「日本人は悪い」と日本人が言ったらパラドックスである。 a | barsoのブログ

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「クレタ人は嘘つきだ」とクレタ人が言った、という有名なパラドックスがあります。
 これは「張り紙するな」と書いた張り紙が張られている話と似ていますが、今回はそのような論理的に自己矛盾している言動が、令和の時代でも大手を振って流通しているという話です。

 この「クレタ人は嘘つきだ」と言ったクレタ人は誰でしょうか。
 新約聖書の中で、使徒パウロがクレタ島に残した若い宣教者テトスにこう助言しています。「クレタ人の預言者が『クレタ人はいつも嘘つき、悪い獣、怠惰な大食漢』と言ったが、その言葉は真実であるから、彼ら(クレタ人の信者)を厳しく戒めよ」。(テトス 1:12)

E9pimeii.jpg「クレタの預言者」とは、紀元前5世紀か6世紀頃の哲学者また宗教的予言者であったエピメニデスです。彼は、自分以外のクレタ人がゼウス神の不死性を否定していることを嘆き、「クレタ人はいつも嘘つき」と詩文で表明しました。
「いつも」とはレトリックの一つ誇張法で、本当に「いつも、みんなが」という意味ではありません。嘘をつく程度が甚だしいということです。
 ところがこれを使徒パウロが「クレタ人(の預言者)『クレタ人はいつも嘘つき』と言った」と書いたため、自己矛盾のパラドックスとなりました。
 つまり、本当に「クレタ人がいつも嘘をつく」のなら、そう言ったクレタ人エピメニデスの言葉も嘘となり、その結果「クレタ人は嘘をつかない」ことになってしまうのです。

 トーマス・ファウラーは、このパラドックスは永遠に続くと説明しています。

 エピメニデスは『クレタ人はみな嘘つき』だと述べたが、エピメニデス自身もクレタ人であるので、彼自身も嘘つきである。
 しかし彼が嘘つきなら彼の発言は真実ではないことになり、結果として「クレタ人は正直者だ」ということになる。
 しかしエピメニデスも正直なクレタ人なら、彼の発言も真実だということになり、『クレタ人は嘘つき』だということになる。
 そうなればエピメニデス自身も嘘つきになるので、彼の発言は嘘だということになり、最初の発言とは逆に「クレタ人は正直者」だとなる。
 ―――つまり我々は、エピメニデスとクレタ人を、"信じられる"ということと、"信じられない"ということを交互に結論することになる。


 このように、この話は堂々巡りの自己矛盾を起こすので、「嘘つきのパラドックス」と呼ばれています。

                 ●

 「日本人は悪人だ」と日本人が言った。―――これもパラドックスか。

 日本にも「日本人は悪い、日本人は劣る」と言う日本人がいます。
 先月、岸田首相が「残念ながら日本には弱者に対する差別や偏見がある」とビデオメッセージの中で言いましたが(事実は欧米のほうがはるかに酷いはずです)、一般の日本人でも「日本はドイツに見倣え、西欧に遅れている」と日本人を劣等民族のように言い(日本の倫理観や治安、工業技術などの世界ランキングは大抵上位です)、誰か馬鹿者の一人が悲惨な殺人事件でも起こすと「だから日本人は…」と日本人全体を悪く言って得意になっている日本人がいます。
 特にマスコミや学者や作家、首長、議員の中に、そんな「反日」日本人が少なからずいて、彼らの見分け方は言動が「媚中・親韓」かどうかで分かります。

 しかし日本人が日本人を悪く言うのは「自己矛盾パラドックス」ではないですか。
 「クレタ人の嘘つきのパラドックス」と同じく、日本人を悪く言う人も日本人ですから、ここのままだと「日本人の嘘つきのパラドックス」になってしまうのですが、その自己矛盾はどう解決しているのでしょう?
 これはおそらく「自分は洞察力や正義感が並の日本人より優っているので、自分は無知蒙昧な日本人とは別の知的人種であり精神的西欧人である」と心の内で自分と一般日本人とを分別収拾し、優越感を感じているのではないでしょうか。

 優越感とは"他者より自分のほうが優っていると感じれば愉快になる感情"ですから、偉ぶるのが好きな人はどうしても他者を見下げる必要があるのです。

auG174aa.jpg (Image Creator)

 日本の知識層「リベラル」は、世界の「リベラル」とは別物です。
 政治思想には左派と右派があり、どちらもそれ自体は別に悪くはないのですが、世界では日本の左派リベラルだけにある特異な現象は、自分の国を悪く言うことに熱心なことです。
 そのためには発言の不正な切り取りや捏造、偽造までして、クレタ人以上の「嘘つき」になることがあります。自分がしたことは「多様性だ表現の自由だ」と主張し、相手がしたことは「ヘイトだ差別だ」と言い募ってダブルスタンダードを示したり、集団で大声を出して相手の言動を邪魔する言論妨害や相手を脅すための名誉棄損訴訟の乱発など、不正な実力行使で対抗者を排除しようとする傾向が強いように見受けられます。
 議員の場合は欧米で失敗している政策を導入したり、ごく一部の少数者のためにその他の大多数の安全を脅かしたりして、社会を悪い方向に引っ張っています。
 LGBT法を契機にして最高裁もそんな風潮に染まってきています(選挙のときはペケを付けたいものです)。

 それで、いまの日本では嘘つきのパラドックスのように正論と虚論邪論の主張が繰り返され、やがて日本はにっちもさっちも行かなくなり、よっちよち歩きの赤子国家になるように思えるのですが・・・さて、ろっちを向いたらいいのやら。(笑)




【備考】――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 総合的に日本のレベルを世界と比較すれば、日本はレベチです。 
例えば外国人による2023年度ランキング調査では、  

世界で最も魅力的な国ランキング」では日本が第1位。→クリック

世界で最も魅力的な都市ランキング」では東京が2位。→クリック  

国家ブランドランキング」では世界60か国中、日本が第1位。→クリック  

世界最高の国ランキング」では日本が第6位。ドイツやイギリスより上位。→クリック  

世界平和度指数トップ100」では日本は第9位(順位が低いようですが、他の先進国ドイツは15位、イギリスは37位、フランスは67位、アメリカは圏外)。  

■カテゴリー別の「社会の安全・治安」では日本は第2位。→クリック  

■米アカデミー賞は日本の2作品『君たちはどう生きるか』と『ゴジラ-1.0』が受賞しましたが、日本は定評ある倫理観や治安の良さに加え、いまや文化度の高さも世界的に認知されてきています。  

 

 青い鳥は身近にいます。わたしたちはすでに得ていて当たり前になっている幸福には、なかなか気づけないものなのですね。
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