大手町のゴースト2024 38 刑事も尾行される | のむりんのブログ

のむりんのブログ

私のいろんな作文です。原則として日曜日、水曜日および金曜日に投稿します。作文のほか、演劇やキリスト教の記事を載せます。みなさまよろしくお願いします。

38

 

 

 

 

 

 

「いや、その。私も事件の容疑者の一人と思っていたものですから、いや、しかしあんな連中が警察のわけがない、いや失礼、

 

いや助けてもらって本当にありがとうございます。まったく、刑事さんのおかげで・・・」

 

  ・・・助かった。しかし、頭が少し冷静になると、新たな疑問が浮んだのです。

 

この刑事、「たまたま」ここを通りかかったという。そんな都合よい偶然があるのか?

 

「どうしました?」

 

課長の会話の不自然な「間」を見逃さずに刑事はたずねました。

 

「いえ。本当に助かりました。ありがとう。しかし一体あの連中は何者なんでしょう」

 

「金品を要求されましたか?」

 

「まあ、そのようなものを・・・」

 

「そのような。何です。課長さん、どうも発言に曖昧さがありますねえ、昼のときから」

 

「失礼。書類です。会社の書類・・・」

 

「書類・・・」

 

刑事の目が光りました。課長は、例によって、「汚職」云々をいうのは躊躇しました、

 

「ええ。ただ何の書類かわからない、ただ、「書類」を出せと。どうも頭のおかしな連中です、しかもいきなり切りつけてきて・・・」

 

「その書類とやらに、本当に、お心あたりはないんですか」

 

「ええ、ないです・・・」

 

  また気まずい「間」。刑事は課長の顔を覗き込みしばし沈黙しました。そして、

 

「とにかく、少しお話をうかがわせていただきたい。こんな夜分に大変申し訳ないですが、事情が事情です。お宅の身の上も安全かどうか不安です。ちょっと同行願えませんか」

 

「え。ええ、まあ・・・・」

 

「お時間はとらせません、すぐ近くの交番でうかがいます。・・・それに、私も課長にご相談したいことがあったのです」

 

「私に、相談・・・何のことです?」

 

刑事は声をひそめました。

 

「実は、私は昼の捜査以降、今はもう非番です。私的な友人と食事がすんで、帰ろうと思っていたところです。

 

しかし、どうも、妙なことが私に起こっていまして、帰ったものか迷い、ここらを歩いていたんです、

 

そうしたら、課長の遭難現場に遭遇したものですが・・・」

 

 刑事は背後をあごでかすかに指しました。

 

「実は私も、どうやら尾行されているらしい・・・」苦笑いし、軽く肩をすくめました。「見えますでしょう?あれはひょっとして、課長のご命令でしょうか」

 

刑事の背後5メートルほどのところの電信柱の影から、黒い人影がちらりと見えました。

 

女性。

 

派手派手しい髪型。見覚えがある姿・・・

 

・・・・・つづく

 

 

 

 

音楽が添付できるようになりましたね!歩く 

とりあえずこれ。いきます。

 

ブレヒトの三文オペラの中の曲。

 

 

これをドアーズもやってるわけです。

 

ドアーズのアルバムでは、次にこの大ヒット曲が続きます。