
ぐちゃぐちゃだった。
なんの対策もしてなかったので、上にある物は落ち、高さのある物は倒れ、冷蔵庫の中身を含め扉の向こうにある物は飛び出していた。
ぐちゃぐちゃではあったけど、6畳2間のせまい2DKは片付けにさほど手間取ることもなく、2時間ほどであらかた片付けられた。
ただし、水道が止まっているので何も洗う事は出来ないため、シンクは山盛りだし冷蔵庫の中は割れた卵などでベタベタなままで、日没にて終了せざるを得なかっただけだ。
室内が真っ暗になり考えた。
さてこれからどうする。
ライフラインは止まっている。
『トイレの水流れたょ』
彼女は嬉しそうに言ったが、それはタンクに残った最後の一回分、次は流せない。
食料はあるが、電気も火もなきゃ手を出せない。
電池式のラジオはないので、ワンセグ以外に情報を得られないが、バッテリーを残しておかなければ不安だ。
実家やホテルにでも避難するかなんて話していたのだが、どこまでいけば電気が復旧してるだろう…
信号が止まっているので、無計画に家を出ても渋滞にハマるだけで、どこにも辿りつかずに朝になるかもしれない。
あとから分かったのだが、茨城県内全域が停電状態だったので、結果的に動かなくて正解だった。
しかも、偶然での幸運もあり、芳香剤や使用済みの油などがぶちまかれ、多様な匂いが混じる我が家でも数日なら籠城出来る自信が湧いた。
まず、ペットボトルのミネラルウォーターを買ったばかりで、遣い残しを含めて2リットルが7本ある。どうやらカセットコンロが無事だしボンベも買い置きがある。
普段は買わないのに、偶然他の用で買ったカップ麺まであった。
布団にくるまっていれば、寒さはしのげるだろう。『こりゃぁ震災ベイビーがあちこちで作られるな』などと不謹慎な軽口まで言ってしまった。
車のガソリンが半分ほど残っているので、携帯の充電も出来る。
よしいける。
つづく