『ブルターニュ料理は死への誘い』 マルゴ・ル・モアル&ジャン・ル・モアル | 固ゆで卵で行こう!

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ブルターニュ地方のリゾート地、ロクマリア村の大きな屋敷に越してきたカトリーヌ。
カトリーヌは村でアルザス料理を提供するレストランを開店する。
色々な問題を乗り越えて開店したレストランも軌道に乗り始めたかと思われた時、村の有力者たちが店で食事中に気分が悪くなり・・・。



なんとも美味しいコージーミステリです。

アルザス地方出身のカトリーヌが手掛けるレストラン。
そこで提供される料理の数々の美味しそうな事といったら!

シュークルート(ドイツのザワークラフト)、タルト・フランベなどなど。
読めばきっとカトリーヌのお店に行きたくなります。

その主人公のカトリーヌですが、実は不幸せな結婚生活から自由を得て新天地へ。
妹を喪った哀しみを抱え、そして二人の子供に会う事を楽しみにしながら、51歳にして夢を叶えるべく人生を再スタートしようとしている女性です。

さて、夢と希望をもって越してきた、のどかで風光明媚な村ですが、やはり変わらないのは人間の欲望。
カトリーヌの店でシュークルートを食べた元村長は帰らぬ人となり、カトリーヌや彼女の元で人生をやり直そうとしている料理人も疑われる事態になります。
果たして犯人は?!

しかしながら、被害者を恨む人物は大勢おり、事件を調べる憲兵隊も捜査は難航。
カトリーヌの店も営業を再開できず、やきもきする毎日。

そんなカトリーヌに対する住民の接し方が分かれているのも見どころ。
カトリーヌ自身の魅力と美味しい料理に惹かれる村人たちとは逆に、カトリーヌに嫉妬し敵対心を燃やすスーパーの店主であるナターシャと彼女の支持者たちが、カトリーヌを貶めようとする様子には、読者である自分も思わずイラっとさせられました(笑)。

ただ、ナターシャが嫉妬するのも分からないでもありません。
突然やってきた余所者に、村の男たちが魅了されてしまい、自身の立場に危機感を抱くとしたら?

また、カトリーヌは英国王室の血筋であるという紳士チャールズに惹かれたり、新聞記者のヤンに好意を寄せられるなど、ロマンスに関してもその行方が気になります。

それにしても意外なのは、思ったよりカトリーヌが探偵としての役割は見せない事でしょうか。
あくまでも普通の、でも人生を前向きに生きようとする女性として描かれているのが好印象。
この手のものによくあるような、あちこちに首を突っ込んで事態をかき回し、余計に混乱させてしまうような登場人物では無いのが、安心のような、物足りないような(笑)。

とはいえ事件の結末については、やはり主人公がきっちり締めてくれるのでご安心を。

そして最後まで読むと、やはりカトリーヌを通じ、自立し強く生きようとする女性へのエールが本書に込められているのかなと感じたりもしました。


それにしても最後の最後は気になるところで終わってしまって・・・!

本書は〈プレッツェルと有塩バターの事件簿〉シリーズの1作目で、本国では3作目まで出ているとの事。
続編の翻訳もお待ちしております!