2000年代前半、少年チャンピオンで連載されていた「虹色ラーメン」のレビュー。4回目は、これまでと打って変わった、「暗黒面」とも言える展開に、神宮寺グループの様々な動きが絡んできます。

第1期:イントロダクション(1~4巻)
第2期:ラーメン甲子園(5~8巻)
第3期:麺王杯・前編(9~12巻)
第4期:裏切りと信頼と(13~15巻)(今回)

 謎の転入生皇朔夜と、後輩の久保隼人が太陽を追い詰める。一方で共通の敵との闘いでの和解へ。
第5期:父との最終決戦(16~18巻)
 父であり最強のラーメン職人、神宮寺雷蔵との最終決戦。
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 13巻から15巻が連載されていた時期は、2003年6月から2004年年初にかけて。13巻の冒頭で「麺聖王」と「動物系素材を使わないラーメン」をテーマに対決していた榊太陽は、麺に卵を入れた事が発覚し失格。そして勝利した永心も、今後の麺王杯への出場を辞退する事に。
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 京都からの帰路、新横浜で行われた「第2回ラーメン甲子園」の会場に向かった太陽。後輩である久保の優勝を祝うはずが、ラーメン部の様子が明らかにおかしい。そして、初対面になる皇朔夜から、衝撃的な一言を言われてしまう。
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 ラーメン部の2期生として、先輩である太陽の大きさを感じつつ、ラーメン甲子園を勝ち抜いてきた久保。そんな中、新入生として入ってきた皇が、久保をサポートしつつ太陽への憎悪を煽っていく。そこに、何も知らない太陽がやってきた上、麺王杯での敗北を知らない原田たちが久保の側についたため、太陽は失意のままに北に向かう。

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 佐野、山形を経由して日本海にたどり着いた太陽は海に飲み込まれるが、そこを通りがかった漁船に助け出される。その船長が「麺海王」の海神嵐十郎。彼らが向かう八戸で、皇は太陽と久保を対決させる魚介系ラーメンのタッグマッチを提案する。
 久保をメインと言いつつ、実際にラーメンを作るのは皇。複雑なラーメンレシピに追いつけない久保を、皇はこの一言で蹴り飛ばしてしまう。
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 マニア受けを狙った繊細な皇の塩ラーメンに対し、豪快な魚の粗煮を使った太陽の醤油ラーメン。その対決の行方は、突然の台風直撃で無効試合に。この試合は神宮寺グループでは皇の敗北と受け取られ、彼は北辰高校に転校していく。

 

 

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 3年生は受験合宿で軽井沢に行くと。ラーメン屋台が登場。屋台の主、仲谷内健悟は、馬場民雄さんの前作「御馳走さまっ!」の主役でもあり、一度食べた味を完璧に再現できる才能の持ち主。この作品では、与田さんの屋台に出会った仲谷内が屋台を譲り受け、軽井沢の山奥で「ある人」を待ち続ける役回りから登場する。

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 14巻の後半から15巻にかけて、新たな戦いが始まる。神宮寺グループを脅かす新勢力として登場したのは「100円ラーメン」を掲げた「仰天ラーメン」。(このネーミングは、当時180円(税別)で急速に勢力を拡大していた「びっくりラーメン」に影響されたと思われる)
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 神宮寺グループの5店舗の目の前に出店された中京地区で、5対5の客数勝負が行われる事になり、インスタントラーメン王の安藤清福(日清食品創業者、安藤百福がモデルと思われる)と乾が立会人に、神宮寺グループは、「麺伶王」獅子堂啓介のもと、これまで麺王杯に出場した「麺華王」「麺炎王」「麺機王」「麺聖王」、ラーメン甲子園出場者の鳳レイと有馬純太郎、麺炎王との対決で太陽をサポートした味噌ラーメン職人の百田が集結し、各店舗のテコ入れと従業員教育にあたる事に。

 

 

 一人で様々なレシピを作りながら、孤独感を募らせてきた皇の元には太陽が訪れ、最初はまともに話そうとしなかった皇も、徐々に太陽を信頼するようになった。対抗戦は「4対1」で神宮寺グループが勝利するが、「100円ラーメン」の側を単に悪役として駆逐しなかった点は興味深い。立会人として「神宮寺グループのラーメンには魂がこもっている」と語る乾に対し、安藤の口を通してこう言わせている。
「大勢の人間と同じ味を共有し、食べた時の思いが重なっていくコトで、食べ物に魂は宿る」
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 対抗戦で唯一勝利した「100円ラーメン」の店舗には、仲谷内がアルバイトとして入り、太陽が出していたラーメンに改良を加えて、麺伶王に勝利。仲谷内には与田がついて、更に麺海王を破る。与田は修業費用を調達する名目で、東雲高校ラーメン部の活動拠点だった「ラーメン与田」を神宮寺グループに売却し、店舗はクリスマスイブに取り壊されてしまう。

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 ラーメン与田の解体に対し、激高したのは普段クールな役回りだった生徒会長の長谷川。赤城の横から飛び出して殴りつけるこのシーンは、この連載全体の中でもかなり印象に残るシーン。しかし、「ラーメン与田」は戻らず、太陽はその場で崩れるように寝てしまう。

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 その次の回は、太陽が見た「夢」。漫画連載では2004年の1回目にあたり、いわば「初夢」であろうか。

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 与田扮する水戸黄門に、ラーメンを作っていたエピソードをなぞらせ、最後には虹の向こうに去っていく。そして、その夢に涙する太陽を抱え上げたのは、父であり敵でもあるはずの神宮寺雷蔵。

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 この15巻最後のコマについては、その後のストーリーでの言及がない。確かに、自宅前で寝ていたという次回の設定に繋げる為には誰かは必要なのだが、それが涙を流した神宮寺でなければならないわけではない。父としての愛情か、職人としての同情か。もっと巻数があれば語られた伏線なのかもしれないが、そのような余裕を感じさせず、ストーリーは一気に最終決戦へと向かっていく事に。その話は次回へ続きます。