【訂正】エアカットバルブについて【再解析】 | 虚構の設計

虚構の設計

設計の立場から高専ロボコンに関して書いていました.
今は引退し,カブ90に乗っています.

先日PD22のエアカットバルブの記事に関して

販売者の方からコメントがあり,私の方でも現物を調査したところ,

バルブに関して,重大な見落としがあったことを確認しました.

私の記事により,誤解を招いた方々にお詫び申し上げます.

 

今回は,文献も用意して(キャブレターの文献はなかなか見当たらず,

古い内燃機関の本の本の中でキャブについて詳しいものを用意しました

最近の本は,インジェクターしか書いてないんですよね・・・)

慎重に調査したうえで,私からの見解を述べます

 

 

今回指摘されて気が付いた部分ですが,

このエアカットバルブのダイヤフラム(黒いゴムの部品)の裏の

このエアカットバルブのバルブ部分なんですが,

以前記事を書いた際は,ダイヤフラムのニードルと本体の真鍮部分で

流量制御を行っていると思ったんですが,

実際には,このニードルは写真では見ずらいですが,真鍮部品の奥にある樹脂のバルブを押すための部品です

このニードルと真鍮の穴で流量を制御しているわけではありません

(私も,こんなガバ穴で流量制御できるのか,少し引っかかっていたのですが・・・もっとよく見るべきでしたね)

というわけで,以前の私の記事は完全にあべこべになっていて,
空燃比が薄くなると書いた領域では濃くなり,
濃くなると書いた領域では薄くなります

さて,ここまでが指摘事項になります.



以下,バルブの存在を知ったうえで,私がこのキャブレターについて,文献を参考にしながら解析していきます
前回の記事の特に簡略図は看過できないミスがほかにもあったので,ちょうどいい機会です

解説をする前に,私としての見解を先に記しておきます
以下,エアカットバルブの作動状態の定義として,
ダイヤフラムが負圧によってばねを押し縮める状態を作動している状態と定義します

1. エアカットバルブが作動すると,燃調は濃くなる
2. エアカットバルブが作動するのは,エンジンブレーキの際など,キャブのマニホールド側における負圧が高まった場合である
3. エアカットバルブにより,エンブレ時のアフターファイヤの発生を抑える効果が期待される
4. エアカットバルブにより,スロットル全閉からごく低開度の状態からの
  急激なスロットル開の操作の際に燃調が薄くなることを抑える効果はスロットル操作始めのごく一瞬に限っては若干の効果が期待される

5. エアカットバルブは,登坂時などのエンジン高負荷時の動作には一切の関与しない
  (スロットル開度が大きい際には,一切作用しない)
6. エアカットバルブは,排気量の大小にかかわらず,動作する(効果は一定ではない)
  (ラジコンエンジンにPD22つけたり,1000ccのエンジンにPD22をつけたら,話はまた別ですがw)


以下分解をしながらの解説に移ります
まずは,訂正したPD22エアカットバルブ付きの概略図です
今回は,手向きしないでしっかり作ったつもり

画像中の1,2,3 ,a,b ,x,y ,A,B,Cは流路の解説用なので,おいておいて,
MJはメインジェット,
PJはパイロットジェット(スロージェット),
PSはパイロットスクリューを示しています.
また,エアカットバルブのダイヤフラムとバルブは接合されていて,2つは連動して動くものとします.
(ダイヤフラムのニードルでバルブを押していて,バルブはばねによって元の位置に戻る機構なので,連動して動くと考えても問題ありません)

簡略図の流入口と実際の流入口を比較すると,このようになります

吸気口
 

スロットルバルブ
(左下が吸気口,右上がマニホールド側)
 

マニホールド側
 

エアカットバルブ部
Bの流路は真鍮の部分ではなく,その奥の白い樹脂バルブ(暗くて写っていない)に塞がれている部分

簡略図と実際のキャブレターの位置関係が分かったところで,また簡略図に戻ると,

今度は,各部に発生する圧力に関して考えます

とりあえず,スロットル開度とエンジン回転数について,次のグラフの関係を仮定します

これは,前回の解説でも用いたものですが,
この図は特に問題ないので流用します.
前回の記事にも書いた通り,あくまでもイメージなので,注意

さて,エアカットバルブが動作する条件ですが,
簡略図を見ればわかる通り,Pi>>Peになれば,ダイヤフラムがばねの力に押し勝って,動作します
ただし,バネはそこそこの力で押さえられているので,Piの動圧程度では動作しません
(キャブレターを流れる吸気の量が増えた程度では動作しない)
そのため,動作の条件はPiではなく,Peの負圧と考えられます.
Peの負圧は,スロットルバルブを閉じることにより発生します
さらに,エンジン回転数が高いほど,Peの負圧は強くなります
つまり,高回転のエンブレの際に最も負圧は強くなります.
また,負圧はスロットルバルブに敏感で,
スロットルバルブを開けると,一気に負圧は小さくなるようです.

そんなわけで,上の負圧の図で,色が薄くなっている部分が,負圧は強い
=エアカットバルブが動作する範囲ですが,その際にエアカットバルブにより何が起きるか考えます.

エアカットバルブが動作すると(図中,バルブが左にスライドする),
Bの通路がバルブによって塞がれるため,PJに向かって流れる空気の量が減り,
PJの流路の圧力が低くなるため,PJから吸われるガソリンは増えます
つまり,エアカットバルブが動作すると空燃比は濃くなります

最初にまとめた効果の内3についてですが,
エアカットバルブが動作するのは,主にエンブレの時と考えられますが,
その際に空燃比が濃くなると,アフターファイヤの発生が減るらしいです
確かに,このPD22を使っていた間,アフターファイヤの発生がほとんどなかったような気がします

次に,4に関してですが,
まず,急激なスロットル操作の際になぜ空燃比が薄くなり,スロットルにエンジンの動作が追い付かなくなるかというと,
ガソリンと空気の比重の違いにより,空気の流量の増加に対し,ガソリンの流量の増加は若干の遅れが伴うからといわれています
なので,エンブレなどによりこのバルブが動作している場合,通常求められている空燃比より濃く(リッチに)なっています.
なので,急激なスロットル操作により求められるガソリンの量が増えたとしても,その操作前の空燃比がリッチな状態だったので,エアカットバルブがついていないキャブレターに比べれば燃料の不足量は少なく済むと考えられます
(空燃比の悪化具合が小さく済む)
一方,スロットルの開け始めのごく一瞬以外では,エアカットバルブがついていないキャブレターと動作に違いはないので,特に違いはないと考えられます
なので,極端にオーバーサイズになるキャブとエンジンの組み合わせには,エアカットバルブはあまり向いていないと考えられます
一方,若干のオーバーサイズくらいであれば,向いていると考えられます
また,エンブレでしか効果がないか,アイドリング状態からでも効果があるかどうなのかは,
実際の負圧を測ってみないと,わかりません.

5.に関してですが,
先述した通り,このキャブレターはインマニの負圧が強い状態(=エンブレなど)以外では,
エアカットバルブは動作せず,通常のキャブレターと同じ挙動を示します
なので,スロットル開度が大きくなる,登坂などのエンジンが低回転でスロットル開度が過剰に大きい状態での空燃比の改善効果は一切期待できません

個人的には,この部分の効果を期待して購入したので,今回の解析結果は少々残念に思います
私が使用した限りでは,低回転高負荷時にアクセルをガバ開けすると,
このPD22でもより口径の大きなエアカットバルブ無のキャブレター(多少エンジンの部品違うけど),
どちらでも普通にノッキングしているようですので,少なくとも私の体感上は,この部分の効果は感じられませんでした


私の分析結果は,以上です.
この記事に限らず,もし間違っていることがあれば,ぜひコメントを頂ければと思います.
このブログでの分析は,個人レベルで行っていることなので,どうしてもやれることには限りがあります
より正確な情報を書くためには,読者の方のコメントも大変参考になります.

また,私が記事を書く上で,間違いや勘違いに気が付かないこともあるかもしれませんので,
最終的には,読者自身で,是非や真贋を判断するよう,お願いします