エセックス編とカリフォルニア編、本を上下反転させてどちらから読んでも楽しめるという本書。
こういうのをテート・ベージュというらしいですね。
解説および訳者後書き(中書き)も本の真ん中に収められているという凝りよう(笑)。
自分はゴシックホラー的な雰囲気素たっぷりなエセックス編から読みましたが、カリフォルニア編から読んだ方がもしかしたら理解しやすいのかも。
いや、それとも逆かな(笑)。
1881年を舞台にしたエセックス編。
コレラの研究に身を削る若き医師シオメンが、遠縁のオリヴァーの診察をするために訪れたエセックス沿岸の島にある屋敷では、かつてオリヴァーの弟を殺害した弟の妻フローレンスが幽閉されており、そのフローレンスが示唆するものや、オリヴァーの体調不良の原因といった謎に迫ります。
しかし、読んでいていったい何を読まされているだろうと思うぐらい、何が描かれているのか分からず、そのダークな雰囲気も相まって、まさに暗闇の中で手探りするような状態で読み進めました。
一方のカリフォルニア編は1939年が舞台。
役者を目指す若者ケンが、富豪のオリヴァーと知り合い、そのオリヴァーがエセックス編を踏まえているので早く理解し読み進める事ができますし、鏡写しのようにリンクしていく様は読んでいて「おお」となることも。
けれどもエセックス編と違って明るめの雰囲気のカリフォルニア編を読んで、また謎が増える事に。
過去の書物? それとも未来の書物?
持ち歩きしにくい単行本という事で、家で細切れに読んでいたせいか、謎なのかどうかすら分からない自分は、あまり良い読者では無かったのかも(笑)。
ともあれ読み終えても何かしらモヤっとするものや疑問が残り、そういった点を確かめる意味でも、もう一度、今度は反対から読んでみたくなりました。

シカゴの街を支配するギャング組織アウトフィットのボスであるアッカルドに、シカゴに舞い戻ってきたかつてのボスであるジアンカーナを暗殺した事で取り入ったニッキーは、それ以来アッカルドに庇護され、重宝されるようになる。
ある時、宝石店強盗をはたらいた犯人たちを探すようアッカルドから命じられ、首尾よく犯人たちを見つけたものの、その後、アッカルドから犯人たちを始末するよう命じられた事でニッキーの運命は狂いだす。
著者の『流刑の街』は個人的オールタイムベストに入れたくなるぐらい好きな作品だったので、チャック・ホーガンの新作が出ると知り、期待しまくりでした。
で、期待を上回るほどでは無かったものの本作も裏社会の男の生きざまを楽しむ事が出来ました。
主人公のニッキーは、表向きは成功しているボーリング場の経営者。
けれどもギャング組織アウトフィットのボス、アッカルドの知られざる便利屋としての顔も持っているのと同時に、裏ではFBI捜査官へ情報をリークする任を嫌々ながらも請け負っています。
そして自身が抱える秘密を抱えているせいで、結婚生活も破綻し妻子とは別居中。
そんなニッキーが盗難事件の犯人を探すようボスに命じられた事から運命が転がっていきます。
ボスの期待に応える事で得れる利益は大きいものの、別居中の妻と子供への偽りの無い愛情と、ずっと組んできた友人たちへの友情。
それらを破滅させてしまうかも知れない危険を冒さざるを得ない状況へと追い詰められていく様には緊張感が徐々に高まっていきます。
ボスの冷酷非情な命令には従わざるを得ず、FBI捜査官へは自身の立場を危うくしないようにしながらも情報を流さなければならないニッキーは、なんとか立て直そうとあがくものの、次第に泥沼に陥っていく様は一緒になって苦しく感じてきます。
また、やがてニッキーが追い詰められた先で、起死回生となる大きな誘惑に心を躍らせる場面には、こちらも鼓動が高まるのを感じました。
果たしてニッキーが下す決断とその行方とは。
アル・カポネ以降の裏社会(ギャングランド)を、虚実入り交えながら描かれる叙事詩(かなりの部分が史実に基づいています)は、少々淡々としており、特に友人たちに関する運命に対してはあっさりし過ぎてるなど、物足りないむきはありましたが、読んでいて実に面白く、特に後半は一気読みでした。













