
この花は、今日、このスペースで、客を迎える予定はない。
しかし、こうして毎朝、綺麗に飾られる。
食材もしかり。
予約が無くても、万全の接客準備をする。
このたった数行で語られる店の努力話なんて、
聞き流されても仕方ない。
いや、店を持つものとして、当然のことだと言われてしまえば、
それまでだ。
だが、どうだ?
屋台での話じゃない。
客席数だって、相当の数だし、
国内だけでなく、海外にまで出店を続ける三國清三氏の店だ。
その無駄とも言える高額な出費を毎日、全部の店でやってみろ。
大赤字だ。
自分がオーナーだったら、恐ろしくてできまい。
「こんなご時世だから、はっきり言って厳しいですよ。今日だって暇なんだから」
そうきっぱり言い切る三國シェフだが、
そんな時だからこそ
「毅然としろ」
こう言ってみんなの士気を高めるんだそうである。
苦境に立たされた時、どうせつぶれるなら、やりたいようにやってつぶれようと賭けに出て、
大成功を収めた三國シェフらしい考えだ。

食中毒問題、
暴力問題なんかで話題になったこともあるが、
その事後処理もしっかりとやっている。
こんな言い方に不満を感じる者もいるだろうが、
これだけ自分を厳しく育て上げてきた人間だ。
甘っちょろい社員に対しての厳しさは、あって当然のことだろう。
そしてマスコミの扱いのうまさ。
バカなマスコミをちょろまかすのは簡単だ。
しかし、そんなことさえできない偉そうな料理人を数多く見てきたが、
この三国シェフくらい完璧にマスコミ対応ができれば、
文句はない。
やるならトコトンだ。
味へのこだわりは大前提として必要だが、フレンチやイタリアンの場合、
接客レベルの高さも必要とされるだろう。
たかがマスコミを軽くこなせないようなオーナーが、
舌の肥えたややこしい常連客を納得させられるはずはない。
だいたいおいらなんか、ちょっと美味いと言われる洋食を食べれば、
そこそこ、みんな美味く感じてしまうんだし。
和食ほどに、その差はわからないんである。
だからこそ、接客はだいじだし、何を言うかわからないマスコミの対応は必須なんである。
高飛車な態度で客を値踏みするようじゃ、まったくお話にならない!
と言えば・・・・
思い出した。
思い出すだけでも腹がたつ店。
銀座の化粧品系の某有名レストランだ。
あそこの広報担当の姉ちゃんなんて、そりゃそりゃ、凄いぞ。
まずは取材者の身につけているものを上から下まで瞬時にチェック。
その後の見下した態度がもの凄い。
たまたま同行した女性ライターがあまりにもラフな格好をしていたからなのか、どうか・・・
まっ、いつものことかもしれないな。
「ここって、あんたの店じゃないよね」
「なんで、そんなに偉そうなわけ?」
「どうせ、あんたたちは、ウチあたりの店で日常的に食事なんてしてないでしょってか??」
何様のつもりなんだ、おめぇは!!
っと、まあ、おいらが激怒した店だ。
どんなに海外から人気のシェフを連れてきたって、あんな広報女を雇ってちゃ、
ダメだな。
で、いったいどこの店かって??
銀座のシンボルでもある柳をフレンチで言うと・・・
おっと、話がそれた。
いずれにしてもさ、
三國シェフレベルの味の域になると、競合シェフだって何人もいて、
どれも美味いわけだろ。
それなら、先陣を切って出た伝説の三国シェフのところで食べるのがいいと思わないか?
オテル・ドゥ・ミクニが四谷に店を構えた時、おいらは学生だった。
いきがっていた頃だから、
「いつかはミクニに行くぞ」なんてずっと思っていたんだけど、もともとフレンチが似合うがらでも無いので、
その意志はフェードアウトしちゃったんだな。
でも、今なら、息子を連れて、
三國シェフの若い頃の意気込みと成果を語ってやりながら、
舌鼓を打つことができそうな気がする。

人情味あふれる素敵な笑顔をいっぱい見せてもらったし、
最高のもてなしを受けたが、
厨房での三國シェフはシビアだ。
言うまでもない。
しかし、今まで入り込んできた厨房のなかで、こんなに緊張した厨房を見たのは初めてだ。
マスコミに優しい三國シェフだから、こっちにプレッシャーを与えるようなことは、決してない。
しかし、スタッフを包囲する三國シェフの強烈なオーラには圧倒された。

今まで、結構な数の料理と著名人を撮ってきたつもりだが、
この三國シェフを取材させてもらうのが初めてってのも驚く。
これほどのビッグネームなのに、一度も接点が無かったことが不思議だ。
2009年のスタートが三國シェフとの出会い。
今年はきっと、いい年になるに違いない。
三國 清三(みくに きよみ/1954年8月10日生まれ )
洋食料理家。
北海道留萌支庁管内増毛町出身。
父・正(漁師)、母・亮子(農家)の間に7人兄弟の三男として生まれる。
実家は半農半漁。
現在は東京四ツ谷の「オテル・ドゥ・ミクニ」等のオーナーシェフ。
「ソシエテミクニ」代表取締役。
日本フランス料理技術組合代表。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
オテル・ドゥ・ミクニ
住所/東京都新宿区若葉1-18
電話/03-3351-3810
営業時間/ランチ:12:00~14:30(L・O) ディナー:18:00~21:30(L・O)
定休日/日曜日の夜、月曜日