③ハイパーインフレを恐れなくても良い理由

 

 ハイパーインフレは、南北戦争後のアメリカ、第一次大戦後のドイツ、オーストリア、ハンガリー、ポーランド、近年では、アルゼンチン、ブラジル、ロシアなどの例があります。いずれの場合も物資の不足と極端な貨幣の供給が原因となっています。

 ハイパーインフレの沈静化について、第一次大戦後のドイツにおけるレンテンマルクの奇跡と言われているものは、不動産や工業機械を担保とするレンテン債権と交換できるレンテンマルクを第二の通貨とすることで沈静化されたのですが、これは、つまり、「不動産や工業機械」が通貨代わりになったということです。不動産や工業機械が、金本位制における金(gold)の役割を果たしたのです。

 注目すべきは、それまでの通貨のパピエルマルクはすべてレンテンマルクに切り替えられ消滅したのですが、旧貨幣が消滅しただけで、他の資産は無くなっていないということです。

 ハイパーインフレの間、国民はその日暮しを強いられたものの、生産設備その他の資産を失ったわけではなく、政府は炊き出しや生活補助を行いましたから、国民が餓死したわけでもありません。ハイパーインフレの沈静後は、どの国も飛躍的な経済発展を遂げています。

 なぜなら、ハイパーインフレでは、現金や預金が紙切れになることによって、事実上の債務の帳消しが起こるからです。借金のことが頭から離れなかった債務者は、借金から解放され、晴れて無借金からの再出発が出来ます。

 ハイパーインフレの災厄は全て富裕層と呼ばれる者たちに起こるものにすぎません。貧乏人、破産者、年金受給者、生活保護受給者は困りません。なぜなら、生活の必需品や食料はほとんど現物支給に近い形が採用され、今以上に手厚い補助が行われるからです。むしろ、ハイパーインフレの只中の方が今の生活より良いかも知れません。

 つまり、ハイパーインフレを怖がっているのは、現在、現金と預金を溜め込んでいる富裕層であって、債務者にとっては、何億の債務があろうと全て帳消しになるのですから、むしろ喜ばしいことであり、悪いことではないのです。

 貧乏人や債務者にとっては、借金が帳消しになるハイパーインフレは、経済活動における起死回生の願ってもないチャンスになります。まさに天佑とも言うべきものです。

 今の日本には、返済できないほどの債務を背負い、死ぬほどつらい思いをしている者が大勢います。いつかは差し押さえを受け、自宅を含めて資産の全てを失う運命にあります。そのとき、一家心中するかホームレスとなるかを選択しなければなりません。

 しかし、こうした境遇の者たちは、ハイパーインフレが起こったとしても、その不便になんとか耐えていけば、家も売らずに済むだけでなく、借金から解放されて、明るい未来が待っています。

 富裕層でも、現金や預金以外の資産は守られます。ドイツの例でも「不動産や工業機械」は守られました。いくら債務を抱えていようと、債務が毎日何分の一、何十分の一になるのですから、「不動産や工業機械」を債務のカタに取られることはありません。本人に売る意志がなければ、外国人に掠め取られることもありません。

 ちなみに、インフレやハイパーインフレになると、資産価値が上がり、結局、富裕層が得をするという者がいますが、資産価値は物価に合わせてスライドして行くだけで、得をするということはありません。

 また、インフレ税によって、国民から政府へ実質所得が移転するという者もいますが、債権者から債務者へ実質所得が移転するのであり、政府も債務者ですからその恩恵は受けるものの、債務者の一員として恩恵を受けるにすぎません。

 どうしてもインフレを起こしたくない投資家や債権者から雇われた経済学者(新古典派経済学)はこういう有りもしないことを言って、インフレに悪いイメージを付けようとするのです。

 ハイパーインフレが起こっている間でも、政府はどんな手段を使ってでも飢え死にを出さないよう物資の分配を行います。ドイツでもそうしたのです。ましてや、現代の日本には世界に冠たる生産力が存在するのですから、その気になれば、容易に物資の分配が出来ます。

 ところが、日本政府はあたかもハイパーインフレが来ると、行政サービスがストップし、国民の多数が飢えるかのように宣伝しています。これは、あらかじめ、日本政府は無能ですと言っているようなものです。恥ずかしくないのでしょうか。

 債務者にとってハイパーインフレが恐れるべきものではないということになると、一般国民はほとんど債務者ですから、一般国民にとってハイパーインフレは恐れるべきものではないということになります。

 これはすなわち、財政破綻とはハイパーインフレのことですから、財政破綻を恐れる必要はないということでもあります。むしろ、生活苦をしばらく我慢すれば、資産を失うこともなく、借金が全て無くなるのですから、財政破綻は歓迎すべきものとなります。

 しかし、残念ながら、日本ではハイパーインフレは起こりません。この夢は決して叶えられません。

 生産力の強大な日本では、どんなに貨幣を印刷しても、ハイパーインフレにはなりません。100兆円や200兆円をヘリマネでばら撒いたところで、せいぜい物価が5パーセント上がるくらいが関の山でしょう。政府債務を1000兆円を増加し、政府債務を今の2倍に拡大して、国民ひとりひとりに1000万円づつ配ったところで、物価が50パーセント上がるかどうかも怪しいと思われます。それらは債務の返済や貯蓄に使われ、少しマシになった家計が若干の消費を増やすだけだと思われるからです。

 物価は、貨幣量を生産量で割ったものです。分母の生産量を生み出す生産力が日本ほど巨大であれば、ハイパーインフレなどは起こそうにも起こしようがないのです。日本は、ハイパーインフレすら起こせないような悪魔のように強大な生産大国なのです。(ただし、この場合の貨幣量は「物価に影響を与える貨幣量」のことです。「活動する貨幣量」と言っても良いと思います。このように漠然とした言い方しか出来ないのは、そのものの統計の取りようが無いからです。)

 私はハイパーインフレ待望論者なのですが、この悪魔のように強大な生産大国で、財政破綻させてハイパーインフレに持ち込むなどは夢のまた夢であろうと諦めてます。

 外貨建ての国債の場合も、国内の生産力が担保になります。外貨建て債務がいくら増えても、なお、その債務を凌駕する生産力があれば、その生産物を輸出することで、いつかは返済できるだろうと、生産の旺盛な国の国債は外貨建てでも簡単にはデフォルトしません。

 たとえば、日本が何かの気まぐれで外貨建て国債を発行しても、日本は生産力が巨大ですから、貨幣相場で劣勢に立つことはなく、ほとんどデフォルトの心配はないということになります。ちなみに、当たり前ですが、デフォルトによる財政破綻は外貨建て国債にしか存在しません。

 円高になれば外貨建て国債の実質価格が下がり、円安になれば外貨建て国債の実質価格が上がるというように、外貨建て国債の実質債務は為替相場と連動して行きますが、日本国内に生産力が存在する限り、返せなくなることはありません。

 しかし、通常、外国通貨建ての国債を発行しなければならないということは、当該国の通貨が世界に信用されていないということですから、外国通貨建ての国債を発行しなければならないという時点で、当該国の国内生産力すなわち通貨の信用度が危うさの中にあるということではあります。

 

 

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