新庄知慧のブログ

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私のいろんな作文です。原則として3~4日に一度投稿します。作文のほか、演劇やキリスト教の記事を載せます。みなさまよろしくお願いします。

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「みんな暴走族?目撃者はいないのに、そこは、わかるんですか」

 

「ああ」

 

「どうして。証拠でもあるんですか」

 

「わかるんです」

 

「理由は・・・」

 

警官は、また黙秘権を行使した。

 

不愉快そうな沈黙のあと、「傷にさわるだろう、安静にしていろよ」と心にもないことをいって、また黙り込んだ。

 

私がパトカーで運び込まれたのは、あの、マリがかつぎ込まれた横浜中央病院だった。

 

病院に私を引きわたすとき、警官たちは私に向かって、また諭すような重々しい、いい方で、

 

「では、いいですね。これでわれわれは行きます。後日また、何かおたずねするかもしれません。

 

今日のところは、これで。お大事に。くれぐれも、お大事に」

 

私はまたうんざりして、

 

「ええ、ええ。私のための発砲ですから。大事にします。

 

決して警察を批判したりしません、大丈夫です、大事にします」

 

私のこのいい方は、また警官たちの気にさわったらしい。

 

彼らの目が、一瞬、火を噴いたように感じた。

 

そうして、二人の警官は、以後の手続・・・今回の発砲に係る事後処理

 

・・・本当に気の毒なことをしたが、本当にやむをえないことであり、警察に非はなかったとする処理のことを、

 

きわめて事務的に説明し、それからきわめて軽い会釈をして、その場を去った。私はまんじりともせず、肩をすくめて二人を見送った。

 

・・・

 

「・・・大丈夫ですよ。三日もすれば、もと通り歩けるようになる」

 

初老の、小柄で、優しそうで、しかし、万事にやる気のなさそうな医師が、

 

おおざっぱな大腿部治療を終わって、ベッドに横たわる私に、いった。

 

何がおかしいのか、始終、笑みを顔から絶やさなかった。

 

「ところで、ちょっと、靴下をぬいで、足の指のあたりをみせてもらえませんか」

 

と、医師は妙なことを、いった。

 

いわれるままに、素足を医師に見せると、それを観察し、「大丈夫、これなら、当分、大丈夫」といって笑った。

 

「何が大丈夫なんです」

 

「水虫です。私は、専門でもないのにそちらの研究もしていまして、むしろそちらに関心が深くて。

 

ちょっと、足の皮を、ほんの少し、いただけませんか。標本にするのですが」

 

私が許可すると、医師はピンセットで、足の親指の、剥がれそうになっていた皮をとって、大事そうにシャーレへと移した。

 

私は、ばかばかしくなった。

 

マリの担当だったアル中医師といい、この医師といい、ピントはずれで、どこかいかれていると思った。

 

診察室を出て、私は足をひきずりながら廊下を歩いた。

 

確かに歩行に大きな障害はないが、三日で良くなる傷とも思えなかった。

 

しばらくは、リハビリの日々か。

 

とにかく、タクシーでもひろって、乗り捨ててきた自分のクルマのところへ帰ろうと思った。

 

・・・・つづく