者いわく、表題は誰が言ったか不明だから と言い それを排除するのはいかがなものか? この曲を初めて聴く人にビゼーのイメージした風景をよくわかって聴いてもらってもいいのでは?交響曲として聴かなくてはいけない理由はないのだから!16型の両翼配置。
序奏の森の風景は、冒頭のホルンの柔らかい四重奏が絶品。
主部も表情豊か。不安感を煽るかと思いきや、開放的な幅広さに転回したりと、森の風景に例えれば、暗い深い森に、所々開いた空間の光の暖かさみたいな感じが素敵でした。
最後に序奏の部分が戻って来たときは 冒頭よりテンポが速くしていたのは 絶対的な速さより、耳での速さを考えてのことでしょうか? 音楽が締まりました。
ほとんど間を置かずに入ったスケルツォは 落ち着いたテンポで楽器間のカノン風の組み立てが分かりやすく また愉しさあふれる表情が素敵でした。
ちょっぴり間を置いて 第3楽章にあたる行列。ここでは両ヴァイオリンがテーマを繰り返す時に、少人数から弾きはじめる分奏が効果的に決まりました。特にその部分は 第1ヴァイオリン、続いて第2ヴァイオリンが小大と音量のみならず響きの深さを変えながら、両翼配置の効果も鮮やかに音のパレットうつろいが光素晴らしかったです。
終曲は謝肉祭。細かい動きの曲ですが、決してスピードをアップさせることもなく、着実な足取りがいい。音楽の構築が良くわかる。そのあとに出てきた第2主題では 弦の一体感がそれまでとの音色とのあっと驚くほどの対比が それは奇跡的な瞬間でした。
期待以上の素晴らしい演奏
満杯のホールを埋めた聴衆も同様で、カーテンコールが4回(5回かも)と 前半ではあり得ない盛り上がりになりました。
休憩後は有名な
🎵《アルルの女》組曲第1番 と
ギローが編曲した🎵《アルルの女》組曲第2番
これは私も昔、指揮した曲なので 拘りが強いのですが、あっさり 納得させられてしまいました。驚くべきは オケの、特に弦の、音。芳醇で厚い音は この曲には必要不可欠。また、悲劇的なストーリーに合う 暗く 悲劇的な表情も必須。20種類以上聴いた音盤の中で 一番のお気に入りの オーマンディの演奏のオケの音、表現にも匹敵する演奏になりました。
前奏曲の最初に楽器を変えて繰り返される主題は それは『アルルの女』の様々な場面を想起させる七色の表情
あとは そのような仕掛けの連続。
アダージェットの夕暮れの静けさのような美しさ。
カリヨンも中間部の木管のアンサンブルのなんとも言えない淋しさ。
パストーラルの中間部の民族的な華やかさ、タンブーランの音色がほの暗さ。
どれもがため息と鳥肌の連続でした。
そして有名なメヌエットでは それまでと明らかに異なり、明るさを前面に出した演奏。後半、サクソフォンがオペラの原曲の歌の旋律を奏でる時にも、本来伴奏であるフルートの方を朗々と、自発性を活かした感じで吹かせていました。
ファランドールでは最後、前奏曲の主題を金管が吹くとき、ベルを真正面に堂々と鳴らしたのが気持ち良かったです。
そしてこの組曲でも ヴァイオリンを刈り込み、音色や音量を繊細に操っていたのは見事でした。
今までかなりの実演を聴いた アルルの女 ですが、もちろん 最高の演奏になりました
アンコールは
🎵『カルメン』前奏曲
有名な、あれです。私はどうしてもこの曲を聴くと、うどんが食べたくなりますなぜなら私のお気に入りの映画『UDON』のBGM音楽としてあまりに印象的でしたから。
その後、オケは楽譜を片付けていたので もうおしまい、と思っていたら、ミンコフスキーさんが指揮台に立って 振るそぶりをしたあと、なにやらコンマスの矢部さんに演奏を指示。
🎵ファランドール
矢部さんがすぐに頭をさわり、冒頭から演奏の指示をして、すぐに演奏開始。団員は外してしまったリードをつけたり、楽譜を開いたりと慌ただしいものの、出遅れは最初の前奏曲の主題のところだけ。その後は本プロよりも大胆な表情を指示しながら、オケも楽しそうにアンコールを演奏しました。聴衆の盛り上がりは最高潮
2回のカーテンコールでオケを下げてしまいました。オケが引っ込んだあとも拍手は続き、ミンコフスキーさんをスタンディングで呼び戻すことに。
素晴らしいビゼーを聴けたことに 感謝です。ここまで拍手が熱かったコンサートは、近年の小澤さん、90年代の朝比奈さん、最後のクーベリックに匹敵しそう。
ミンコフスキーさん、凄いです。完売になる理由がわかりました。ハイドンの交響曲のCD、手にいれないと!