その理由を教えて(2-1) | ななちのブログ

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馬車馬のごとく働く社会人ですので、更新スピードは亀ですが、よろしければお読みください☆

「……………。どうしたものか……。」

 

 TBM。

 順調に行き過ぎた撮影の結果、社さんの計算よりも十分に時間の余裕をもって訪れたテレビ局。

 俺が来る前の撮影が押していたらしく、なんと待機時間が1時間もある。

 社さんから45分間の休憩を言い渡された俺は、はやる気持ちをおさえるつもりで、人通りの少ないお気に入りのスポットに足を向けた。

 

 しかし、そのお気に入りスポットには。

 確かに人は一人としていなかったのだが………。

 

 ずんぐりむっくりの真っ白な身体で真っ赤なトサカのついた頭の、ニワトリがいた。

 

 そして、そのニワトリは……。

 

「くっ、暗い………。」

 

 自然とそんな言葉が口から零れ落ちるほど、どんよりとした暗いオーラを充満させていた。そんな彼の背後に巨大なブラックホールまである。

 

「………………。」

 

 思わず立ち去りたくなるほどの暗黒オーラをまき散らす姿を見て、俺の足は完全にその場に固まってしまった。

そして、ふと思い出す。

 

 俺が苦しむとき、彼はいつも現れてくれた。

 

 日本語で分からないことがあるとき。

 『恋』や『愛』が分からないとき。

 

 一人では、答えが出せず。だからと言って、相談できるような誰かがいるわけでもなかった。

 きっと、俺だってあんな雰囲気だったはずだ。

 

 恐らく『彼』でなければ、声をかけてはこなかったはず。

 それならば。

 

「………ス~~~~……ハ~~~~~…………」

 

 大きく息を吸い込んで。

 大きく吐き出して。

 

「……よしっ!!」

 

 気持ちを切り替えて。

 

 …………そういえば、『彼』と会うのは久しぶりだ…………

 

「……………。」

 

 落ち込みまくる『彼』の前で、悪いと思いながらも心が少し、暖かくなるのをとめられない。

 『友人』とは言えない存在なのかもしれないが、だからと言って彼が困っていたら手を差し伸べずにはいられない。

 ついついお節介を焼きたくなる。

 

 きっと彼にとっての俺もそういう存在なのだろう。

 そう思えば、なぜか自然と笑顔になってしまう。

 

「やぁ、久しぶりだね。」

 

 そして俺は、自身が作ったブラックホールに今にも吸い込まれていきそうな空気を漂わすニワトリに、何事もないかのように声をかける。

 

「っ!!??」

「なんだか随分とひどいオーラをだしているな。」

 

 俺の存在に気付き、息を飲む相手に、いつかのお返しとばかりに言葉をかけていく。

 

「何か悩んでいるのか?」

「………いや……あの………ぼ、僕は別に……。」

 

 何やら言いよどむ相手に、にっこりと、計算しつくした笑顔を向けてみた。

 

「悩んでいるよね?」

「……あ、は、はいっ!!」

 

 どうやら『彼』には俺の笑顔の裏に隠された本音を読み取る能力がある。

 最初から彼には俺の貼り付けたような笑顔は無効だった。

 だったら、『悩んでいるのは分かっているんだ。ごまかそうなんて思うなよ?このチキン野郎』という脅し文句はよく聞こえたらしい。

 

「いいよ。わかった、再会記念だ。…今更君も俺に体裁つくろう必要なんか何もないだろうし……」

 

 スラスラと、俺の口からこぼれ出るセリフ。

 それは俺のセリフではない。以前、ニワトリの救世主が俺に言った救いの言葉だ。

 

「…話してごらんよ。」

 

 あの時、話を聞いてもらい、もらったアドバイス。

 

―――敦賀君…っそれが恋の前兆なんだよ…!!-――

 

 その前兆から転がり落ちるように恋をして。

 一瞬に深みにはまって、今がある。

 

 もう、彼女を愛していない俺には戻れないし…戻る気も、ない。

 

 今のこの開かれた世界は、確かにあの時の彼の魔法が見せてくれた世界。

 

 だから、今度は俺が。

 

 悩むニワトリに、魔法をかける番だ。

 

「その悩み。」

 
 
 
 

 

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