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宇宙探査機 迷惑一番 (ハヤカワ文庫JA)
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宇宙で雷獣迎撃小隊が発見した不可思議なもの。
それは小隊の隊員それぞれが「!」だったり「?」だったり「恥ずかしくて口にだせないもの」のように見えるもの。
月の山の頂に接触したそれの破片を回収し基地に戻ったパイロットたちは医療センターで診断を受ける。
しかしその診断の結果は自分達は「死んでいる」という事だった?!
神林長平の初期のSF長編。
自分のことを「メイワクイチバン」と名乗った謎の物体。
それに接触した小隊の不思議な運命を、平行宇宙というテーマのもとに描かれています。
小隊がとばされた平行宇宙。
ほとんど前の世界と同じんなんだけれど微妙に違う。
生きているのか死んでいるのか。
自分達の生存証明を求めて、そして愛するものを求めて宇宙基地を脱出しようとする隊員たち。
けれども待ち受けている現実というのは厳しい。
コメディタッチな描写、特に“私”に従属する言語発生器の“ぼく”との能天気な会話は「敵は海賊」シリーズのアプロたちの漫才のようで読んでて実に可笑しい。
けれど、その笑いの中にあるシュールさは実に切ないものだ。
自分という存在があるから世界があるのか。
世界があるから自分があるのか。
全ての物語の主人公は自分自身なのかも知れないけれど、愛するものと再び会う事の敵わぬ物語なら、そのような物語の主人公になりたくはないものです。
ちなみに画像はハヤカワから復刊した時のものですが、オリジナルの光文社文庫版には火浦功の解説が載ってます。
火浦功ファンならそちらを探してみるのもいいかも。
もっとも解説と言っても火浦さんらしい無責任な解説ですが(笑)。

