産経新聞に載った私のコラム(九州山口版)です。 | 井上政典のブログ

井上政典のブログ

 歴史を通じて未来を見よう。

 歴史ナビゲーターの井上政典がお贈りする祖国日本への提言です。
 
 ご意見は賛成反対を問わずどんどん書いてください。

 ただし、社会人としての基本的なマナーは守ってくださいね。

 本日の産経新聞九州山口版に掲載された私のコラムです。九州山口以外の方は読めないので、ここに載せます。12月は、もうひとつの私の連載、「こんなことあったかも?!」も現在執筆中です。今回は熊本城にまつわるお話が出てきます。


 九州山口にお住まいの方々はぜひ産経新聞をご購読ください。



つれづれ花「伝統芸能にふれて」

                 歴史ナビゲーター 井上政典

 能楽囃子大倉流大鼓方として重要無形文化財「能楽」の保持者に認定されている大倉正之助氏にご縁をいただき、大鼓(おおつづみ)練習会参加という貴重な体験をしました。


まったく素人の私が大倉氏の奏でる澄み切った鼓の音を出そうと指を腫らしながら必死に何度もたたいても「ぺちょ」という情けない音しかでません。


『調(しらべ)という字を思い出してください』といわれ、ふと気づきました。『そうか、和楽器が奏でる音は調(しらべ)といい、打つ人・大鼓(おおつづみ)・場所・気候などの調和によってはじめて出てくるものだ』と頭では理解しましたが、それでも簡単には良い音が出るわけありません。呼吸を合わせ無心に敲いていくとやっと数回に一回は『おっ!』という音が出るようになりました。しかし、指の方が悲鳴をあげ、練習を断念せざるを得ませんでした。


 お稽古会の終わりに、田村権宮司のご配慮でお稽古場としてお貸しいただいた筥崎宮のご好意にこたえるために、正式参拝後に本殿の舞台で奉納演奏をされました。神前で奏でられる大倉氏のお姿は神々しく、その人と大鼓の一体となった音はもはや神様の声のように聞こえ、すさまじい魂魄の圧力は聴覚だけでなく五感を総動員しても受け止めることのできないものでした。もはやそこには時間も空間も超越し、ただ神と一体となった大倉氏と鼓から発する波動しか存在しない世界が創出されたのです。


 ど素人の私でも本物に触れることにより能楽が室町時代より現代までなぜ継続しているのかを体感しました。そして私たち日本人には守るべき伝統があることがわかりました。美智子皇后の誕生日会で天皇皇后両陛下の御前でも演奏されたことのある大倉氏が目の前でそれも筥崎宮という由緒正しい場所で神に捧げる演奏を一緒に体験できたことは最高に幸せな瞬間でした。