大手町のゴースト2024 30 いってしまった人 | 新庄知慧のブログ

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私のいろんな作文です。原則として日曜日、水曜日および金曜日に投稿します。作文のほか、演劇やキリスト教の記事を載せます。みなさまよろしくお願いします。

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「おちつけ・・・ふん。ひょっとして何ですか、課長が主犯ですか?

 

いえ、わかります、あれだけ辛い目にあってたんですから、殺してやったって、

 

いっこうに構わない、課長が殺ったってあたしは、もっともだと思う。ねえ、そうなんでしょう?

 

だって、あてつけみたいに後輩の、それも女を、すぐ横の花形課長席に抜擢して、え?

 

まるで総務課長いじめじゃないですか。わかりますよ、その気持、

 

おまけにあの出来損ない新人を、花形課長から押しつけられて苦労させられて!」

 

課長は狼狽のあまり、天野氏の口をふさごうとしました、

 

「何です!何ですか、この手は!」課長の手をはらいのけ、「私を信じてください。私は課長の気持がよくわかる!

 

いいんですよ、殺しくらい。やってしまってバンザイだ。

 

お人好しもいいかげんにしなさい、少しは手荒なことでもしなきゃあ、

 

さいごは、私みたいになっちゃいますよ!」

 

ほとんど涙声になって、天野氏は叫んだ、

 

「人生、廃業!」

 

「何をいってるんです!」

 

課長はめまぐるしく考えました。どうしたらいいのだ。

 

「やってませんよ僕は!何いってるんです。熱田君から変な電話があったというだけでしょう?彼はどうかしてたんです、それだけですよ」

 

「だって昨日、課長は熱田と飲んでたっていうじゃないですか」

 

「そうですよ、だからどうしたっていうんです」

 

「だからそこで、指示だってできるでしょう」

 

「何をまた、馬鹿な・・・」

 

「馬鹿って、なんです。私は何もいってませんよ、今日の昼間だって、刑事に何もいってませんから、安心してください」

 

「別にいってもらってもかまいませんよ、根も歯もないことですから」

 

「あ!」

 

「何です」

 

「そういえば、休みだったな、あの人。こんなことは、彼女、入社以来はじめて」

 

「え」

 

「朝倉ですよ、あの、課長の憎っくき後輩女!ひょっとして、あの女もいまごろ・・・」

 

天野氏は、はからずも私は次の事件の真相を解明してしまった、といわんばかりの恍惚と茫然の目で課長を見ました。その目は完全なアルコール酩酊状態でした。

 

つきあいきれない・・・

 

課長は立ち上がり振り向いて、後ろの席の2人に弁明しようとしました、

 

「違います、ちゃんと調べればわかります、この天野氏は、とんでもない勘違いをしている!」

 

そういおうとしました・・・

 

  しかし二人は知らん顔していた。何も話などきいていなかったという顔だった。課長とは視線をあわせようともしません。

 

「・・・・」

 

・・・・つづく