小なることも大なることも、人は測り、計り、謀って、世の中を作ってきた。 | barsoのブログ

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 古代の人は地球の大きさをどうやって測ったのでしょう?

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 巻き尺メジャーで測ったのではないことは確かですが、今回は、小さなものを手指で測る方法や、地球という大きなものを頭で測った昔の人の話です。

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クマ「ご隠居、俺はちょっと大きな家電品や家具を買うときは巻き尺がないと困りますね。なんせ、我が家は猫のひたい。1センチ違うと入らない場合があるので
隠「熊さんの財布には小銭が入っているだろう。1円玉は直径2センチだよ」
クマ「1円玉を沢山並べるのは大変です
隠「千円札なら長さ15センチだよ」
クマ「現金払いはあまりしねえです。カードなら簡単で、ポイントも付きますから
隠「カードなら縦5.5センチ、横は8.5センチ。特売セールなどのお知らせハガキなら横幅10センチ。500ミリリットルの小さいペットボトルは高さ20センチだ」
クマ「外を歩くときはペットも連れてないし、たいてい手ぶらです
隠「手を使えばいい。親指の先から中指の先までが約18センチ。この親指から中指までの形から『尺』という象形文字ができた」.
クマ「なるほど、形が似てますね」
隠「ただ、現代は一尺は約30センチと定められている。1フィートもほぼ同じ30センチだが、それはどちらも身体の長さを元にしているからだな」
クマ「一尺は1フィートとフィットしているですねえ
隠「うむ、握りこぶしは人差し指から小指までで、約8センチひじから中指の先までは約45センチだ」
クマ「ひじから指先までは45センチか。これは覚えやすいわ
隠「45センチの単位は古代イスラエル人も使っていて、『キュビト』と言う。ノアの箱船は長さ300キュビト、幅50キュビト、高さ30キュビトと聖書に書かれているので、メートルだと長さ133.5メートル、幅22.3メートル、高さ13.4メートルになる。これは外洋船のクイーン・エリザベス2世号の半分よりやや短かく、排水量ではタイタニック号にほぼ等しいそうだ」
クマ「けっこう大きいんですね


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   本当は船型ではなく、ただ水面に浮けばいいので、角ばった箱型をしていた。

 
隠「大きいと言えば、熊さんや、地球の大きさを世界で最初に測った人は誰か知っとるかね」
クマ「ええと、ガリレオじゃないですよね
隠「古代ギリシャの学者エラトステネスだ。彼はエジプトのシエネという町では夏至の日に太陽が真上に来ることに気づいた。そこでシエネから北方に遠く離れたアレクサンドリアに棒を鉛直に立て、同じ日の同じ時刻に棒の影を測って太陽との角度を調べたら、角度は7.2度であることが分かった。熊さん、7.2度は360度の50分の1だよ」
クマ「360度は円だから、その50分の1ということは、分かった、シエネとアレクサンドリアの距離を測って50倍すれば、地球の外周が分かるんだ
隠「おっ、今日はドえらく頭が冴えているな。その通り。エラトステネスは人を雇って、その二つの地点の距離を歩かせて測ったら5千スタディアと見積もられた」 

クマ「キロで言うと、どのくらいですか
隠「単数形は1スタディオンというが、約180メートルとされているので、アレクサンドリアとシエネ間はその5千倍の約900キロメートルになる。地球外周は、その50倍だから約4万5千キロと計算された」

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クマ「そのギリシア人は頭で測ったというわけだ
隠「実際の赤道1周は約4万キロなので、13パーセントほど大きいが、まあ、紀元前230年頃のことだから、たいしたものだなあ」
クマ「うわっ、奈良平安時代より古いんだ
隠「ちなみに、古代ギリシアの陸上競技は1スタディオンの直線コースで行なわれていた。競技場はスタディオンを基準として設計されたことから、『スタジアム』という言葉が生まれたのだよ」

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 19世紀に再現されたエラトステネスの世界地図。3大大陸のおおよその形は合っている。

クマ「昔の人が足で測ったことを考えると、あの伊能忠敬さんも、さぞ足に豆ができたでしょう。マメに歩いたんでしょう
隠「お前さんは駄洒落は割合マメだねえ。伊能忠敬は性格がマメだったぞ。常日頃から69cmの歩幅で歩けるよう訓練していたそうだ。測量旅行の最初は目印を付けた竿を2地点に立てて数人でその間を歩き、誤差をなくすために歩数の平均値を出した。2回目以降は、縄や鉄鎖を張って測り、平地では車輪と歯車の付いた箱状の測量器を使った」
クマ「地面は凸凹してるので、だいぶ誤差があったんでしょうね
隠「いや、北極星を観測して緯度を計算し、測量結果が正しいかどうかも確認して正確な日本地図を作った。熊さんは、伊能忠敬の最初の目的は地球の大きさを測ることだったのを知っとるか」
クマ「えっ、そうだったんですか
隠「忠敬は、緯度1度分の距離が分かれば、360倍すると地球の大きさが分かると気づいた。だから『地図を作りたい』と称して幕府の許可を得、江戸からはるばる蝦夷の地、いまの北海道まで行ったのだが、そうやって割り出した数字と現在判明している地球外周との誤差は1000分の1だそうだよ」
クマ「1000分の1ということは、1000メートルで誤差はたった1メートルか。日本人もすごいわ

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 シーボルトによる日本図"NIPPON"初期の版(1850年頃)の付図

隠「伊能図があまりにも正確だったため、ドイツ人医師のシーボルトが謀った」 クマ「えっ、なにを測ったんですか」
隠「盗みを謀ったのだよ。『伊能図とヨーロッパの最新地図と交換しよう』と高橋景保に持ち掛け、幕府禁制品だったその写しを手に入れた。高橋景保は伊能忠敬に天文学と測量法を教えた先生だが、悪事が露見し、地図を渡した高橋景保は死刑、シーボルトは国外退去となった」
クマ「禁制品を持ち出したってことは、シーボルトはスパイだったとか
隠「そのようだ。シーボルトは帰国後、伊能地図を載せた本『ニッポン』を出したが、それ以来だ、欧米列強が『日本開国』競争を始め、アフリカ、中東、インド、東南アジア、太平洋諸島、清国の次の植民地として日本を狙いだした」
クマ「うわっ、極秘情報が漏洩して侵略されやすくなったんだ
隠「世界で『スパイ防止法』がない国は日本だけだ。リベラル勢力が反対するせいだが、平和を叫んで、平和を危うくさせているのは、国の将来を "計る" 頭がないからだろうなあ」
クマ「ご隠居も熟々年齢ですから、小さな計画だって "計る" のは無理っしょ
隠「そう、あたしは頭に『パ』の字が付く "ぱかる" からなあ」
クマ「お、クルクルパーの "パ" が付くと自覚してますね
隠「いや、あたしはメジャーな熟慮人間。大の得意は、慮(おもんぱか)るだよ」