barsoは自由に

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世の中に人生ほど面白いものは無し。いろいろな考えを知るは愉快なり痛快なり。
毎週土曜日更新。FC2にも姉妹ブログを持っています。タイトルは 『バーソは自由に』 。
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70年ぶりに、日本語のローマ字表記が
「訓令式」から「ヘボン式」へと改定された。

では、その “ヘボン” とは何者なのか?
そして、どんなメリットがあるのか?

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今回は、非凡でもなく、平凡でもない――そんな “ヘボン” の話である。

 

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まず、なぜ変わったのか?
訓令式の地名は、英語話者にはこう見える。
・Sibuya(渋谷)→ スィブヤ / サイブヤ
・Sinzyuku(新宿)→ スィンジューク / スィンザイク
・Tukuba(筑波)→ トゥクーバ / タクーバ
―――もはや南米か、別の惑星の地名である。
(ちなみに、スペイン語話者なら、シブジャ、シンフク、ツクバと読む)

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一方、ヘボン式の Shibuya / Shinjuku / Tsukuba だと、
英語話者なら、ほぼ直感的に日本語に近く読める。

つまり、駅名・道路標識・地図・企業名などの公共表記は、
訪日外国人の増加と国際化・IT化の進展により、
「外国人に英語式で読まれること」 が最優先になったのである。
 

そのヘボンとは何者か?
幕末に来日したアメリカ人宣教師・医師、James Curtis Hepburn
往年の女優オードリー・ヘップバーンと綴りは同じだが、発音は異なる。

私は長年「ギヨテとは俺のことかとゲーテ言い」的な読み違いだと思っていたが、 じつは本人がそう名乗っていたらしい。

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同じ綴りでも読みが違うわけ。
英語の姓は中世に成立し、綴りが固定したのはもっと後の時代。
教会や役所の書記が “聞こえたまま” に綴ったため、
同じ綴りでも発音が地域でバラバラという現象が起きた。

Hepburn もその一例である。
アメリカでは ヘボン/ヘバン/ヘバーン
スコットランドのオードリー家系では ヘップバーン


教育指導的で偉そうに聞こえる「訓令」式とは?
単に昭和12年の「内閣訓令」で定められた方式だから。
ただし、行政内部のルールなので、国民を直接拘束するものではない。

では、なぜ今も廃止されないのか。
・日本語の五十音を機械的に写せるので、教育的に便利。
・日本人は日本式で書くべきだという学会の意見も根強い。→参考
・廃止には法改正が必要で、手間とコストが大きい。
つまり、残しておくほうが便利で、政府にとってラクなのである。

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ローマ字表記の歴史を振り返ると……
どうやら言語は論理ではなく、
“人間の都合” で動いているのかもしれない。
・訓令式は「日本語として正しい」。
・ヘボン式は「世界に伝わりやすい」。
・そして政府は「面倒なことはしたくない」。
――と、そんな話のようだ。

今回の改定は、言語学的な必然ではなく、
「英語化=国際化」というきれいごとの陰で、
日本文化が静かに浸食された事例のひとつなのだろう。

というわけで、Sibuya が “スィブヤ” と読まれないために、
日本語は今日も、そっとヘボンに寄り添っている。








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