神聖王と執政王(桜井茶臼山古墳とメスリ山古墳) | オヤジのおもちゃ箱

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行く川の流れは絶えずして、しかも元の水にあらず・・・・・・

箸墓古墳を後にしたオヤジは桜井市を更に南下して

磐余(いわれ)と呼ばれる地域にやって来ました。

上の画像は今回初めて訪れた桜井茶臼山古墳。

岸本先生(大阪市立大学大学院教授:前回のブログをご参照)の説によりますと

西殿塚古墳の神聖王墓に対して、同時代の執政王の古墳が茶臼山古墳らしい。

 

全長は200m前後に及び、時代は3世紀後半から4世紀前半あたりか?

天皇陵ではないので発掘調査が行われています。

分かり難いとは思いますが、上の画像の向かって右側が後円部で

左が前方部にあたります。

 

数十年前に作られたのでしょうか、記念碑が建てられていました。

夥しい副葬品が発見されたようで、81枚分の銅鏡の破片が出たといいますから

ちょっとビックリです。

石室は竪穴式で、石を積みあげた内壁と天井石には

大量の朱(約200キロという見方も)が、惜しげもなく塗布されていたそうです。

遺体は発見されなかったものの、コーヤマキ製の木棺の一部が発掘され

橿原の考古学研究所に保管されているそうです。

 

興味深いのは、近くに宗像神社が存在する事。

宗像って北部九州の神社ですよね?

まさか奈良県の桜井市に九州地方の神社が存在するとは!

この時代、北部九州は依然として大きな勢力を保持していたのでしょう。

「磐井の乱」が勃発する前の時代です。

 

3世紀や4世紀の、200メートルを超えんとする大型古墳の被葬者が

ヤマト政権の主要な人物であった事は容易に想像できます。

岸本先生の説によれば、この時代の執政王は男性で神聖王(台与)は女性です。

弥生時代においても、日本は女系社会だったのか?

もっとも、1,700年以上前に300メートル近くの前方後円墳(箸墓古墳)を作らせたのが

卑弥呼であれば、男系を前提とする天皇制に疑問符が付いてしまう。

これが古代史の面白いところですよね。

 

茶臼山古墳の詳細(桜井市のサイト)

 

茶臼山古墳から数キロしか離れていない場所に

茶臼山に続く執政王の墳墓である、メスリ山古墳が築造されています。

全長は230メートル前後に及びますが

茶臼山古墳同様、何故か周囲に陪塚を従えていません。

こちらも戦後間もなく調査が行われているそうです。

 

メスリ山古墳のサイドビュー(↑)

画像右側の木が生い茂った部分が後円部で

左側の急に低くなった部分が前方部です。

型式的特徴として、前方部は幅が狭くて後円部より低い。

ちょうど“手鏡のような形”と言えば分かり易いかもです。

 

前方部から後円部に向けて撮影した画像です。(↑)

撮影ポイントは前の画像の反対側です。

一応、公園として整備されていました。

こちら側から前方部の墳頂へのアクセスは可能です。

前方部に登ってみると、柑橘類が植えられていました。

 

後円部の麓には地域の会所(公民館)がありまして

庭に上の画像の遥拝所が作られていました。

奈良県と大阪府の県境付近では、こういったモミュメントをよく目にします。

こちらの場合、二上山に沈む夕日を拝む事になり

当然西側ですから、仏教で言うところの“西方浄土”という事になる。

明らかに北緯34度32分を意識しているなぁ~

 

遥拝所の奥は八坂神社です。

鳥居の階段を登ると後円部に登る事が出来ます。

古墳が神社になっているパターンは頻繁に見かけますが

こちらの神社はそういった中でも、かなり立派な作りです。

地元の有力者のお墓が守護神に昇華したという事でしょうか?

これも御霊信仰の一つかもしれません。

 

後円部の墳頂にやって来ました。

メスリ山古墳の最大の特徴は、上の画像の石が埋められている窪地の部分です。

これは副石室で、遺骸は存在せず、夥しい数の副葬品が埋められていたそうです。

武器類が多く、中でも鉄製の弓矢は注目に値する。

(弓の長さは180㎝を超える)

他の古墳ではあまり例の無いものだと思います。

 

窪地に対して盛り上がっている部分に竪穴式の石室が作られていたようで

残念ながら盗掘されて、遺物はあまり発見されていないそうです。

 

西殿塚、茶臼山、そしてこのメスリ山古墳に共通するのは

埋葬施設の上方を方形の段にして、死者を弔った形跡がある事です。

その周囲には巨大な円筒埴輪を並べており

メスリ山の埴輪の大きさは、全国でもトップクラスだとか。

茶臼山古墳より墳丘の規模が大きくなり、更に副葬品も多くなったという事は

執政王の権限が強化された証でしょうか?

 

後円部には石室の内部に使用されたとみられるサヌカイトが・・・・・・

桜井茶臼山古墳とメスリ山古墳、ますます気になってきました。

 

メスリ山古墳の詳細はこちらから