GO HOME~実家に帰らせて頂きます♪~33
~ 33 ~「それはいいんだけどさぁ、ミオ。あんたも含めて、あたし達には"実家"ってやつがすでにないじゃないか」邪美の言葉に、静香、烈花、アティーシャまでもが頷いている。───── それなんだけどね ───── とミオは静香とその腕の中で至福の表情を浮かべているゼルナに笑顔を向けた。「あ!もしかして女子会に使っているゼルナの空間!」静香もそれには直ぐに気付いて、楽しそうな声を上げた。───── あそこなら静香ちゃん達も住んでたっていうし、 私達皆ゼルナ様から扉の魔道具貰ってるから出入り自由だし、 だけどそれを持って無い者は絶対に入れないじゃない。 だから、ゼルナ様さえ宜しければあそこを "私達の家"にさせてもらえないかなと思って ───── 「もちろんいいわよねゼルナ!」───── 静香がそうしたいなら僕はかまわないよ 元々あそこは静香とカオルの為に作った空間だからね ───── 静香が喜んでいるのに、ゼルナがそれに異を唱えるはずもなかった。───── ありがとうございますゼルナ様、静香ちゃん。 それでね、今夜私がシグマにある条件を突き付けて今度は"私達の家"に籠るから、 皆も私に付き合うってことで同じ条件を付けて 一緒に"私達の家"に引き籠ってほしいの ───── 静香達が再び頷くのを見て、ミオも、ありがとう、と言いその条件についても話し始めた。───── 突き付ける条件は、シグマが"思変の魔道具"を完成させて 今の謝った魔戒の人達の思い込みを解消すること、 っていうのでどうかしら ───── 「なるほどね、シグマに今回の責任を得意の魔道具で取らせるってことだね」───── ふふふ それだけじゃないの そこで皆に一緒に籠ってもらうことが大切なのよ ───── それからミオが語ることに一同は多いに納得した為に、なんと"皆で実家に帰らせて頂きます"状態となってしまったのである。ちなみにカオルは起きる気配がまったくなかった為、ゴンザに事情を説明し鋼牙が帰る前に寝ている姿のままゼルナによって"私達の家"に運ばれたのだった。その日の夜から女子会メンバー達はセシルと我雷以外の、ミオ、邪美、烈花、静香、カオル、そしてアティーシャが通称"私達の家"となったゼルナの空間に引き籠っているのだ。もちろんこの事態に巻き込まれた男性陣も黙ってはいなかった。速攻、漣山に戻っていたシグマの元を訪れまたもや一悶着起こした挙句、とにかくシグマに魔道具を作らせることが先決だ、と見張りも兼ねて指令以外の時間は漣山に詰めているということだった。そしてやっと目覚めた遼生が何も知らずに漣山に来てしまった為に、アティーシャが慌てて事情を説明しようと"私達の家"を飛び出して来たという状況なのだ。『だったら、さっさと布道シグマに魔道具作らせなさいよ!!』しっ!しっ!とアティーシャが鋼牙達を威嚇しているところに、今度は遼生の代わりにネフィスの指令に出掛けていた優斗と永斗が叫びながら駆け戻って来た。「鋼牙さん!大変です!!例の噂が凄いことになって更に拡散されています!!」「あっ・・・遼生さん?!!!」カオルが居ない為にすることがなかった優斗と、遼生の代わりをすると言っていたシグマが魔導具作りに入った為に更にその代わりをすることになった永斗がコンビを組んで、遼生に出されるはずだった難解な指令に行かされていたのだ。そこに居た遼生にやっと気づいた優斗と永斗が、しまった!、という顔をした為に、遼生が今まで以上に訝しそうな表情になった。「"例の噂"とは何だ?」『わぁぁ~もう~~~~だからリョウちょっとこっちに来て!!』アティーシャが必死に遼生の腕を引っ張るが、翼が答える方が早かった。「"お前と鋼牙が愛し合っている"という噂だ」「・・・・・」遼生は意味が分からないという顔で、マジマジと鋼牙の顔を見ている。鋼牙は苦虫を噛み潰した様な表情で、ふいっと顔を背けた。「翼・・・・・お前でもそんな冗談を言うんだな・・」遼生は何とか引き攣った顔でそう言うが、そこに零がトドメを刺す。「いやいや、マジだって。鏃雲達の術にシグマがちょっかい出したらしくてさ、マ・ジ・で"鋼牙と遼生の禁断の愛"ってやつになってるんだぜ」そうだよなぁレオ、とやはりちょっと及び腰になっているレオに無理やり話しを振る。「え、え~と・・・・信じたく無いと思いますが・・事実です・・・」「はぁ????」真実を聞かされて驚愕に目を見開いた遼生は改めて鋼牙の顔を見てから、ざざざっと凄い勢いで数メートル後退り、はぁぁ~~~~~~、と今度こそ本当にその場に蹲った。『ちょっとリョウ!大丈夫?!』アティーシャが慌ててそんな遼生に駆け寄るが、遼生はとても直ぐには動けそうにない。何しろ寝起きでもう3日はアティーシャの瘴気を貰っていないのだ。それに加えて今のもう何と言ったらいいのか分からない衝撃で、生気が半分以上抜け出してしまったようだった。鋼牙はそんな遼生をちらりと見下ろしてから、どうしよう?、と動きの止まっている優斗と永斗に話しの先を即した。「それで、噂がどうした?」「え?あ!え~と・・」2人は戸惑った顔を見合わせてから、衝撃の事実を知って蹲っている遼生にチラチラ視線を向けながら、それでも意を決して口を開く。「その、例の噂は消えるどころか様々な憶測が加わって、益々広がって行ってるようなんです」「憶測って何だよ?」恐る恐る報告を始めた優斗に、零が鋭いツッコミを入れる。「それが・・・」優斗は永斗はもう一度顔を見合わせてから、「あの式典の後、鋼牙さん達がずっと漣山に来ていることで、鋼牙さんと遼生さん達だけではなく、零さんや翼さんやレオさん、それにシグマさんや自分や永斗まで、称号騎士はその・・・何て言うか・・・皆そういう関係だとか・・・・」「あ!でも、カオルさんには逆に同情が集まってるみたいで、"黄金の翼を応援する会"なんてのも若い人達の間で出来始めてるみたいでした」と一気に言い切った。「「「「 ・・・・・・・・・・ 」」」」すると零も遼生同様ざざっと鋼牙達3人から離れ、「レオ!お前は元老院に帰れよ!!最高位法師がいつまでもさぼってるんじゃねえ!それに翼!閑岱の守護騎士が閑岱に居なくていいのかよ!!」とレオと翼を指差して怒鳴り始めた。「零!お前こそ用も無いのにいつまでここに居るつもりだ?!!」「それこそ鋼牙もだろうが!!」「俺はカオルを待っているだけだ」「だったら家で待てよ!俺がシグマを見張っててやるからっ!!」「優斗くんは遼生さんが復活されたからもう大丈夫ですよ。そして永斗くんも僕が居ますから、たまには漣山の外を色々見てきたらどうですか?」「レオ!自分だけ居座ろうとするのは卑怯だぞ!!永斗、それに優斗、俺の代わりに閑岱の守護に行ってくれ!!漣山は俺が待ってやる!」「翼、それは守護騎士として有るまじき姿ではないのか」「だったら鋼牙!お前でも俺は別にかまわんぞ!!」「断る」「だぁ~~とにかく、誰かここから出て行けよ!!俺には静香っていうめちゃくちゃ可愛い嫁さんが居るんだからな!変な噂に巻き込まれる筋合いはないからな!!」「それを言うなら俺もだ!!邪美は世界一の良妻だぞ!!何故男など相手にする必要がある!」「俺はカオルに誤解されなければそれでいい。お前達は帰れ」「僕は烈花さんが心配なだけです!烈花さんの顔を見るまで帰れません!」今度は漣山から誰が出ていくかという、根本的解決には程遠い事で諍いを始めた4人に、優斗と永斗は、あ~やっぱり、ともう最早諦めている溜息を溢し、シグマに命じられて陰からこっそりこの様子を伺っていた朝陽達は巻き沿いにならないよう早々に逃げ出していった。