LARME 044号 連載シネマ35. マイ・ブックショップ | la petite chambre

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掲載誌のお知らせです。

遅くなりましたが、先月半ばから発売中の LARME 044号 シネマ連載ページで

マイ・ブックショップ」について描きました。

 

LARME 044号 cinema fashion room vol.35  マイ・ブックショップ / The Bookshop

 

1959年のイギリスの地方都市、1軒も書店がなかった小さな海沿いの町。

戦死した夫の夢を受け継ぎ、たった1人で書店を開店させ、保守層の権力に

立ち向かった勇敢で聡明な女性の物語。

「死ぬまでにしたい10のこと」などのスペイン人監督のイザベル・コイシェ

が、ペネロピ・フィッツジェラルドの原作「The bookshop」に惚れ込んで

映画化し、彼女らしい色彩や映像美、イギリス的な薄暗さとスペイン的な哀愁

が調和された、切なくビターな余韻が残る作品です。

 

貞淑であり秘めた強さを併せ持つ主人公フローレンスを演じた、エミリー・

モーティマーの可愛さと気品のあるレディスタイル。書店のお手伝いをする

女の子クリスティーンのガールファッションなど、50年代のブリティッシュ

カントリー・ファッションを描きました。

美少女過ぎない小生意気な雰囲気、子供らしい可愛さのあるクリスティーン

のファッションが特に印象的でした。

 

スペースの都合上掲載誌には描けなかったけど、パトリシア・クラークソン

演じるガマート夫人のハイソなセレブファッションも目を惹きます。

誠実で善人なフローレンスとは対照的で、高慢で意地悪な嫌悪感のある

キャラクターのガマート夫人だけど、いかにも悪役な雰囲気ではなく一見

エレガントな面持ちが、余計冷酷さを醸し出しています。

今作とは違う心優しい婦人やファンキーなママだったり、幅広く芸達者で

存在感がある好きな女優さんです。

 

ブランディッシュ氏役のビル・ナイは、今まで何となくコミカルな印象が

あったけど、今作は頑固で寡黙だけど密かに男気があるキャラクターで、

インテリな渋オジな魅力があふれていました。

フローレンスがブランディッシュ氏に初めて選書したレイ・ブラッドベリの

華氏451度」↑は、この映画全体のテーマにも大きく関わる本です。

 

フローレンスの自宅のインテリアも素敵。

映画を見る時、ファッション以外に、壁紙、ランプなど調度品にも目がいきます。

50年代末、イギリスの地方都市、書店女主人フローレンスのベッドルーム。

大きめな花柄の壁紙を背景に、ベッドで「ロリータ」を読み耽るフローレンス。

ナボコフの「ロリータ」もこの作品でアクセントとなる本として登場します。

このポーズを見て、フランスの女性作家の伝記映画「ヴィオレット」で

主人公がベッドで読書するシーンが思い浮かびました。

こちらは40年代、パリ、女流作家ヴィオレットのベッドルーム。

フローレンス、ヴィオレットのどちらの部屋も、ウィリアム・モリス (っぽい)

花柄模様の壁紙、アイアンフレームベッド、ベッドサイドのランプ、読書する

ポージング。

「ヴィオレット」もフェミニンな大人ファッション、激しく情熱的なヒロイン

のキャラクターが強く印象に残る映画でした。こちらで少し触れました⇒

「マイ・ブックショップ」も「ヴィオレット」も本好き、レトロファッション

好みな方におすすめな映画です。

 

ジャンルやストーリーは異なりますが、最近劇場で見た「9人の翻訳家」が、

「マイ・ブックショップ」と構図が近いような気がしました。

「マイ・ブックショップ」は、本好きな主人公は本の素晴らしさを多くの

人々に広めたいという思いで書店を開き、権力で弾圧する冷酷な夫人、

「9人の翻訳家」は、作品・作家へのリスペクトを表す翻訳家 (そして仕掛人

のラスボスが、その集大成的なことを暴露する) と、作家への敬意や翻訳家の

人権を無視した卑劣な人間性が露見させていく営利主義の雇用主…という形で、

本をモチーフにした善悪の対比感が、両映画から感じられました。

 

「マイ・ブックショップ」が女主人公をメインに描いたヒューマンドラマ

なのに対し、「9人の翻訳家」はクライムサスペンス群像劇で、評判どおり

楽しめる作品でした。いくつものネタが仕掛けられた重複構造で、途中まで

油断して見逃した部分もあるので、もう一度見直したいと思っています。

ちなみに、監督・脚本 (共同脚本) は、あのお洒落フレンチ・ラブコメディ

タイピスト!」を撮ったレジス・ロワンサル。

前作は女性客向けテイストだったけど、今作は全く違うジャンル&テイスト。

同じ監督とは思えない、すごい才能ですね。

「タイピスト!」について、以前こちらで書きましたのでご参考までに⇒

 

 

連載の掲載ページで1点訂正があります。

映画の中で、フローレンスがブランディッシュ氏宅にお土産に持参した

美味しそうなケーキがあり、ホワイトシロップっぽいものがかかった

チョコレートケーキと思い「chocolate cake」と書き文字を添えて

描いたこちらのイラスト。

↓映画での元画像のこちらを見て (美味しそうなケーキですよね♡)、

てっきりチョコレートケーキかと思ったのですが…

掲載後、映画について調べてたら、どうやらチョコレートでなく、

ポピーシードケーキだったかもしれないようで。

不確かではありますが、念の為訂正させていただきます。

 

 

今号は、黒瀧まりあさん、吉木千沙都さん、中村里砂さん、山本舞香さん

の4人のカバーガールズ。春っぽい装いですね。

 

次号のLARME 045号は3月17日に発売予定です。

連載シネマイラストは、大好きなフランス映画について描きました。

どうぞお楽しみに♪