大手町のゴースト2024 31 饒舌がとまらない | 新庄知慧のブログ

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私のいろんな作文です。原則として日曜日、水曜日および金曜日に投稿します。作文のほか、演劇やキリスト教の記事を載せます。みなさまよろしくお願いします。

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ここで何をいっても無駄?刑事の尾行を知っていたなどといったら、彼らのメンツをつぶし、逆上させ、かえって不利なことになるかも・・・

 

「どうしました、お知り合い?」

 

  酩酊声で天野氏がたずねました。

 

「いえ・・・」

 

振り向き、もとの席に座り、わかりました、天野さん、貴重な情報ありがとう、

 

あした、よく検討しますから、その話はもうよしましょう、もう帰りましょうとなだめましたが、

 

まだまだ、もう一杯飲みましょうと天野氏はきかず、仕方なく課長はつきあい、面白くもない馬鹿話をしました。

 

そのうち尾行の二人連れは先に店を出ていきました。

 

捜査本部に報告でもするのだろうか、これで話はややこしくなる・・・やけになり、課長もしたたか酒を飲みました・・・

 

「何てことだ!」

 

店を出て、天野氏とやっと別れ、やりばのない怒りが噴出しました。

 

もう今夜は尾行がいようがいまいが、知ったこっちゃないという気分になったのです。

 

銀座場末のひなびた飲み屋街を、むかつく胸をかかえて、やや千鳥足になって、しばらく、でたらめに、課長は歩いたのです・・・

 

場末のネオン街の、そのまた場末の暗い通りに来ました。初めて来た通りで、迷子になったのに近い。駅はどっちの方角だったろう?

 

裏通り。

 

そこはネオンの街から一本か二本、裏手の暗い通り。道端に、大きな、ゴミのポリバケツがいくつか並び、

 

よりそって、ゴミで膨れ上がった半透明のビニール袋が積まれているのです。

 

廃棄され、潰されたり、潰れかかったダンボール箱が積まれているのです。

 

不意に課長は立ち止まりました。

 

背後に誰かいる・・・・

 

課長は振り返りました。

 

そこにいたのは、あの二人連れでした。

 

「あ!いやあ、どうも」

 

課長は思わず会釈してしまう。やや呂律のまわらない舌で、弁明をはじめてしまう。

 

「さきほどは、聞き苦しい変な話を聞かせてしまって!

 

私のとなりにいた人は、実は私の部下でして、妙な話をしてましたが、あれは違うんです、きっと。

 

いや、調べてもらえばわかります」

 

しかし二人は無表情のまま、立っているまま。課長は焦る。

 

「熱田くんが・・・熱田というのはご存知かと思いますが、今日、無断欠勤した私の部下でして・・・

 

熱田くんが変な電話をしてきたのは、きっと熱田くんの勘違いでして、

 

それから、私が部長をどうこう思っているといってましたが、あれは、あの部下の、

 

まったくの思い込みです!事実はまったく違うんですから!」

 

饒舌そのもの。しゃべりつつ、不安が増し、ますます饒舌になるのが止められない。

 

 

・・・・つづく