1/31(水)

 

 

@木場

109シネマズ にて

 

 

 

 

千年女優

 

 

2001年|日本|87分

 

監督・原案:今敏

脚本:村井さだゆき、今敏

音楽:平沢進

声の出演:荘司美代子、小山芙美、折笠富美子、飯塚昭三、小野坂昌也、津田匠子、鈴置洋孝、津嘉山正種、山寺宏一 他

 

 

 

楽しみにしていた 今敏 監督作品

 

 

小さな映像制作会社社長の 立花

ドキュメンタリー制作のため

カメラマンの 井田 を連れ

 

30年前に

突如として引退してしまった大女優

藤原千代子 のもとを訪れる

 

引退してから30年間

いっさい応じることのなかった

インタビューを承諾したのは

 

立花 が持参した

「鍵」の存在があったから

 

その「鍵」は

藤原千代子 にとって

特別な存在(初恋…?)である

鍵の君」へと繋がるもので

 

その「鍵」を手にした 藤原千代子 

鍵の君」とのことも含めた

自身の回顧を語りはじめー

 

というストーリーなのだけれども

 

この回顧の描写がまた

一風変わっていて

 

藤原千代子 自身の過去の情景と

その出演作のシーン

(戦国時代から、幕末、大正時代 

はては、宇宙へと旅立つー)と融合し

虚実が混ざりあいながら進んでいき

 

しかもその画面には

インタビュアーである 立花

カメラマンの 井田 までもが

(彼はまさにカメラを携えて)

傍観者として

参戦しているのである

 

いや、ただの傍観者ではなく

 

藤原千代子 の大ファンである

インタビュアーである 立花 は

大ファンであるがゆえに

台詞を誦んじれたりして

 

藤原千代子 の共演者のような

立ち位置になったりもして

 

現実でインタビューしている状況と

その語られている内容とを

渾然一体とした

ひとつの映像として描いている

といったていで

 

まぁ、めくるめいていて

 

これまで観てきた監督の作品

パーフェクトブルー』(現実と妄想)

東京ゴッドファーザーズ』(現実と奇跡)

パプリカ』(現実と夢)

を思い起こしつつ

 

この虚実ないまぜの表現

現実とそうでないものとの融合

これこそが監督の

真骨頂なのだなぁ… と思い

 

この表現を突き詰めていったら

いったいどこへと辿り着いていたのだろう…

と、改めて急逝(膵臓癌により享年46歳)

惜しまれ

 

 

そして、この作品

ジブリの宮崎駿監督作の

『千と千尋の神隠し』と同時期の作品で

(第5回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門では

同時に大賞を受賞しているそう)

 

でも当時はまだいまほど

映画に対してセンサーが

くるくるしていなかったので

まったく知らず、で

 

今回、劇場でこの世界を味わえて

本当にうれしかったのでした

 

リバイバルに大感謝

 

 

それから、この作品

 

初恋の君(「鍵の君」)を

追いかけ続ける 藤原千代子 の物語

のようでいて

 

ものすごく普遍的な

人間のありようを

描いているような気もして

 

ラストシーンの彼女の台詞からしても

 

一瞬の交差

それゆえの強烈な印象

 

実際、劇中でも

鍵の君」の顔は判然とせず

藤原千代子 自身も後年

面影もわからなくなったと

口にしてもいて

 

もはや残っているのは

「叶えられていない約束」

 

この叶えられて「いない」

 

だからこそ

それを「いる」に変えるために

追いかけ続けるという行為

 

そこに従事、固執、

奮闘するという幸福

 

これは「初恋」や「約束」

だけではなく、たとえば

「仕事」や「創作」等

あらゆることに言えるのではないか、と

 

「いない(未)」を

「いる(既)」に変える

 

なにかに「辿り着く」「到達する」

 

そのための過程

 

その過程にこそ

人生の醍醐味が詰まっている

というような

 

 

そう、この、追いかけ続ける

 

インタビュアーである 立花 は

藤原千代子 の大ファンであり

 

彼もまた、その大ファンである

藤原千代子 を追いかけ続けている

ともいえて

 

映画の台詞を誦じれたり

はたまた、立ち回りを再現できたり

あのシーンが〜、と涙したり

 

その姿には

とても共感できてしまい

 

 

私もきっとそうして

このさきもずっと「映画」を

追いかけ続けるんだろうなぁ、と

 

その底知れない「幸福」

 

そして、彼女のように

旅立ちたいなぁ、と