呉善花先生講演録 2 | 井上政典のブログ

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 歴史ナビゲーターの井上政典がお贈りする祖国日本への提言です。
 
 ご意見は賛成反対を問わずどんどん書いてください。

 ただし、社会人としての基本的なマナーは守ってくださいね。

韓国経済には3つの自助努力があります。①不況下での説教投資を含めた大胆かつ迅速な経営判断。②高付加価値の商品を集中的に投入する販売戦略。③先進国、アジアやアフリカも含めた新興・途上国市場を取り組む海外戦略です。

一見よさそうに見えますが、ここには創造性や技術の積み重ねは無く、売れそうになっている製品をすばやく見つけて、それを低価格で販売できる体制をトップダウンで瞬く間に作ってしまうことです。それも、日本のような技術力が高く、国民の目も肥えているところでは販売せず、新興・途上国市場に定住する覚悟の社員を家族ごと派遣し、地元経済と密着しながら販売をするという戦略なのです。

現代自動車グループの国内シェアは7割を超えます。IT産業ではサムスン・LGの2社の国内市場を席巻していますが、日本では携帯電話でシャープなど主要6社がしのぎを削っています。

それでは、どんな問題が生じているかというと、売り上げが韓国GDPの2割を占めるサムスンのビジネスモデルでは、部品を輸入して韓国で完成品を生産して輸出して売り上げを確保していますが、資本を海外からの借入に頼っています。その規模はGDPと同じで、利益が出ても海外に支払う利息も多いため、いわゆる自転車操業になっています。そのためどんなに売り上げを伸ばしても国内に現金が残らない構造になっています。

なぜそんなことになっているかというと、韓国の企業独自の技術水準が低いからです。完成品を構成する核心の部品や素材はほとんどが日本からの輸入品で占められ、独自の技術水準はほとんど無いことがわかります。

たとえば、液晶テレビの基幹部品を見てみると、偏光板は日本の日東電工と住友化学が世界市場の75%を占め、韓国企業は0%です。液晶も日本窒素が40%・ドイツのメルクが40%を占めています。カラーフィルターにいたっては日本の凸版印刷と大日本印刷が70%のシェアを占めています。

半導体の非メモリー分野での核心部品の「韓国の国産化比率」を見てみると、

携帯用・APの国産化率27%

RFIC         17%

スケーラー      10%

モデム・PMIC・ワイアレスコネクティビィティ・MPRT・自動車用のパワートレイン・インフォテインメントなどは0%です。

 このように低い国産化率でどのような問題が生じるかというと、まず莫大な特許料の支払いを余儀なくされます。液晶の基本特許はシャープが所有しています。

だからサムスンは毎年特許料を総額数百から数千億円海外の企業に支払っています。この基幹部品や特許を外国が持っているものに頼る構造のため、対日貿易赤字の増加につながっています。このようなことは日本のマスコミは報道せず、日本の部品で作られたサムソンの完成品が世界のシェアをどれだけとったと騒いでいるのです。

 

 特許を保持している企業とのトラブルも絶えません。1999年以降米国に支払った制裁金が多い企業10社のうち4社が韓国企業でした。LG 大韓航空 サムスン電子 ハイニックス半導体です。

 産業の基礎力が無いために、物まね二流品が韓国企業のおはことなっています。特殊な技術を使わず、価格が安いということを武器に国際市場へ乗り込んでいるため、韓国の中小企業は世界市場で苦戦を強いられています。価格競争では中国企業にかなわないし、高級製品では日本製の足元にも及びません。

 さらに故障率の高さも問題になっており、アップル社はサムスンの故障率の高さ(15%)から距離を置くようになりました。悪い悪いと言われたアメリカ製品の故障率でさえも3%しかありませんし、日本製品の故障率は0コンマの以下の世界です。

 サムスンと現代自動車の売り上げは韓国のGDPの17%を占めており、トヨタでさえも日本のGDPに占める割合の3.9%にしか過ぎません。このように特定の企業が巨大化したために、得た利益を韓国国内に投資する場所がありません。

 そのために、企業の利益は海外の投資に回るために国内にその儲けの恩恵を与えることが出来ません。経済というものはお金が流れるからその流域に住んでいる人に恩恵を与えるのですが、大きすぎて韓国国内に還流できないようになっているのです。つまり効率化と外国との競争を意識しすぎたために馬鹿でかい船を建造したために、国内にはその船を停泊させるだけの港が無いのと同じなのです。

 GDPに占める輸出の割合は43.4%(2010年)で、主要20ヶ国では一番高い割合となっています。貿易立国と叫ばれて久しい日本では、なんと10%ほどしかありません。さらに韓国企業の技術力不足は深刻で、日本から資材は部品・工作機械を購入して組み立てだけを韓国が行い、韓国製として輸出しているだけなのです。そのため対日貿易赤字は増加の一方でこれは戦後一貫して変わっていません。

 

 海外で安く売るために、利益を低く抑える戦略をとってきましたが、部品や特許料の高騰のためコストが増加しても、なかなか価格をあげることができません。なぜならば価格を上げても品質では日本製にかないませんし、中国製の低価格製品には太刀打ちできません。日中のサンドイッチ状態に陥っているのです。

 どんなに一部の企業が世界で大きなシェアを占めても、その恩恵が国民に還元されないために貧困層が急増しています。平均所得の半分以下の世帯が300万世帯になり、全体の18%を占めるようになりました。人口でいうと700万人、これは一年間で二倍になりました。その貧困層を救うセーフティネットはOECD35ヶ国中34位で高齢者に貧困層が多い状態になっています。それは45%と高い数字を示し、OECD加盟国の中でワーストワンです。ちなみに日本は22%でした。

 これは、もともと儒教社会の韓国では子供が年老いた親を見るという習慣があったためですが、倫理道徳や人情の崩壊とともに子供が面倒を見ないことが社会現象化しています。

 失業率も公式発表では7.8%ですが、本当はその倍あります。これは一時間でも働いたらその人は失業者とはみなさないという統計上のずるをしています。就職人口の半分が正社員でその他は派遣社員となり、そのため貧富の差が拡大しています。

 治安も大きく揺らいでおり、軽犯罪法違反は日本の44倍です。隣接騒乱罪は47千件ほどですが、日本はわずか25件です。汚物投機は日本は98件ですが、韓国は6万件を越えています。詐欺事件も大量発生しており、2008年のデータでは205千件と日本の427倍(人口比)もあり、だますのが悪い社会ではなく、だまされるのが悪い社会になっています。

 自殺率も人口10万人あたりの自殺者数で、OECD諸国でワーストワンが韓国で28.4人。日本は3位で19.4人となっています。この自殺者のほとんどが高齢者で貧困と孤独が自殺の要因になっています。

 移民として韓国を出て行く人が毎年25000人ほどいます。移民となって国外に行くと言うのは貧困国から先進国へ行くのが一般的ですが、韓国はこれだけたくさんの人が国を捨てています。それもお金を持った人が韓国を出国しているのです。

 このように韓国の現状を見てきましたが、この問題の根本にあるものは、技術蔑視の儒教の伝統に縛られているといえるでしょう。朝鮮時代から技術者を蔑視する伝統があり、息苦しい社会とも言えるでしょう。これは、儒教では物を作る人が最下級におかれているために、部品を作ることは最も卑しい職業となるのです。まだ完成品はカッコがいいのですが、部品を作っているとなるととても下に見られるので、そういう工場はなかなか存続しません。

 日本では、下町の中小企業が集まって人工衛星を打ち上げたり、その向上しか出来ない技術を持っていてNASAが買い付けにきたり、そこが製造をやめると世界の最先端の機械が動かなくなる可能性がある町工場がたくさんありますが、韓国でそういう工場を見ることは皆無です。

 だから、韓国型経済を賞賛するのは間違いなのです。それよりも日本の優位性を見直して、高品質の製品を産み出す技術力を持ち、非価格競争力が依然として強力です。だからこのような円高でもアジア向けの輸出価格はまったく低下していません。これは価格主導権を高品質な製品力によって保っているといっていいでしょう。

 日本において「技術」という言葉には「優れている」とか「進んでいる」というニュアンスが含まれます。技術者それも高度な技術を持っている人は神様扱いです。韓国では絶対に考えられません。

 それに日本の自然の豊かさ、温泉、歴史史跡、高速道路や新幹線などのインフラ。そして何よりも治安の良さ。暴動の心配もありません。3.11の時に見せた日本人の行動は世界を驚嘆させました。観光において優位に立つ要素は十分すぎるほどあります。

 それを発揮できるのが、おもてなしの文化であり、世界最高のサービスが国内のあらゆるところで提供できます。その力を日本人が再認識することが今後の日本の優位性を確固たるものにすることが出来る鍵となるでしょう。