大手町のゴースト2024 59 警察そのもの | 新庄知慧のブログ

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私のいろんな作文です。原則として日曜日、水曜日および金曜日に投稿します。作文のほか、演劇やキリスト教の記事を載せます。みなさまよろしくお願いします。

59

 

 

 

 

 

「え?」

 

 美男刑事が聞き耳をたてました。

 

「課長、何とおっしゃいました?昨日、朝倉さんが部長と・・・?」

 

「え、はい。そうです、昨日、朝倉さんは、部長と、神田のホテルに」

 

「ホテルに・・・しけこんだ。ラブホテルですか?」

 

美男刑事は思わず懐からメモを出し、

 

「は、はい」

 

という課長の返事を聞き、刑事はメモに書きつけながら、首を横に振る。

 

「ということは、昼間の聞取りのときの課長様のご発言は、嘘だったのですね」

 

「嘘・・・」

 

「部長に女性関係はない、神田では熱田くんと飲んだだけ、と語られたでしょう?」

 

「まあ・・・」

 

「まあ、って曖昧な・・・」

 

「つまり偽証なのだなあ」警視があきれた、というようにいう、

 

「信用できない御仁だ」

 

「まってください、これには事情が。つまり私も宮仕えの身でして、何もかもすぐにいうわけには・・・」

 

「何かをおもんばかって、いわない」

 

警視は課長の目を見る、課長はうなずく、警視はまた首を横に一回振る。

 

「それがまさに偽証です」

 

課長は全身の力が抜けました。その様子にかまわず、警視が。

 

「不倫とかなんとか逞しい想像なさったんでしょうが、全然、違う。朝倉さんは、一種の捜査協力をしていたのでしてね、

 

で、そこに、あなたと関係のあった可愛い部下の危険思想の若い男がですねえ・・・おっと、まあいい。それは、まあ、いい・・・」

 

「よくないですよ!何の話です、そっちこそ、そんな曖昧な」

 

課長は警視につかみかかった!

 

警視は暗い表情になり、課長の手をゆっくり掴んだ。やさしげに見えて、その手には一種の凶暴な力がこもっていた。

 

「公務執行妨害。課長さん。こちらは警察でしてね、捜査上、曖昧も許容される。

 

こちらからいうのではなく、こちらは曖昧なまま、課長ご自身から、おっしゃってもらう。そういう権利があるんです。それが公権力ですな。

 

・・・で、少し本題に入りますが、あのベッドの上の方」

 

警視はうつぶせの初老の男をあごで指しました。

 

「課長。なぜ、あなたは、あの方を殺したんですか?」

 

いよいよ返す言葉もなかった。

 

おかしい。この連中はおかしい。こいつらが、警察のわけがない。これは、どういう陰謀だ?

 

凍りつく思いでいると、またいつか聞いた、伝導音の声。

 

- 違うんだ、おかしい連中ではない。警察だよ、課長。これは警察そのものだ・・・

 

 

・・・・つづく