「そこに何かがある」から、人は生きているのか。a | barsoのブログ

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 今年の10大ニュースの一つは間違いなく、大谷翔平の元通訳の問題でしょう。
 どうしてそんなことをしたのか?―――「そこにギャンブルがあるからだ」と心の中でチラッと思いませんでしたか。
 その表現は、エレベスト登頂に二度失敗したジョージ・マロリーの名言「そこに山があるからだ」と似ています。

 大谷の元通訳が巨額な金を盗んだ動機は、まず賭博に関心があったこと、そして彼もアクセスできる日常用の口座が別にあり、大谷は大金持ちで、金に無頓着で、さらに元通訳が「恐い人が家に来る(借金を払わなければ殺される)」と言えば、盗んだ金は大谷にとってはそんなに大金ではないので「自分の窃盗(横領)は赦してもらえるだろう」と甘く考えたのではないでしょうか。

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 そう思うと、「そこに甘い大谷がいたからだ」となります。
 大谷にとっては大金を盗まれたことより、信頼していた人に甘く見られて裏切られたことのほうがショックだったでしょう。そうなら「そこには甘い儚(はかな)い信頼があった」のです。
 もし一部の人が言うように、大谷が違法賭博をやって元通訳をスケープゴートにしたのなら、野球界から永久追放でしょうから、"野球少年"の大谷がそんな馬鹿なことをするはずがありません。

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 普段は善人でも悪行をするものですが、悪はどこに始まりがあるのでしょう?
 イエスの義兄弟ヤコブは、人が罪を犯す原因と結果を述べています。
 「人が誘惑に陥るのは、それぞれ、に引かれ、さそわれるからである。
 欲がはらんでを生み、罪が熟してを生み出す
」(ヤコブ1:14,15)

 罪の原因は「」に誘惑されるからだと指摘されています。「欲がはらんで」の「はらむ」は女性がおなかに子を宿すという意味で、はらむと必ず子が生まれてきます。つまり「欲」は子である「罪」を必ずはらませ、「死」を生み出すのです。

 元通訳は「ギャンブル依存症」だと言って病気のせいにしていますが、そうだとしても原因は彼自身にある「欲」であり、マロリーの言い方を真似れば「ここに欲があるからだ」となります。
 今後の人生は「死」のようなものでしょう。奥さんがかわいそうです。

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 大谷は通訳と一緒に写っているインスタグラムをこの一枚だけ残して全部削除しました。出典

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 大事な人の信頼を裏切ったと言えば、イスカリオテのユダが有名です。
 ユダはイエスと十二使徒に寄せられた共同基金の管理をゆだねられていました。ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』ではユダは右手で財布を握っています。

 ユダがイエスを裏切った理由についてはいろいろ推測されていますが、聖書は、ユダが「金箱からよく盗んで」いて、イエスを裏切る報酬として「銀30枚」を祭司長からもらうことを取り決めてからは「裏切る良い機会をうかがい続けた」と記述しています。(ヨハネ12:6、マタイ26:14-16)
 「銀30枚」の価値は時代や地域によっても違うので算出が難しいのですが、30シェケルなら1シェケルは銀9グラムから17グラムと考えられます。銀の地金価格は1グラム約134円(2023.3.29現在)なので、銀30枚は約36,000円から約68,000円です。この5倍だとしても最高35万円程度。そんなに大金ではありません。

 古代イスラエルでは30シェケルは奴隷の代価でした(出エジプト記21:32)。
 つまりイエスは奴隷一人分の金額で売られたのです。祭司長はイエスの価値を奴隷と同等にして侮蔑したのです。ユダは、その程度の金額で主人イエスを裏切ったのです。ユダは金だけが目的だったのでしょうか。

 同じ十二使徒のマタイは以前はローマの収税人だったので金計算は本職ですが、ユダが共同基金の管理者として用いられたのはイエスから「信頼」されていたからでしょう。(詩編41:9、マタイ26:23、サムエル第二16:23参照)

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  Janos Pentelei Molnar: The Thirty Pieces of Silver

 大谷翔平の元通訳は高給取りでした。球団からの年収は約2,780万円で、大谷からの年収は約8,400万円という推定があります。https://takeoff-site.jp/mizuharaippei-income/
 MLBの通訳は年収800万から1,000万円が相場だそうなので、彼は破格の高収入があり、知名度と好感度も高く、「ここに運があった」のですが、それをすべてを失ってしまいました。

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 さて、「そこに山があるからだ」という言葉は世紀の大誤訳だそうです。
 マロリーはエベレスト世界初登頂に二度挑戦したのですが、三回目に行方不明になっています。二度目の挑戦からに帰ってきたときに、一人の婦人から「あなたは(続けて登頂に失敗しているのに)なぜ登りたいのですか」と質問され、マロリーが答えたのが原文では「Because it's there.」でした。
 直訳すれば「それがそこにあるからだ」で、「それ/it」とはエベレスト山のことです。
 マロリーはちょっと嫌味な質問と感じてイラついたので、そんな投げやりな答え方をしたようですが、しかし「それ」が「山」と一般名詞に邦訳されたため、武道を極めた無心の侍が言うような哲学的な言葉のように解釈され、何にでも応用できる便利な名言となりました。

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   考えてみると、人はマロリーの名言通りに生きていませんか。
 そこにやりたいことがあるからだという目的意識の強い人もいるでしょうし、また、そこに道があるからだ。そこに仕事があるからだ、そこに居場所があるからだとか、あるいは、ここに家族がいるからだ、子どもがいるからだ・・・と、なんとなく自分の意思と周囲の状況と運命に従っているかのように生きている人もいるでしょう。

 私バーソの生き方は、いまは「ここに自分が在るからだ」ですかね。
 でも、これだと自然体ですが、無為無策になりそうです。
 では、せめては無意思索で日々を過ごしていきたいと思いますね。


  ※画像は3枚目以外はMicrosoft BingのImage Creatorによります。