今回は、道尾秀介の『光媒の花』を取り上げます。
道尾秀介は、今放送中のドラマ、「月の恋人」の作者としても有名ですが、もともとはミステリー作家です。
巧妙な仕掛けのあるミステリー作品で人気になりましたが、今回は文芸色の強い作品で、ミステリー色は薄いですね。
愛憎ゆえの殺人、性的虐待、貧困、孤独と、暗い気分になるような話が続いていくわけですが、最後の物語で、冒頭とのつながりができ、少しの光を見出すことができます。
1つの話の主人公が他の話でも重要な役割を担う書き方は、伊坂幸太郎にも見られる書き方ですが、なかなか効果的な演出になっています。
感覚的には、6つの物語がバトンリレーのようにつながっていく印象といったところですか。
この作品に対して、道尾本人は、「この全6章を書けただけでも、僕は作家になってよかったと思います」と語っています。
ミステリー系の物語が好きで道尾作品を愛読している人には少し物足りない印象も否めないですが、筆者の考え方や人間性を色濃く反映させた作品として、価値があります。