先日、漆工家の工藤茂喜氏の工房で、漆塗り体験をさせていただきました。
まず道具の説明から。
これは刷毛。
毛先はパーマをかけた事のない,真直ぐな女性の髪の毛で出来ています。
今は中国から輸入しています。
毛先の長さを出すため、刀でヒノキ部分を削ります。
繊細な作業なので、こちらは見ているだけに致します。
その後、刷毛の部分に丸みを持たせる作業をします。
そして、固まった毛先をほぐします。
かなづちを使って、毛先についた漆を取ります
これが完成品。
新しい生漆の樽を開けます。
油紙を少し浮かしただけで、漆の匂いがしてきます。
最初は水分と漆とが分離していますが、
よく撹拌すると均一になってきます。
それを小鉢に小分けして、さあ塗ります。
今回は、NPO麗潤館で使用するヒノキの床材を練習台に。
普通は拭き漆の場合、一度目には希釈したもので塗るそうですが、
漆本来の塗り心地を経験するために、
贅沢にも下地から生漆で始めます。
まずは師匠がお手本を
意外に粘っこくて、筆を取られます。
漆が乾かないうちに、ウエスと呼ばれる綿の布で摺りこんでいきます。
今まで気が付かなかった木目がきれいに現れてきます。
その後、別のウエスで仕上げ拭きをします。
ベタベタしたところがなければ、摺りこまれたということです。
夢中になって、塗っていました。
ヒノキの板が、木目が現れることによって、
その人生?木生を語り始めます。
そうかい、そうかい、ここには枝があったのかい・・・と
無言の会話をしながらの作業でした。
今日は体験なので、塗るのは2本だけ。
その後乾燥させます。
長い板なので、既成のムロには入りません。
工藤さん特製のムロです。
まな板状の台の上に並べ、
これも特製のシーツ掛け
その周りに濡れたシーツで取り囲み、
最後にビニールシートでおおいます
全ての道具がこの床材の為に存在します。
アイデアマンというか、サバイバル能力の高さに感心します。
乾燥した後は、硝煙を混ぜた黒摺りを摺りこんでいきます。
そんな作業を2~3回繰り返し、その度に拭き取りますが、
どんどん艶が出て来るそうです。
後は使った道具の後始末。
ガラスでできた定盤の上での作業です。
刷毛の漆をよくそぎ落としておかないと、
次回使うときに固まってしまいます。
これで次回すぐに刷毛が使えます。
この板は、池田和広氏の金唐紙の周りに貼られる予定です。
私のことですから、
「これ、私が塗ったの!ちょっとだけだけど・・・」と、自慢するでしょうねえ~。
滅多にできない体験をさせていただきまして、
工藤さん、ありがとうございます。