大手町のゴースト2024 41 何をいっているのだか、さっぱり | のむりんのブログ

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私のいろんな作文です。原則として日曜日、水曜日および金曜日に投稿します。作文のほか、演劇やキリスト教の記事を載せます。みなさまよろしくお願いします。

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「ああ、全く・・・」と課長。話題が変わってほっとしました・・・

 

「どんどん街が変わっています」刑事の声は気のせいか、うっとりした音色で響きます。「我々の目指す交番は、あの一番新しい綺麗なビルの中です・・・」

 

「そうですか。まあ、あれだけ大きなビルですから、中に交番も必要でしょうなあ」

 

世間話風に、課長は話を受けます。交番が必要だなどとは思ってもいないのですが・・・

 

すると刑事は、遠くを見るような目で話すのです。

 

「ここいら辺は、さかんに再開発がすすんでいるようです。あまり詳しくは存じませんが、課長の会社のビルも、もうすぐ再開発にかかるようですね」

 

「ええ。それで、ここのところ忙しいですよ、はは」

 

  ビル開発のことに話が移行した、とにかく部長と朝倉課長の件から話題が外れたのはいいことだと、課長は思った・のです・・刑事は続けます。

 

「湯水のように金が注ぎ込まれて、再開発がすすんでいると聞いています。課長さんのビルもご同様でしょう。

 

全国一律の公共事業推進は国の膨大な借金を増やすだけだから凍結方針、その一方で、

 

都市部にピンポイント的に税金が注ぎ込まれていて、その現実は、しかし一般の人々の、あまり知らないところらしい」

 

「はあ」

 

「しかしそうでもないかな、私が知っているくらいだから。で、次々に建設されるビルには、そこから美味しい汁を吸おうとする皆さんが集まってくる」

 

「・・・」

 

「これも、週刊誌的な話ではあります、そうでしょう?」

 

「ええ。まあ。そうでしょうか?」

 

「そうでしょうかって、課長、いつも曖昧ですね」刑事は笑う。課長を試すかのように・・・「何もご存知ありませんか・・・」

 

「・・・・」

 

 刑事は課長の顔をまた覗き込みます、その顔は、今度は蒼白いネオンの光で浮び出された冷たい笑顔でした。

 

「大きな、綺麗なビルばかりですね、しかし、不謹慎にも私は思ってしまうこともあるんですよ、いや、そういう噂があるんです。

 

これらのビルは、究極の規制緩和ビル、すべての建築基準の拘束を逃れた、自由のビルたちです、そうして、今までにない高層の街が現出します。」

 

刑事は肩をそびやかす。課長には彼が何をいっているかわからない。

 

「わかりませんか?」

 

刑事が呆れた顔で課長を見る、その顔は今度は黄色い光に充たされています、

 

「・・・たとえば地震とか、火災とか、そんなことへの対策からも自由なんです」

 

「え?」

 

「それと引き換えに、巨額の富を手にいれる人々がいる。いや、そういう言い方は陳腐に過ぎますでしょうか」

 

「何をおっしゃっているんだか、私には、さっぱり・・・」

 

・・・・つづく