歴史は繰り返す、僧兵と労働組合、現代の平清盛が橋下市長だ。 | 井上政典のブログ

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 歴史ナビゲーターの井上政典がお贈りする祖国日本への提言です。
 
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 昨日、平清盛についての講演を行いました。

 その準備過程でいろんなものが見えてきました。面白いもので、知っているつもりでも、いざ人前で話すためにもう一度整理したり、今回のようにパワーポイントを作成したりするとまた論点が明確になってきます。

 天皇陛下が他の国の皇帝や王様と著しく違う日本国の形は、平清盛の時代に大きく舵を切ることになったと確信しました。いろんな学説があると思いますが、皇室の権威と幕府という武家の政治が並立できたのが日本の歴史の大きな特徴だと思います。

 さらに、この時代に平氏は奈良の興福寺や比叡山延暦寺の僧兵に対しても断固した処置をしており、仏教勢力が政治的な関与を最小限に抑えたきっかけとなっています。

 その断固とした処置が奈良の大仏殿炎上という最悪の結果を招き、それが原因で清盛は高熱にうなされてなくなったとも言われています。

 私たちは学校で政教分離をしたのは織田信長と習ってきましたが、最初に寺院勢力に対抗したのは平清盛で、僧兵の行動は後白河上皇が自由にならない三つのものの一つに上げているほど強力なものでした。

 この僧兵という勢力を調べてみると、今の労働組合と奇妙な一致が見られます。

 もともとは、仏法を広める寺を外的から守るもので、僧兵というくらい屈強な体格を持った僧が武術を習得し、集団を結成しました。その根本にあったものは、衆生を救う為であったと思います。そのため三法(仏法僧)を守護する力が必要でした。

 しかし、仏教という尊い教えを広めることだけに使われるのではなく、しだいに自分たちの要求を貫徹するために使われ始めたのです。その権威が仏教に求められました。しかし、それは民の窮状を救うためだけではなく、教団の存続の為に使われる事が多くなり、多くの仏僧たちが既得権益を持つようになりました。

 すると貴族と仏僧という二つの支配階級が形成され、それを支える民衆がその重圧にあえぐというおかしなことが生まれてきたのです。

 それを現代に置き換えると、労働組合や農協も組合員たる労働者を守るための組織だったはずです。ところが、組合幹部たちは労働貴族化し、自分たちの権益を守るために組合員を武装化させ、闘争に明け暮れました。そしていつの間にか大きな利権の巣窟となって本体の日本経済を脅かすようになりました。

 平安末期に出現した平清盛がこれに果敢に対抗しました。そして現代では橋下市長がそれに当たるのではないでしょうか。

 橋下市長は大阪市営バスの職員の賃金を4割カットと打ち出しました。赤字会社で倒産してもおかしくないのに、こんな高い給料をもらうのはおかしいという普通の感覚でこの改革に取り組もうとしています。

 民間だったら当たり前のことが、公務員には適用されないのはおかしいことです。でも、そのおかしいことがまかり通っているのが現状です。それに彼は風穴を開けようとしています。

 凄いエネルギーです。

 平清盛も摂関政治の末期で貴族と寺院の腐敗でにっちもさっちもいかなくなったところで強力な指導力を発揮し、改革をしようとしました。経済的にも日宋貿易の推進というインフラの整備をすすめ、博多にも日本で最初の人工港をつくったり、福原(神戸)の港の整備などを推し進めます。

 こういう改革は既得権益を持っている人たちにとっては許しがたいものがあったでしょう。でも、清盛は強権的な指導力で改革を推し進めます。それを当時の人々は拍手喝采で受け入れたことでしょう。

 橋下市長も協力に大阪を改革しようとしています。利権を守る勢力からはハシズムや出自の問題をとりだたされていますが、本人は改革にまっしぐらで庶民は拍手喝采をしています。

 平清盛はどこで間違ったのでしょう。平氏の棟梁として平氏一門を登用したのは良いのですが、その中には箸にも棒にもかからない連中がたくさん混じって、清盛の改革の精神を汲むことなく自分の保身に走ったのです。

 これと同じことが橋下市長にもいえます。大阪維新の会でも、しょうもない市議や府議が不祥事を起こしたり、橋下人気にあやかろうと既存政党に所属している民主党の現職議員が参加を表明し、あまりにも反響の大きさに出した首を引っ込めるという醜態をさらしています。

 つまり、玉石混合状態になっているのです。本当にこれで良いのでしょうか。

 政治は数であり、民意が大切といいながら、稀代の英雄も足元をすくわれて転んだ例がたくさんあります。せっかく大きな改革を推し進めている橋下市長が有象無象の波に乗ろうと集まった連中をどうさばいていくかが今後の大きな注目するところになるでしょう。

 橋下氏は自分の給料も4割カットを発表しました。こういう姿勢はなかなかできるものではありません。橋下徹氏も平清盛と同じように稀代の英雄だと思えてきました。

 だからこそ、周りに集まる人間の質には充分に注意して欲しいと思っています。