SF短編小説『詰め替えよう』リニア著
(起承転結の承の部)
帰り道、お母さんの買い物荷物持ちを手伝いながら
「お母さん、何で詰め替えっていうんだろう。無くなって
から使うんだから『つぎ足し』というんじゃないの?」
と学校でも成績が良い奈々子は困らすつもりで聞いている
のではなしに、お母さんを困らせていた。
「そうね。つぎ足し用じゃ、ちょっと貧乏臭い雰囲気が出てしまう
からじゃないのかしら?詰め替えだったらもともと中に入っていた
ものが気にいらなかった場合処分して詰め替え用に換えられるしね。」
「やっぱり理由付けが大切なのね。」
「何?その理由付けって?」
「うんん、なんでもない。」
夕暮れが近づいてきている。
「じゃーお母さん。詰め『替え』と詰め『換え』の
漢字の違いって何?」
「ほら、暗くならないうちに夕飯の準備をしないと。
急ぎ足で歩きなさい!」
暗くなって家々の電気が目立ち始め、夕飯の美味
しそうなにおいと煙が漂っていた。
奈々子は帰ってから自分の部屋で愛用の辞書
を片手に調べモノをしている。
「奈々子、そろそろ御飯よ」
呼んでも返事がない。
この時、奈々子の意識はすでにこの世界にはなかったのである。