大手町のゴースト2024 40 人工の断崖 | のむりんのブログ

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私のいろんな作文です。原則として日曜日、水曜日および金曜日に投稿します。作文のほか、演劇やキリスト教の記事を載せます。みなさまよろしくお願いします。

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「・・・・」

 

「誰だと思います?」

 

「さあ。あ、いや。奥様でしょう、きっと。それしかないでしょう」

 

「それが、違うんです。本当にご存知ありませんか?」

 

「ありません」

 

「そうですか・・・じゃ、私のほうから、ずばり言わせてもらいますが。朝倉さんですよ、課長」

 

 刑事は課長の目を覗き込みました。課長の目には狼狽の色がありありでした。

 

「朝倉って、・・」

 

「ご同僚の課長さんとうかがってます」

 

「仕事の打ち合わせか何かかな・・・」課長は精一杯、とぼけます。

 

「かもしれません。ビジネスホテルでね、会談なさったようで。

 

しかしそのホテルは、神田○○ホテルでして、色々のビジネスに使えるらしい。課長、そのホテル、ご存じありませんか」

 

「名前なら知ってますよ。でも色々のビジネスというのは、どうも何のことだか・・・」

 

「例えば恋愛」

 

「・・・」

 

「課長、部長はですね、その○○ホテルで亡くなったんです」

 

やっぱり、と課長は思ったが口には出さなかったのです。しかし顔にでてしまっていたのではないかと思い不安になる。

 

「何かそういう噂はなかったのですかね、大変失礼ですが、部長と朝倉さんに」

 

「いいえ、ぜんぜん・・・」

 

「朝倉さんは、今日は無断欠勤だったそうですね、入社以来はじめての。その後、連絡はとられたでしょうか?」

 

「いいえ。それは、私のほうでも心配しているんです」

 

「課長」

 

「は?」

 

「何も隠してはいらっしゃいませんよね・・・?」

 

「もちろんです・・・」

 

課長の声は少し力がなかった。車の外には、次々に新築され、天を突きそびえたつビルたちの姿が突然に見えてきました。

 

星ひとつない漆黒の夜空に向けてそそり立つ、それら人工の断崖には、ほとんどの窓という窓に、星にも優るキラキラの、無数の光が輝いていた。

 

その光はさまざまな色。エメラルド、レモン、レッド、ブルー・・・

 

ぴかぴかと瞬いて、瞼を突き刺し目にしみる。

 

それら光の間を、より眩しい真っ白な光を点滅させて、ビル壁に露出したエレベータたちが移動していました。

 

「きれいですね」

 

刑事がぽつんとつぶやいた。

 

 

・・・・つづく