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國宗利広 著 中央経済社 発行 第1版
の 「第4章 日経平均と共生するHFT -アルゴもいろいろ-」 の 「第1節 アルゴリズム」 から。
1 アルゴの種類
頭書書籍 43頁から転載
アルゴは、大きく分けて以下(1)~(5)に分類できる。この5分類をしっかり区別している投資家は殆どおらず、これらのアルゴが連鎖したことによる予想外の急な価格変動に嫌気がさし、アルゴを十把一絡げにして悪者扱いするのは、ただの誤解・被害妄想に過ぎない。
(1) 執行アルゴリズム
もっとも広範囲に使われているアルゴリズム。
証券会社や東証が提供するアルゴ(逆指値や不成 など)と、証券会社や機関投資家が独自に開発したアルゴとに分類できる。
もともと売買することが決まっているものをより細かく分割執行しているだけなので、執行アルゴ自体が株価水準に影響を与えることはない。
<時間分散型>
・VWAPターゲット
VWAPに負けないように執行するアルゴ。なるべく相場観を入れずに機械的に執行しながら、勝負どころに絞って多めに執行するのがVWAPに勝つコツ。
・TWAP
出来高には関係なく、時間で分割して機械的に発注する方法。先物市場でたまに出現する。
<IS型(好条件なら注文増)>
パフォーマンスをファンドマネージャーの責任による部分とトレーダーの責任による部分に分けるために用いる。トレーダーはできる限りファンドマネージャーが決断した時点の株価に近い値段で執行することを目指す。具体例として以下のようなものがある。
・プライス イン ライン
有利な価格では速く、不利な価格では遅く注文を執行する。
・ボリューム イン ライン
売買高に連動して注文執行速度を変える。
・テックス
理論価格より割安なら積極的に、割高なら消極的に注文。
<アイスバーグ型>
大口の注文を抱えている場合、板に乗せると売買の意図を読まれてしまうので、自動的に指値を小分けにして発注する仕組み。すべて約定すると同じ注文を繰り返す。株数はランダムにする。以下のようなものがある。
・リザーブ
価格と株数を細かく注文設定するもの。
・フロート
最良気配値または仲値で注文するもの。
<ステルス型>
注文をさらさないアルゴ。所定の条件を満たす注文が出た時に瞬時に予定の売買を行う。以下のようなものがある。
・ゲリラ
有利な気配値が出たら、その気配値にぶつけて発注する。
・スナイパー
十分な流動性が出たら発注する。
<シャーク>
隠れた大口注文を見つけ出すことを目的とするアルゴ。小口注文を連続的に出し、注文が直ちに約定すれば隠された大口注文があると推測する。
大口注文を検知したシャークは、指値注文をだし、隠れた大口注文よりも執行待ち順位を有利にする。隠れた大口注文が水準を変更を変更したらシャークもそれに追随し、隠れた大口注文の先回りをする。
隠れた大口注文とシャークとの競り合いによりトレンドが形成されるが、価格が十分に上がったところでシャークは売り抜き、低リスクで利益を上げる。
(2) 方向当てアルゴ
短期的なモメンタムを感知して自動売買するアルゴ。膨大な取引データを処理して株価の動きを予測する。
ただこのアルゴは全体から見れば僅かで、一時的に上手くいくこともあるが、上手くいかないことも多い。
なお、ソフトバンクや三菱UFJFGの値動きがこのアルゴによるものと思われがちだが、ほとんどが鞘取りアルゴまたは執行アルゴによるものと認識した方が良い。
(3) 反応型アルゴ
経済指標やネット上の言語、要人発言などに反応するアルゴ。かなり仕掛けられている。典型的なものは地震アルゴ。
この反応型アルゴに、逆指値や単純なシステム売買、執行アルゴが連動すると、複雑なアルゴが走っているように見える。が、ひも解けば、別の目的を持った多種多様なアルゴの連鎖反応に過ぎない。アルゴの連鎖反応は無機質で、どこまでも極端なことが起こり得、連鎖反応中の値動きを予測することは不可能。
(4) 単純なシステム売買
方向当てアルゴのような精緻なものではなく、個人投資家が行うような自動売買。典型例がブレークアウトを狙う逆指値注文。トレンド方向に出てくるものが多く、全てを足し合わせるとかなりのパワーを生み、侮れないアルゴ。
(5) 鞘取りアルゴ
最も有利で安全な場所に並ぶために、高速で指値を出し入れする。市場間、商品間で似たような動きをするものの間を高速高頻度で動き回る。HFTはここに分類される。
現物先物間の裁定取引、ミニ先物・ラージ先物・オプション・ETFの間で動き回る。
発注量における取消の比率が極めて高いのが特徴。基本は逆張り。相場の動きをミリセカンド秒のレベルで緩衝し、流動性を高める。
2 クオンツが市場からお金を抜き取る5つの原理
クオンツの考えだす複雑で精緻なモデルは、下記5つのカテゴリーに収まる。これらのカテゴリーの原理は、個人投資家が何気にやっていることと大して変わらず、個人投資家が感覚でしていることをクオンツは数学的に深く考え、PCをつかって広範かつ高速で分析しているに過ぎない。
個人投資家はチャートの形状から判断するが、クオンツの作るアルゴは、価格や出来高を読み込み解析することでトレンドとその勢い等を数値化する。
金融市場は、数式で完全に説明できるものではなく、土壇場でマーケットを動かすのは、人間の恐怖や楽観で支配された極端な行動。どんなに精緻に作ったアルゴでも、予測できない人間の極端な行動によって大どんでん返しを食らう可能性がある。
【トレンド】
値動きを加減、平均等した数値からトレンドやモメンタムを予測。
【平均回帰】
過去の値動きから、割安・割高を判定し、正常範囲に戻ることを期待する。
【ファンダメンタルバリュー】
膨大なファンダメンタルデータを検索し、株価を説明できる要因を見つけ出す。
【裁定・複製】
値動きが同じもの、似たものを見つけ出し、その間の鞘を取る。
【マーケットメイク】
妥当値段を計算し、取引を急ぐ投資家から安く買ったり高く売ったりし、リスクをコントロールしながら鞘を少しずつ積み上げる。