数字表記を見ると日本民族の多様性が分かる。 | barsoのブログ

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 1から10までの数字は、上りと下りで「読み」が三か所違います。
 順に読むと「イチニサンゴロクシチハチジュウ」ですが、逆に読むと「ジュウキュウハチナナロクゴヨンサンニイチ」と違う読み方をしてしまいます。(註1)

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 今回は、そういった「読み」の違いに着目し、数字表記を見ると日本人の稀有な「特質」が分かるという話になっています。

                 

クマ「ご隠居、なにかの値段が『479円』なら、『ヨンヒャク・ナナジュウ・キュウエン』と読みます。『ヒャク・シチジュウ・エン』とは読まねえ」

隠「熊さん、そのほうが間違いが少なくなる。幕末から明治初年こんなことがあった。当時、『通信・電信』が出て来たが、聞き間違いがあってはいけないので大和言葉の『ひ、ふ、み、よ、いつ、む、なな、や、ここの、とお』を利用した。つまり『一』は『ヒト』、『二』は『フタ』、『四』は『ヨン』、『七』は『ナナ』、『九』は『キュウ』に統一したそうだよ。いまの自衛隊では『10式戦車』を『ヒトマル式戦車』と呼んでいる」
クマ「ははあ、そういうことですか」
隠「むろん『四』を『シ』と読む場合も多い。『四角形』とか『四天王』『四面楚歌』がそうだ。『七』を『シチ』と読むのは『七福神』とか『七転八倒』などがそうだ」
クマ「ご隠居。『七転八倒』と音読みすると、倒れて、のたうちまわてっる感がありますが、これが起き上がって『七転び八起き(ななころびやおき)』と訓読みにすると、柔らかい感じがしますね」
隠「そうだな、日本語は面白い。それから、大和言葉の数字はあまり使われないように思えるが、『ひとり・ふたり』とか『八百万の神』『八百屋』の『ヤ』などに残っている。いろいろ読みがあるということは、つまりは融通性があるのだよ」
クマ「なるほど」 隠「他に『熟字訓』という読み方もあり、漢字で『二十歳』と書けば『ハタチ』、『八十路』と書けば『ヤソジ』と読む」
クマ「ご隠居が九十歳になったら『クソジ』だ」
隠「こらっ、『ココノソジ』だ。しかしまあ、そんな読みだって出来るのは、日本語には多様性があり、含蓄があるからだな」

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クマ「ところで、ご隠居。漢数字の一・二・三の次は『横棒4本』にしなかったのはな~んでか?」
隠「うむ、これは難しい。ローマ数字もそうで、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、の次は『縦棒4本』とはならない」
クマ「古い時計の文字盤は『4』が『Ⅳ』となってますね」
隠「あれは『5』を『V』にしようと決めたので、『Vから1を引いたら4』という意味なんだよ」
クマ「引き算なんですか」
隠「本来、漢数字の『四』は『横棒四本』で表記して『シ』と読んでいたのだが、『一二三』から続けて書くと横棒だらけになってまぎらわしいので、同じ読みをする『四』を転用したようだな。だから『四』から上の数字は当て字なのだよ」
クマ「当て字なんですか」
隠「熊さん、面白い話があるぞ。人間は言語がないと『4』までしか数えられないという研究があってな、『1から4』までは本能で数え、『5以降の数字』は言語的な知識で数えている可能性があるそうだ。近年の研究では、『4』という限界値は脳の大きさによらず、ヒト、カラス、昆虫など幅広い動物で共通している可能性が指摘されている」(註2)
クマ
「ご隠居、交通信号も赤青黄の三色だが、もし五色以上だったら、ドライバーはとっさにどうしたらいいか迷うかもしれないですね」
隠「そうだな。研究によると、子どもたちは最初に『1』を理解し、次いで『2、3、4』を直感的に理解するようになる。『5』を学習した瞬間、『6』や『7』だけでなく、それ以降の名前がついた数字を一瞬で理解するようになるそうだよ。ちなみにサイコロの目は『4』以上は図形で認識できる配置になっているそうだ」
クマ「サイコロだけに、サイコロジーが考えられてるんだ」

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隠「いずれにしても、日本人はアラビア数字も漢数字も大和言葉の数字もうまく使っていて、時々の状況で読み方を変えたりして、言葉に微妙な深みや味わいを加えている。数字の読み方を見ても、日本人の思考は柔軟であることが分かる」
クマ「人間性は堅そうだが、頭は柔軟なんですね」
隠「そう、2024年度の世界IQランキングでは日本は世界1位だよ(註3)。ハーバード大学の著名なサンデル教授は、日本を批判する中国人学生に対して、日本の音楽や建築などの伝統文化や精神性、倫理観、創造力を絶賛した。『日本は外来文化の影響を受ける前から縄文文明という独立した文明が存在していたが、縄文文明は世界の4大文明と比較しても決して引けを取るものではない。日本の神話でさえも西洋のようなおとぎ話ではなく、現実の歴史とつながり、現代の社会の規範形成に影響を与えている』と言った」
クマ「ほお~、すごいですね」
隠「さらに中国と違って、『日本は受け入れた文化を単に模倣するのではなく、独自の美意識や倫理感を社会構造の中に溶け込ませ、新たな形を創造してきた。他国も異文化の影響を受けているが、日本ほど明確に自国の伝統と結合させた例は稀であり、この特性こそが独自性を確立している一因だ。日本は受け入れた文化をただ模倣するのではなく、それを独自の精神と美学で消化させ、まったく新しい価値を生み出している』と講義したら、その中国人学生は黙ってしまったそうだよ」
クマ「ほお~」

 

隠「昨今 流行っているのはLGBT法といった、ごく少数者のためになりそうで、じつは大多数者を苦しめる妙な『多様性』だが、日本人は古代から柔軟な受容性と工夫力と向上心を持っていて、本当の意味の文化的な『多様性』をずーっと表してきたのだよ」(註4)
クマ「日本人も捨てたもんじゃないんだ」
隠「そうだ。日本人ほど真面目で、他者を気遣う人種は世界にはない。日本人だけを見ていると分からないが、外国人旅行客に日本の印象を聞くYouTubeを見ていると、みな異口同音に『街にゴミがない、トイレがきれい、治安がいい』と言うが、最初に『日本人は優しい、礼儀正しい』と言う人が多くて、日本人の倫理観の優秀性を痛感させられるよ」
クマ「俺も先日、浅草の仲見世で『縁日は五日六日(いつかむいか)ですか』と聞かれ、『七日八日(なのかよおか)です』と教えたんですが」
隠「四万六千日(しまんろくせんにち)の縁日なら、九日十日(ここのかとうか)だろ」
クマ「そうなんです。俺もすぐ気が付いたので追いかけて、名前が分からねえから、『あのぉ、さっきの人ぉ、そこの『五日六日の方ぁ』って呼んだら、『なのかようか?』って言われたので」
隠「で、『九日十日』と言った」(註5) 

クマ「う~ん、くじゅう(苦渋)のオチを言うんだからぁ」





《備考》――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
註1:「1から10」は「ひとつながり」として既に読み方が定まっていると考えられるので、読み方は「4」は「シ」、「7」は「シチ」、「9」は「ク」と読みます。逆に「10」からのカウントダウンは一つ一つの数を区切って読むと考えられるので、より認識されやすい読み方が優先され、「9」は「キュウ」、「7」は「ナナ」、「4」は「ヨン」と読みます。
註2:米国マサチューセッツ工科大学とカリフォルニア大学バークレー校の研究によると、人間の数を数える能力は「数字に名前があるかどうか」に依存していたことが判明しました。
 https://00m.in/opZwa 『ナゾロジー』
 https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/09567976211034502
註3:Worldwide IQ Test(日本1位、ドイツ23位、フランス43位、英国66位、米国77位)
 https://sekai-hub.com/posts/iq-ranking-2024
註4:LGBT法の問題点はTのトランスジェンダーの扱いです。体は男でも「心は女だ」と自称さえすれば、女子トイレや女風呂などに入れるとされ、世界中で問題になっています。女子競技では1位を独占しています。
註5:このオチは落語の『九日十日』にあります。→クリック(1分4秒)
※画像はMicrosoft BingのImage Creatorによります(アンディ・ウォーホル風)。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――